【「雨に叫べば」評論】内田英治監督と“分身”松本まりかの共犯関係 撮影所という非日常空間がもたらす激情
2021年12月18日 13:30

映画の撮影所を舞台にした作品には、当たりが多い。日本映画でいえば深作欣二監督の不朽の名作「蒲田行進曲」を筆頭に、「キネマの天地」「太秦ライムライト」「キネマの神様」などがあり、洋画でも「スタア誕生」「雨に唄えば」「イナゴの日」などが多くの人に愛されてきた。
内田英治監督が手がけた「雨に叫べば」は、タイトルだけ見るとジーン・ケリーとスタンリー・ドーネンによるミュージカル映画「雨に唄えば」を意識したのかと感じる人は少なくないだろう。ただ今作は1988年の撮影所を舞台にしており、松本まりかが扮した新人監督・花子という役どころは、かつての内田監督自身の姿を投影している。自らの身に降りかかった事象をフィクションの世界にちりばめていったところ、完成版を観た後は内田版「蒲田行進曲」と謳う方がしっくりと来る。
今作の舞台となる東京・練馬の東映東京撮影所は70年を超える歴史があり、これまでに「網走番外地」シリーズ、「昭和残侠伝」シリーズ、「トラック野郎」シリーズ、「二百三高地」など、実に多くの作品が生み出されてきた。劇中設定の88年は、活況を呈していた最盛期はおろか、映画産業が斜陽期と言われて久しい時期に差し掛かった頃を指している。それでも、職人気質の“活動屋”たちのプライドがぶつかり合い、生命力があふれんばかりの意欲作が誕生してきたことも、また事実だ。
内田監督にとっては、監督デビュー作「ガチャポン」、深夜ドラマ「劇団演技者。」、今年放送のWOWOWドラマ「向こうの果て」でタッグを組んできた松本は、古くからの良き理解者という側面もあるのだろう。だからこそ、内田監督の分身を仰せつかった松本は、嬉々とした面持ちをひた隠しながら完膚なきまでイジメられている。
昭和の撮影現場にはびこる男尊女卑、年功序列、現在であれば眉をひそめてしまうような怒号まで、内田監督が忠実に再現している。その環境下で新人だから、演出が意味不明だから、ファッションが気に食わないからと、現場を牛耳るベテランスタッフや勝手気ままな俳優部から集中砲火を浴びる松本は、穏やかではないセリフを吐きながらも最後の見せ場まで耐え忍ぶ。
クライマックスは、活動屋たちの人間味あふれる“激情”をミュージカル調で演出しており、撮影所という非日常な空間を職場にしている人々の活力を爽快感とともに発散している。最後になるが、撮影助手役のモトーラ世理奈、アメリカ帰りの嫌味なプロデューサー役の渋川清彦、胡散臭さたっぷりだが現場に翻ろうされる製作プロデューサー役の高橋和也の静かな熱演も、今作を引き立てている。
(C)2021東映・東映ビデオ
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