瀬々敬久監督&大九明子監督、TIFFコンペに意欲十分 原恵一監督は特集上映作への思いを熱弁
2017年9月26日 17:23

[映画.com ニュース] 第30回東京国際映画祭のラインナップ発表会見が9月26日、東京・六本木ヒルズアカデミーヒルズで行われ、コンペティション部門に選出された「最低。」の瀬々敬久監督、出演の森口彩乃、佐々木心音、山田愛奈、「勝手にふるえてろ」の大九明子監督、特集上映「映画監督 原恵一の世界」で参加する原恵一監督が登壇した。
88の国と地域から1538本の作品が集ったコンペティション部門。日本から選ばれた「最低。」は、人気AV女優の紗倉まなの同名小説を原作とし、境遇も年齢も性格もバラバラながら、それぞれAVと関わりを持つ3人の女性の生きざまを描く。一方「勝手にふるえてろ」は、人気女優・松岡茉優の映画初主演作。恋愛経験のない主人公のOLが2つの恋に悩み暴走するさまを映し出す。
「原作はAV業界の裏話的なものではなくて、AV女優さんを取り巻く日常をち密に描いている」と語った「最低。」の瀬々監督は、「これまで性愛の世界といえば、別の世界の話のように思えましたが、現代ではAVと日常は非常に近い関係性。今の日本の現状、これもまた普通の生活なんだというものを描いてみようとした」と作品の意図を明かした。また撮影中には、思わぬハプニングあったようで「プールに落ちるというシーンを撮っている最中、佐々木心音さんが脳震とうを起こして、病院に担ぎ込まれてしまったんです。実際にそういう内容のシーンだったんですが、映画が現実になってしまった。慌てました。佐々木さん、本当にすいませんでした!」と平謝り。必死の謝罪を受けて恐縮していた佐々木は「生きています(笑)」と切り返していた。
「タイトルを見た瞬間に監督することを決めた」という「勝手にふるえてろ」の大九監督は、タッグを組んだ松岡の才能に舌を巻いたようだ。「とても集中力が高い方。撮影前にお話しする機会をつくりまして、そこで20代の頃に置いてきた自分の像をお伝えしました。ひとつひとつの言葉に『わかりました』と受け答えしてくれて、当日現場に現れたのが映画の中の姿なんです」と役どころに対する理解力の高さに感心したようだ。この日は、松岡からのビデオレターも上映され「全国のこじらせ女子や、ちょっと背中を押してほしい女の子たちに届けばいいなと思いながら撮影しました。たくさんの女の子たちの背中をツンツンと叩けるような作品です」とメッセージを寄せていた。
特集上映「映画監督 原恵一の世界」が組まれることになった原監督は、現在着手している新作のキャラクターがプリントされたTシャツ姿で登場。ラインナップのなかで特に思い入れの深い作品は「映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲」だそうで、「僕にとっては大きいターニングポイントとなった1本。海外のお客さんに見てもらえるのが楽しみです」と思いの丈を述べた。また、実写作品「はじまりのみち」では名匠・木下惠介監督、「百日紅 Miss HOKUSAI」では原作者・杉浦日向子氏の“才能”を世間に知ってもらいたいために「こんなすごい人々が日本にいるんだよと強く訴えたくて。ある意味怒りに満ちてつくっていました(笑)。『お前ら、見とけよ!』と。興奮していました」と冗談を交えながら話していた。
会見の終盤、東京国際映画祭への思い、そして期待することについて問われた瀬々監督と大九監督。「東京という首都で開催されるため、自分たちに近い映画祭ではあった。世界の人たちとの出会いや交流の場として機能し、“映画の自由”を守れるような映画祭であってほしい」(瀬々監督)、「元々は映画祭で作品を見る側の人間だったので、不思議な感覚です。多くの方々の愛情によって育ってきた映画祭。これからも40、50回と、私も関わったり、作品を見たりできたらと思います」(大九監督)と回答すると、原監督は「“世界四大映画祭”と言われるような映画祭に育ってほしい。そして、ゆくゆくはコンペ部門にアニメーションも混ぜてくれるようになってほしいですね」と胸中を吐露していた。
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