「透明人間」主演エリザベス・モス、女性として生きる苦悩を作品に反映「狂っていると思わされることはよくある」
2020年7月7日 13:00
[映画.com ニュース] 「ソウ」シリーズの脚本家として知られるリー・ワネルがメガホンをとったサイコサスペンス「透明人間」が、7月10日に公開される。「子どもの頃からホラー映画が大好きだった」という主演のエリザベス・モスが、ゴールデングローブ賞主演女優賞、エミー賞主演女優賞を受賞したドラマ「ハンドメイズ・テイル 侍女の物語」で多忙を極めるなかで、今作への出演を決めた理由を語った。(取材・文/小西未来、編集/編集部)
「ゲット・アウト」「アス」を世に送り出したブラムハウス・プロダクションと、ワネル監督がタッグを組む本作は、最先端の技術で恐怖と狂気に満ちた“透明人間”を描く。天才科学者の富豪・エイドリアンに束縛されていたセシリア(モス)は、ある夜、計画的に脱出を図った。悲しみに暮れたエイドリアンは、やがて手首を切って自殺。莫大な財産の一部は、セシリアに残されていた。その後、エイドリアンの死を疑っていたセシリアの周囲で、不可解な出来事が起こるようになる。命の危険を伴う脅威となって迫る“見えない何か”――セシリアは死んだはずのエイドリアンに襲われていること証明しようとするが、徐々に正気を失っていく。
何よりも、またホラー映画をやりたいと思っていたの。 今作の前の年に「アス」で小さな役をやらせてもらって、ユニバーサルやブラムハウス、ジョーダン・ピール監督との仕事を心から楽しんだわ。ダークな要素に対する耐性がもともと高いので、簡単にビクビクするようなことはないの。11歳や12歳のときには、女友だちと集まって、みんなでキャーキャー言いながらホラー映画を見ていたしね。
「透明人間」の脚本を読んでみたら、キャラクター主導の素晴らしい物語で、心理的虐待やDVといった要素が盛り込まれていた。いじめや家庭内暴力、女性の意見が軽視されていることなど、現代社会において重要なテーマが盛り込まれている。これは脚本を執筆したリー・ワネル監督の手腕の賜物だと思うわ。
ワネル監督と私にとって大事だったのは、彼が本物のモンスターのように感じられるようにすることだったの。現代において“モンスター映画”をリアルに作りたければ、怪物をリアルで、生き生きと描かなくてはいけない。だからこそ、彼をハンサムで知的にしたのだと思う。私たちとそっくりの容姿をしながらも、虐待的で、言葉巧みに他人を誘導する怪物。この映画に参加させてもらうことになって、私はワネル監督と話して、女性の視点を提供することになった。女性として生きていると、何か意見を言っても、自分の考えが間違っているとか、自分が狂っていると思わされることはよくあるので。ワネル監督はとてもオープンで、積極的に私の意見を取り入れてくれた。おかげで、自分の意見を殺されてしまった女性の心境が、しっかり描かれていると思う。
1970年代、80年代のいわゆる古典ね。「ポルターガイスト」「エクソシスト」「IT」「シャイニング」など。その後、大人になるにつれて、「ローズマリーの赤ちゃん」とか、少しアートっぽくて、変わったものにひかれるようになっていったの。最近は、そうした映画が復活してきていると思う。ジョーダン・ピール監督の映画「ゲット・アウト」や「アス」、それに「クワイエット・プレイス」や「バードボックス」とか。スマートなホラー映画が増えてきている。これは、いわゆるホラーの古典映画への回帰だと思う。
目に見えない“何か”ね。目に見えない脅威は、自分が無力であるがゆえに恐ろしい。それが何なのかが分かれば反撃することもできるし、攻撃されていることに気づくこともできる。でも、それが分からなければ何もできない。これは誰もが恐ろしく感じることだと思う。あとは、こうして人前で話すことね(笑)。
台本を読んだとき、出演契約を交わしたときに、このドラマに心を打たれたのは、これが生き残りをかけたひとりの女性の物語であるという点なの。彼女は母親であり、妻であり、人間であり、友人であり、姉妹でもある。つまり、私たちと同じ人間。マントを被っているかもしれないけれど、超能力者ではない。彼女は異常な状況に置かれ、娘のために、家族のために、周りの人々のために、生き延びることを求められる。これは、私たちが共感できる普遍的な状況だと思った。その後、アメリカだけでなく、世界中の人々の権利がさまざまなレベルで脅かされることになった。女性に限った話ではなくてね。そんななかで、男性上位社会と闘う女性の物語に参加していることを、誇りに思っている。とても大事な物語だと思うし、観客のみなさんと同じように、この物語には深く共感しているわ。
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