金ロー「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝」放送記念 心震えるアニメ映画4選 【映画.comシネマStyle】
2021年11月7日 10:00
毎週テーマにそったおすすめ映画をご紹介する【映画.comシネマStyle】。
日本テレビ系「金曜ロードショー」では11月5日、感情を持たない少女ヴァイオレットが、代筆の仕事を通して愛を知るまでの成長を描く「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 永遠と自動手記人形」が放送されました。先週のテレビシリーズを再構成した「特別編集版」は、Twitterの世界トレンド1位になるなど大反響を呼びました。そこで今週は、心震えるアニメ映画を特集! 編集部メンバーがチョイスしたおすすめ作品4本をご紹介します。
▽京都アニメーション×山田尚子監督が丁寧に紡いだ、少女たちの言葉にならない思い
京都アニメーション制作のテレビアニメ「響け!ユーフォニアム」の劇場版。過去作にシリーズ演出として携わってきた山田尚子が監督を務め、吉田玲子が脚本を執筆。武田綾乃氏の小説「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」を原作に、テレビシリーズの主人公・黄前久美子が所属する北宇治高校吹奏楽部の部員、オーボエ担当の鎧塚みぞれとフルート担当の傘木希美にスポットを当てています。アニメハックでは、主演の種崎敦美&東山奈央のインタビュー(https://anime.eiga.com/news/106186/)を掲載しました。
一度は吹奏楽部を退部した希美(CV:東山)が戻って以来、希美と過ごす毎日が幸せなみぞれ(CV:種崎)。高校3年生、最後のコンクールの自由曲に選ばれた「リズと青い鳥」には、オーボエとフルートが掛け合うソロパートがあったが、親友同士のふたりの掛け合いはなぜかうまくかみ合わない。活発な希美と、希美との“別れ”を恐れ続けているみぞれ。自由曲「リズと青い鳥」のもとになった童話に自分たちを重ねながら日々を過ごすなかで、次第にふたりの心のすれ違いが浮き彫りになっていく。
「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、感情を持たない主人公が“誰かの思い”に触れて、次第に愛を知っていくという物語でしたが、本作もまた“誰かの思い”に触れている――そんな光景を見せてくれる作品です。高校卒業という別れの時が近づくなかで、ふたりの主人公のすれ違っていく気持ちを、表情の僅かな変化や音楽、童話「リズと青い鳥」のパートを織り交ぜることで表現。セリフによる説明を多用せずに「言葉にできない思い」を描いているからこそ、なにげない描写ひとつひとつがキャラクターの心情を代弁していますし、終盤のみぞれのオーボエ演奏シーンは彼女の真っすぐな思いにあふれています。
ちなみに個人的には、京都発のバンド「Homecomings」が主題歌を担当しているところも嬉しいポイント。本作を初めて見た時、エンディングの途中で主題歌「Songbirds」が流れてきた瞬間、小さくガッツポーズしました。そこまで含めてオススメポイントなので、ご覧になる方はぜひエンディングまで堪能してください。
▽湘南×ミニFM×新人女性声優×女子高生の友情ストーリー
「きみの声をとどけたい」(2017年/94分/伊藤尚往監督)
夏の湘南を舞台に、女子高生の友情物語を描くマッドハウス制作のオリジナルアニメ。個人的にブルーレイを購入したぐらい気に入っている作品です。タイトルにもある声と歌が大きな聞きどころで、新人女性声優6人と三森すずこが主要キャラクターの女子高生を演じ、野沢雅子、梶裕貴、鈴木達央が脇をかためています。
言葉には魂が宿っている、言葉に出し続ければきっと願いは叶う――コトダマを信じる女子高生のなぎさ(CV:片平美那)は、閉店した喫茶店にあるミニFMラジオの設備を使ってDJの真似事をしたことをきっかけに紫音(三森)と出会う。紫音は、交通事故で長く意識が戻らない母が取り組んでいたミニFMを復活させて聞かせようとしていたのだ。なぎさは紫音のため、友人たちの助けを借りて本格的にミニFMの放送をスタートさせる。
新人声優発掘のために製作された企画ありきの作品ですが、物語、音楽、新人声優を中心にした声と歌、すべての要素がバランスよく組み合わさり、直球のさわやか友情ストーリーが約1時間半の尺に過不足なく収まっています。派手なアクションや劇的な展開がある作品ではありませんが、見終わったあと素直に「いいものを見たな」と思えるような作品です。
キャラクターデザインは「あまちゃん」のファンアートなどで知られるイラストレーターの青木俊直氏が手がけていて、ペタッとした平面的な絵柄を絶妙なバランスで際立たせているアニメーションも魅力的です。公開時にアニメハックで行った以下2本のインタビューをご一読ください。
▽アニメーションと融合した新しい“ジョゼ虎”の感動
「ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版)」(2020年/98分/タムラコータロー監督)
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2003年に犬童一心監督により実写映画化された田辺聖子氏の同名小説を、新たに劇場アニメ化したもの。俳優の中川大志と清原果耶が声優を務め、テレビアニメ「ノラガミ」のタムラコータロー監督がアニメ映画初監督を手がけた。脚本は「ストロボ・エッジ」の桑村さや香、アニメーション制作は「僕のヒーローアカデミア」のボンズが担当した。韓国で昨年リメイクされた「ジョゼと虎と魚たち(2020・韓国版)」が10月29日より日本で劇場公開中。(執筆:和田隆)
大学で海洋生物学を専攻する恒夫(CV:中川)は、メキシコに生息する幻の魚を見るという夢を追いながら、バイトに勤しむ日々を送っていた。そんなある日、坂道を転げ落ちそうになっていた車椅子の女性ジョゼ(CV:清原)を助ける。幼少時から車椅子で生活してきたジョゼは、ほとんどを家のなかで過ごしており、外の世界に強い憧れを抱いていた。恒夫はジョゼとふたりで暮らす祖母チヅ(CV:松寺千恵美)から彼女の相手をするバイトを持ち掛けられ、引き受けることに。口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たるが、そんなジョゼに恒夫は真っ直ぐにぶつかっていく……。
犬童監督、妻夫木聡と池脇千鶴共演の実写版「ジョゼと虎と魚たち(2003)」、そして韓国でハン・ジミンとナム・ジュヒョクの共演でリメイクされた「ジョゼと虎と魚たち(2020・韓国版)」とぜひ見比べてほしい。そうするとよりこのアニメ版を楽しむことができるでしょう。主人公のジョゼと青年の設定がそれぞれちょっと異なっています。
アニメ版の青年は、大学で海洋生物学を専攻し、メキシコに生息する幻の魚を見るという夢を追いながらバイトに勤しんでいます。青年が大きな夢を持っていることがアニメ版の重要なポイントです。ひとつの原作で3種類の映画が制作され、それを見比べて楽しむことができるという稀有な作品です。
誰かの支えとなって生きていくことと、自分の夢を追いかけることを両立させることは難しいことなのかもしれない。でも、支えたい人が、夢を追っている自分を愛してくれるのであれば、乗り越えられるはず。その“恋”が、世界を輝かせてくれることを教えてくれます。名編と融合したアニメーションの美しい映像と物語に心震えることでしょう。
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▽木版画調の3DCGアニメで「心の色」を描くディストピアSF
「COCOLORS」(2017年/46分/横嶋俊久監督)
※「シネマ映画.com」で配信中!
手前みそになりますが、「シネマ映画.com」で11月25日まで独占配信中の「COCOLORS」をぜひ見ていただきたくご紹介します。「ニンジャバットマン」「ポプテピピック」などで知られる神風動画が自主製作し、2017年に劇場公開された中編3DCGアニメです。
人体を融解させるバクテリアを含んだ有害な灰が空と地上を覆い、人々が巨大なマスクと防護服で身を守りながら、地下深くに作った街で暮らす世界。そんな環境で育ったふたりの少年アキ(CV:高田憂希)とフユ(CV:秦佐和子)は、いまだ見たことのない空に憧れを抱いていたが、やがて外の世界の現実を知り、成長していく。
タイトルの「COCOLORS(コカラス)」は、心(COCOLO)と色(COLOR)を組み合わせた造語。人間が地上で暮らせなくなったディストピア世界を舞台に、マスクを被って表情を見ることができない少年たちの「心の色」が描かれます。
エッジの効いた作品群で知られる神風動画がこだわりぬいて作りあげた朽ちた世界と、顔の表情を見せずにキャラクターの心情を表現する繊細なドラマが見どころです。木版画が大きなモチーフになっていて、まるで精緻な木版画が動くようなアートアニメ的な感覚も味わえます。くわしくは特集ページ(https://eiga.com/movie/88088/special/)をご参照ください。
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