【日本最速レビュー】「スカイウォーカーの夜明け」は“亡き者たち”に捧げるピリオドだった
2019年12月18日 17:01
[映画.com ニュース] 大ヒットSFシリーズの最新作「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」が“42年間の歴史”に終止符を打つ瞬間まで、残りわずかとなった。映画.comは、12月20日の日米同時公開に先駆け、いち早く本編を鑑賞する機会に恵まれた。J・J・エイブラムス監督が重責と覚悟をもって打ち出したピリオド――2時間22分の長大な旅を終えて会場の外へ出ると、“同乗者たち”がたむろし、興奮気味に感想を語り合っている。筆者と同じく、満ち足りている表情を浮かべた人が多数を占めていたように思えた。
鑑賞後、エイブラムス監督の“ある言葉”を思い返した。それは、映画.comが敢行した主人公レイ役のデイジー・リドリーのインタビューで、彼女が代弁する形で明かしたもの。「レイとカイロ・レンは陰陽の関係です。どんな闇にも少しの光があり、どんな光にも少しの闇がある。だからこそ、お互いに自分のもうひとつの側面を象徴している人物にひかれるのです」(リドリー)。この発言は、本作の根幹をしっかりとらえていたのだ。
“光”の存在であるレイ、そして“闇”を代表する存在となったカイロ・レン。2人は「スター・ウォーズ フォースの覚醒」「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」を通じて、互いに侵食し合うような形で影響を及ぼし合っていた。そして、本作ではその意味合いが深化している。特筆すべきは、両者がライトセーバーを抜き、相対する場面だろう。それぞれの場に立つ2人に届くのは、両者の“声”だけではない。空間と次元が溶解し、屈指の野心的戦闘シーンが生み出された。シリーズの特徴のひとつでもあるワイプ(あるシーンから別のシーンに転換する際に使用される、カーテンが引かれるようなエフェクト)すら飛び越え、ストーリーに大いなる影響を及ぼしていく。
とりわけファンが注目しているのは、レイの出生の秘密だろう。もちろん明確に打ち出されるわけだが、鑑賞者であれば誰もが「口外したくない」と感じてしまう部分だ。彼女が事実とどう向き合い、何を結論付けるのか――その心理は、その他のキャラクターたちにも通じる点がある。元ストームトルーパーのフィン、レジスタンスの優秀なパイロットであるポー・ダメロン、そしてスカイウォーカー家の血筋に苦悩するカイロ・レン。向き合う運命に対し、それぞれが“選択”をする場面が訪れる。そんな彼らを包み込むのは、やはりレイア・オーガナだ。過去の未使用映像で出演を果たした故キャリー・フィッシャーさんの口から語られる「不可能なんてない」という言葉は、物語全体を包み込むようなものだった。
「終わりが始まる」という意味深な言葉を吐いていた暗黒卿パルパティーンの再登場に、世間はざわついたはずだ。「スター・ウォーズ ジェダイの復讐」(劇場公開当時。2004年のトリロジーDVDボックス発売時に、原題「Return of the Jedi」を訳した「ジェダイの帰還」に変更)で壮絶な死を遂げていたはずだが、本作での存在感は予想以上に巨大である。奈落の底に落ちたはずの彼が、一体どのような“計画”を進めていたのか。抵抗を続けていたレジスタンスだけでなく、“最後の希望”として輝いていたレイすらも飲み込むかのような“最期”を提示するさまは、まさに「全ての元凶」という言葉が相応しい。
本作は「スター・ウォーズ」の“42年間の歴史”の総括として明示される。ある人物が命運をかけた決戦に臨む際に、こんなことを口走っていた。「全ての亡き者のために――」。時系列上「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」から始まった“スカイウォーカー・サーガ”には、歴史を築いた大勢の犠牲者たちがいたことを、決して忘れてはならない。
ジェダイ、シス、レジスタンス、帝国軍、ファーストオーダー、戦闘に巻き込まれた市民たち。クライマックスで描かれる総力戦の行く末は、それらの“亡き者たち”に捧げられる。彼らなくして「今」はないのだ。戦いに赴く者たちは、人生から“喪失”していったものと対峙し、時に助言を受け、時に決別しながら、自ら選び取った決断を下していく。その選択が吉と出るか、凶と出るか――結末は、スクリーンで見届けてほしい。ただし、エイブラムス監督が打った“42年間の歴史”のピリオドは“愛”に満ち溢れている。その光景は「スター・ウォーズ」シリーズの核が「家族の愛と喪失」であったことを再認識させてくれた。もしも、エイブラムス監督が目の前にいたのなら、感謝を伝えるべく“ハグ”を交わしたいと思う。それが自分の思いを伝えるための、最も率直で、確実な方法だからだ。
「スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け」は12月20日から日米同時公開。
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