アカデミー賞“史上初”の候補!レバノン映画「判決、ふたつの希望」監督が製作秘話語る
2018年8月30日 15:30
[映画.com ニュース] 第90回アカデミー賞でレバノン映画として初めて外国語映画賞にノミネートされた「判決、ふたつの希望」のジアド・ドゥエイリ監督が来日し、取材に応じた。キリスト教徒であるレバノン人男性とパレスチナ難民の男性との口論が裁判沙汰となり、やがて、メディアや大統領をも巻き込む全国的な事件へと発展していくヒューマンドラマ。クライマックスに下される“判決”について、共同脚本も手がけたドゥエイリ監督は「どんな結末にするか、4カ月悩んだ」と振り返った。
クエンティン・タランティーノ監督作品でアシスタントカメラマンなどを務め、これが長編4作目となるレバノン出身のドゥエイリ監督が、自身の体験談に基づきメガホンをとった本作。度重なる紛争の歴史を背負ったレバノンの政治、宗教、民族といった複雑な問題を扱った内容だが、「世界に向けて、中東をめぐる社会的なメッセージを発したかったわけじゃない。本国では結果的に議論を巻き起こした部分もあるが、それが目的ではないし、見てくれる人が自由にテーマを抽出してくれれば、それで満足だよ」と語る。
その言葉通り、すでに本作には、宗派や信条の違いを超えた“共感”の声が多く寄せられているといい「きっと、皆さんがこの物語から、自分の身の回りや人生との共通点を見つけてくれたからだと思う。決して見越していたわけではないが、今は世界全体にカオスや衝突が渦巻いているからね」。さらに「シニカルな言い方かもしれないけど、私自身はこうした世界情勢を楽しんでいる面もある。作り手としては、ネタがゴロゴロあって困らないしね(笑)」と自己分析する。
「脚本を書くときに、まず考えるのはキャラクターのこと。主人公は誰なのか。どんな道のりを歩み、その道なりにはどんな壁があるのか。彼、もしくは彼女が求めるものは何か。誰が味方で、誰が敵か……。とにかく考え抜いて、その上でドラマを練り上げていく。メッセージありき、ではないんだ」
物語は後半、パレスチナ人の現場監督ヤーセルと、レバノン人の自動車修理工トニーが繰り広げる法廷劇へとなだれ込んでいく。「もともと法廷ドラマが大好きだし、ひとつの空間に押し込められたふたりの対決をじっくり描きたかったから」と語るドゥエイリ監督は、参考にした映画として、「或る殺人」(1959)、「ニュールンベルグ裁判」(1961)、「アラバマ物語」(1962)、「クレイマー、クレイマー」(1979)、「評決」(1982)、「秋菊の物語」(1992)、「フィラデルフィア」(1993)を挙げてくれた。
意外なところでは、ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」(2003)にもインスパイアを受けたそうだ。「地元の刑事と、ソウル市警から派遣された刑事が衝突しながら、次第に立場や関係性を“逆転”させる姿がとても興味深かった。ちょうど、ヤーセルとトニーがそうであるようにね。この点は作品として、共通点があると思うよ」
こうして、さまざまな意見や視点が交差しながら、当人たちを置き去りに加熱する裁判劇は、見る者を刺激しながら、エモーショナルな結末を迎えることに。「うちは両親が弁護士と裁判官という法律一家なんだ。弁護士である母は、いわば法律のコンサルタントとして、いろんな意見をくれたよ。その分、選択肢が多くなり、どんな結末にするか、4カ月悩んだ。結果的には、有機的な結論に達することができたし、見終わった後に“希望”をもって劇場を出てもらえるはず」と胸を張る。果たして、どんな“判決”が下されるのか? ぜひ、映画館で見届けてほしい。
「判決、ふたつの希望」は8月31日から、全国で公開。
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