阿部サダヲの生涯ベスト映画、最近感銘を受けた作品は?【あの人が見た名作・傑作】
2022年10月1日 11:00

映画を見に行こうと思い立ったとき、動画配信サービスで作品を鑑賞しようとしたとき、何を見れば良いのか分からなかったり、選択肢が多すぎて迷ってしまうことは誰にでもあるはずです。
映画.comで展開する新企画「あの人が見た名作・傑作」は、そんな皆さんの映画選びの一助として映画業界、ドラマ業界で活躍する著名人がおすすめする名作、傑作をご紹介するものです。第19回は、「アイ・アム まきもと」に主演する阿部サダヲさんです。

1970年生まれ、千葉県松戸市出身。1992年より劇団「大人計画」に参加し、同年に舞台「冬の皮」でデビュー。2000年に大人計画のメンバーである脚本家・宮藤官九郎の作品「池袋ウエストゲートパーク」に出演。2007年「舞妓Haaaan!!!」で映画初主演を務め、第31回日本アカデミー賞主演男優賞優秀賞を受賞。映画「彼女がその名を知らない鳥たち」、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」など、幅広く活動している。

ベストって簡単に言えないのですが、一番ビックリしたのは「鉄男」(1989)という作品です。最初にビデオで10代の学生の頃に見て驚きました。怖いし、面白いし、かっこいいし、音楽も映画で今まで見てきたものとまた違うものを見たという感じでした。なにこれ!っていう。しかもミュージシャンの田口トモロヲさんが主役。それを見たときに衝撃を受けました。塚本晋也さんが監督で、体に鉄を埋め込んでいくというめちゃくちゃな作品で。続きが2まであって、2はメタリックになっているのですが最高です。

こういう作品もあるんだなって衝撃を受けたのと、田口トモロヲさんって、トモロヲって“ヲ”じゃないですか。ぼくもサダ“ヲ”じゃないですか、そこで影響されている気がします(笑)。
あと、松戸の映画館での記憶なのですが、一番笑ったのは「シコふんじゃった。」(91)という映画です。竹中直人さんが面白くて、すっごく笑いました。芝居を始めてからそんなに劇場で笑うことはないですが、仕事始める前に映画館で見た映画で一番笑いました。
塚本晋也監督が1986年制作の短編「普通サイズの怪人」をベースに、肉体が鉄に侵蝕されていく男の壮絶な戦いを悪夢的映像で描いたSFスリラー。第9回ローマ国際ファンタスティック映画祭でグランプリを獲得するなど注目を集め、塚本監督の名を一躍世界に知らしめた。ある朝、平凡な会社員の男は自分の頬に金属のトゲのようなニキビができていることに気づく。男の身体は激しい痛みを伴いながら、徐々に金属に侵食されていく。一方、かつて男が轢き逃げした“やつ”は、復讐を果たすべく男のもとへ向かう。
ひょんな事から大学の相撲部に入ることになった大学生の奮闘をコミカルに描いた異色相撲コメディ。脚本・監督は「ファンシイダンス」の周防正行。撮影は「風、スローダウン」の栢野直樹がそれぞれ担当。なお、本作から30年後の相撲部を舞台にした「シコふんじゃった!」がDisney+で10月26日から配信される。
最近は「PLAN 75」(2022)という作品です。この間まで舞台で一緒にやっていた河合優実さんが出ていたので見たのですが、やはり年を取っていくといろいろと考えるというか、リアルでしたし怖さもありました。「アイ・アム まきもと」もそうですが、きっとこれから先孤独な状況も増えていくと思うので、そういう意味で考えさせられました。

これから先、人知れず亡くなっている方もたぶん増えていきますし、そういう方をしっかりと弔うというのは少しずつなくなってしまうのかもしれませんよね。大切な人と人との繋がりというのは、今結構希薄になっている気がします。付き合い方って難しいですが、“人って本当は優しいんだよ”っていう時代に戻るといいんですけど。そういう意味でも「アイ・アム まきもと」っていいお話だなって思っています。

(C)2022 映画「アイ・アム まきもと」製作委員会
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