B・メンドーサ審査委員長、TIFFのコンペに疑義「芸術性と商業性は融合できない」
2018年11月6日 12:00

[映画.com ニュース] 仏映画「アマンダ(原題)」が東京グランプリ、最優秀脚本賞の2冠に輝き閉幕した第31回東京国際映画祭。コンペティション部門の審査委員長を務めたフィリピンのブリランテ・メンドーサ監督は「特にもめることはなかった。我々の選択には満足している」と胸を張った。
「審査委員長は5回目だが、私自身が監督でありプロデューサーなので、映画製作の行程を知っているから他の作品を審査するのは簡単なことではない、大変難しい作業だった。あくまで異なる役職として、1観客としてでもなく、作品の質、出来に関して見た。その中で映画的言語が効果的に使われ、心を動かされるかを大切にした」
世界109の国と地域から応募のあった1829本から選出された16作品を、1日3本ペースで観賞。途中で意見交換などはせず、最終選考会で5人が5、6本を挙げて絞り込み各賞を振り分けた。自由気ままな青年が、姉の突然の死によって姪(めい)の世話をしながら自我を見いだしていく「アマンダ」の東京グランプリに関しては、満場一致だったという。
「公園で何もしていない人たちが不条理に殺されてしまうことで、人間の命はいつどうなるか分からない。安全だと言われている日本でも暴力が起こりえるということを考えさせられた。私も以前、似たような物語を構想したことがあったので心をつかまれた」

ほかにデンマークの「氷の季節」が審査員特別賞と最優秀男優賞、伊の「堕ちた希望」が同監督賞と同女優賞、英国の「ホワイト・クロウ(原題)」が同芸術貢献賞と受賞は欧州作品に集中した。
「16作品は多様で欧州映画、アジア映画という見方はしていない。ただ、欧州の作品は内容的にも重みがあり、シリアスでタイムリーな題材を扱っている印象だった」
だが、コンペ全体のレベルに関しては「個人的な意見」として懐疑的な見解を述べる。
「プログラマーの説明では、芸術性と商業性の両方が必要で一般の観客にも通じるものでなければならないということだったが、その2つは組み合わせることはできないと思っている。自分の映画作りの哲学として、まずビジョンをはっきりさせなければいけない。作品に対する責任を考え、どれだけいい作品を作れるかに集中する。それが商業的に成功すればご褒美のようなものだから融合は難しい。私たちは与えられた16本の中から良さを見つけて、賞を与えるべき作品を選んだにすぎない」
暗に物足りなさをほのめかし、日本から選出された「愛がなんだ」、観客賞を受賞した「半世界」に関してはさらに手厳しい。
「『愛がなんだ』は商業的で観客が共感しやすい内容だが、本来であればコンペに出る作品ではないと思う。『半世界』もいい演技をしている人はいたし、日本の地方の暮らしや炭作りなどが見られて良かったが、心を動かされることはなかった」
では、どうすれば東京国際映画祭が世界の主要な映画祭と伍(ご)していけるようになるのか。ベルリン(2月)、カンヌ(5月)、ベネチア(8月)の3大映画祭を軸にした映画祭カレンダーにおいて年の終盤という開催時期の問題もあるとしながらも、あくまで映画祭の“顔”であるコンペ出品作の質の向上だと指摘する。
「それぞれの国の配給会社の思惑との折り合いなどもあるだろうが、主だったフィルムメイカーが出せば大きな影響をもたらすことができると思うような地位、立場を確立しなければいけない。それが徐々にでもでき認知されれば、世界中のフィルムメイカーが出したいと思うようになる」
加えて、東京の直前に開催される釜山国際映画祭は「確立されている」と言った。かつては東京でのグランプリ作品が、翌年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞したこともあった。30回以上を重ねながら後発の後じんを拝しているというメンドーサ監督の提言を、主催者側はいかに受け止めるのだろうか。
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