【コラム/細野真宏の試写室日記】「モービウス」。果たしてスパイダーマンの敵か味方か?
2022年4月1日 16:00
![「モービウス」](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95855/2050c1a85ae62470/640.jpg)
映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
本日から日米で同時公開される「モービウス」は、「ヴェノム」と同様に「ソニー・ピクチャーズのマーベル・ユニバース」における作品となっています。
この、少しややこしい表記の意味を理解するために、まずは以下の仕組みを把握しておきましょう。
時は、1990年代の後半。ソニーが「スパイダーマン」の映画化権を買うためにマーベルと交渉をしました。
ただ、今では信じられないような話ですが、その時のマーベルは1度倒産していて「マーベル・エンタテインメント」として再生したばかりでした。
そのため、ソニーはマーベルから、「スパイダーマン」だけでなく「アイアンマン」「マイティ・ソー」「ハルク」「キャプテン・アメリカ」「アントマン」「ブラックパンサー」など、ほぼすべてのマーベル作品映画化権を、わずか「トータル2500万ドルで販売したい」と提案されていたようです。
つまり、(1ドル=100円とすると)25億円でマーベル作品をソニーの手中に収めることができていたのです。
ところが、マーベルのアメコミにそこまで希望を見出せなかったのか、ソニーはマーベルの提案を断り、当初の目的の「スパイダーマン」関連の権利しか買い取らなかったのです。
![「スパイダーマン」](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95855/33d4afebb513631b/640.jpg?1648729950)
その後マーベルは急成長し、2009年には「マーベル・エンタテインメント」はディズニーによって40億ドル(=4000億円)で買収され、ディズニー傘下となりました。
そして、このアベンジャーズ関連の作品(マーベル・シネマティック・ユニバース)は、2008年の「アイアンマン」から「キャプテン・マーベル」までの10年の間に「全世界興行収入で約2兆円」という「シリーズ映画で世界No.1」を記録するシリーズにまで成長。
今やマーベル作品は世界を席巻するまでの存在へと変貌しました。
極めつけが2019年の「アベンジャーズ エンドゲーム」で、こちらは世界興行収入で歴代1位を獲得するまでに成長したのです。
ソニーは「大きな魚」を逃がしてしまうことになりましたが、「スパイダーマン」関連の権利を買っていたのは幸いでした。
![「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95855/7b7da6ae7e6d03d4/640.jpg?1648729965)
今年の「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」では全米で「アバター」の興行収入を抜き、歴代3位のヒットとなったりしています。
このような経緯があり、マーベル作品において、「ソニー・ピクチャーズのマーベル・ユニバース」という区分けが生まれたわけです。
![「モービウス」](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95855/689922b351fc8f2a/640.jpg?1648729998)
さて、この流れからも分かるように、「モービウス」は「ヴェノム」と同様に「スパイダーマン」関連の作品となっています。
「モービウス」という新キャラは、コウモリが大きなカギとなっている点で、現在、世界的にヒットしている「THE BATMAN ザ・バットマン」に似ている面があります。
ただ、「バットマン」と違うのは、「バットマン」はあくまでコスプレですが、「モービウス」の場合は、本当に人間から異形なものへと変身するのです。
![「モービウス」](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95855/36091e20bcab7545/640.jpg?1648729998)
主人公は、アカデミー賞受賞俳優であるジャレッド・レトが扮する天才医師マイケル・モービウス。幼いころから血液の難病を患い、同じ病に苦しみ、同じ病棟で兄弟のように育った親友マイロのため医師を志します。
ところが難病を克服できる治療法が見つからず、遂に自身を使って禁断の治療法を試すことに。
それは、未だに未知の病原体等を有する「コウモリ」の血清を投与するという危険すぎる治療法です。
結果的に、超高速飛行能力などの超人的な能力が備わる一方で、コウモリと同様に人の血を欲する「吸血鬼」となってしまうのでした。
このように、「命を救う医師」が、「命を奪う吸血鬼」になってしまう葛藤が「モービウス」というキャラクターの造形を深くしていると言えます。
![「モービウス」](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95855/d803766172a5bc99/640.jpg?1648730004)
![「モービウス」](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95855/9cb01785301d1189/640.jpg?1648730020)
また、そもそも親友マイロのための治療法でしたが、代償が大きすぎる治療法と分かったため、その後のマイロとの関係性がどうなるのかも見どころの1つです。
本作では、コウモリの特殊能力である超音波の反響を利用する「バットレーダー」で瞬時に周囲の状況を感知し、超高速で移動するなど、アクションシーンが割と凄いです。
特に超高速移動のアクションシーンでは、「マトリックス」の主人公ネオを彷彿させます。
果たして「モービウス」はスパイダーマンとどのように関わっていくのか?
ラスト辺りに、その大きなヒントが隠されています。
特に「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」で“マルチバース”(多元宇宙)が開いた後なので、「何が起こっても不思議ではない世界」というのも、より興味が出てきます。
![「モービウス」](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95855/453c1a9de7de5f7b/640.jpg?1648730029)
![「モービウス」](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95855/40419178116a2019/640.jpg?1648730035)
さて、肝心の興行収入ですが、プラスな面としては、「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」の大ヒットでスパイダーマン関連の注目が集まっている点でしょう。
そして、同じく関連作の「ヴェノム」の続編「ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ」も、興行収入19億円超えの大ヒットをしています。
ただ、マイナスポイントは、キャラクター面があるかと思います。
「ヴェノム」は面白キャラだったので人気が出たのは分かりますが、「モービウス」はキャラクターの雰囲気も「バットマン」と似てダークさをまとっているのは、ややマイナスに働きそうです。
しかも、初登場キャラクターで認知度が低いのもマイナスに作用する面としてあります。
そして良くも悪くも、「日米同時公開」となっている点です。
「日米同時公開」のプラス面は、ネットで海外のネタバレが回ってきにくい、ということがあります。一方でマイナス面としては、レビュー等の情報解禁の規制が異常に厳しくなることです。
本作では「公開日の4月1日(金)のAM0:01以降」。そのため、情報が行きわたりにくい点があるのです。
![「アンチャーテッド」](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95855/4621efbd4199659e/640.jpg?1648730044)
これに似た形態では、「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」で人気が大きくアップしたトム・ホランド主演、2022年2月18日からの日米同時公開作「アンチャーテッド」がありましたが、日本での興行収入は5億円超くらいで終わりそうです。
そのため「モービウス」については、興行収入5億円超えが最初の大きな焦点でしょう。あくまで初登場キャラクター作品なので洋画不振の現状では6億円超えができたら及第点と言えると思います
なお、エンドロール中にも映像は流れるので、最後まで席を立たずに見守りましょう!
![ディズニープラス](https://eiga.k-img.com/images/shared/disney-plus-logo.jpg?1679891055)
PR
©2025 Disney and its related entities
関連ニュース
![【コラム/細野真宏の試写室日記】マイケル・ベイ監督作「アンビュランス」。スタイリッシュな映像ばかりで構成するとどんな映画になる?](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95655/e13856e110cf0e70/320.jpg?1648110320)
![【コラム/細野真宏の試写室日記】「SING シング ネクストステージ」。前作51億円超えの大ヒットは本作でどうなる?](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95509/7d6ef1ce785aadd7/320.jpg?1647414198)
![【コラム/細野真宏の試写室日記】「ウェディング・ハイ」。バカリズムが「コンフィデンスマンJP」的な脚本を書いたらどうなる?](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95370/52ad78e1f52a321e/320.jpg?1646813943)
![【コラム/細野真宏の試写室日記】「余命10年」は、日本での“ヒットメーカー誕生”のきっかけとなるか?](https://eiga.k-img.com/images/buzz/95264/e3006f945e50cbde/320.jpg?1646291050)
![新キャプテン・アメリカが“盾の継承”に苦戦したことを明かす 「盾で自分の頭を何回か打ってしまった」](https://eiga.k-img.com/images/buzz/115577/6929fc6f337a83be/320.jpg?1738732562)
映画.com注目特集をチェック
![ショウタイムセブンの注目特集](https://eiga.k-img.com/images/top_news/5380/b5d72760f5ef3c7b/320.jpg?1738849989)
ショウタイムセブン
【阿部寛がヤバすぎる】異常な主人公 VS イカれた爆弾テロ犯…衝撃のラスト6分、狂気の向こう側へ
提供:アスミック・エース
![芸能生活50年で“初”体験!の特別企画](https://eiga.k-img.com/images/top_news/5381/cc8994b4c8dc1049/320.jpg?1738287500)
芸能生活50年で“初”体験!
【無料】映画の面白さが何倍にもなる特別番組…貴重な瞬間を見逃すな!(提供:BS10 スターチャンネル)
![「アベンジャーズ」と関係するかもしれない“大事件”の注目特集](https://eiga.k-img.com/images/top_news/5377/ec993b422a223802/320.jpg?1738809133)
「アベンジャーズ」と関係するかもしれない“大事件”
【物語のカギは“日本”!?】このマーベル最新作は観るべきか、否か――?
提供:ディズニー
![セプテンバー5の注目特集](https://eiga.k-img.com/images/top_news/5376/0193745c34c4d2bc/320.jpg?1738639833)
セプテンバー5
【“史上最悪”の事件を、全世界に生放送】こんな映像、観ていいのか?ショッキングな実話
提供:東和ピクチャーズ
![次に観るべき“珠玉の衝撃作”の注目特集](https://eiga.k-img.com/images/top_news/5375/6356d5dc8d9b1d53/320.jpg?1738716873)
次に観るべき“珠玉の衝撃作”
【余命わずかの親友から奇妙なお願い】「私が死ぬとき隣の部屋にいて」――魂に効く“最高傑作”更新
提供:ワーナー・ブラザース映画
![激しく、心を揺さぶる超良作の注目特集](https://eiga.k-img.com/images/top_news/5336/e472dd9e95eda90b/320.jpg?1738287092)
激しく、心を揺さぶる超良作
【涙腺が危ない】切なすぎる物語…さらに脳がバグる映像美×極限の臨場感にド肝を抜かれる!
提供:ディズニー