百日紅 Miss HOKUSAI 劇場公開日 2015年5月9日
解説 江戸風俗研究家で文筆家や漫画家としても活躍した杉浦日向子の漫画代表作「百日紅」を、「カラフル」「河童のクゥと夏休み」の原恵一監督がアニメーション映画化。浮世絵師・葛飾北斎の娘で、同じく浮世絵師として活躍した女性・お栄が、父・北斎や妹、仲間たちとともに生きた姿を、江戸の町の四季を通して描く。アニメーション制作は、原監督作では初となるProduction I.Gが担当。声優には、お栄役の杏、今作で声優初挑戦となる北斎役の松重豊ほか、濱田岳、高良健吾、美保純、筒井道隆、麻生久美子ら豪華俳優陣が集った。
2015年製作/90分/G/日本 配給:東京テアトル
オフィシャルサイト スタッフ・キャスト 全てのスタッフ・キャストを見る
北斎の史実をよく知らないので、お栄のこともよく知らない。お栄にはおなおのような妹が実際にいたのか、もよく知らないが,この物語の中で語られる妹に対する優しさや愛情が心地よい。おなおが風になって北斎とお栄の家にやってくるところなどジーンときました。 事実を描いた歴史物としても面白いし、創作のアニメとしても日本文化に触れられるとても面白い映画でした。 わさわさと咲き、もりもりと散る。まさにピッタリの表現。15年ほど前まで我が家の庭にも百日紅があったが、本当にわさわさと咲くし,散る時ももりもり散ってました〜。
北斎が「おーい、おーい」と四六時中、呼びつけたから、葛飾応為。 この作品の主人公、お栄の画号だ。 ふっとい眉毛で、自分のことを俺と呼ぶ。 この風貌は、江戸風俗研究家でもある杉浦日向子さんの創作だが、お栄と云えば、僕にとっては、この顔、この眉、そして、映画のせいで、この杏さんの声になってしまった。 (原作の漫画は、まぶたがもっと重そうで、アニメは美人に調整されていますね。) 「合葬」などとならんで杉浦日向子さんの代表作である「百日紅」のアニメ映画化だ。 テアトルでアニメを上映することがあるんだとか思いながら5年以上前に出かけたことを今でも鮮明に覚えている。 今でも続く浅草寺の四万六千日の縁起担ぎ、原っぱのなかにどーんと現れる吉原、そして、隅田川。 きっと江戸はこんなんだったんだろうなと、原作の共々思わせてくれる。 そして、お栄。 生涯、北斎に付き添い、結婚経験はあったようだが、実際は自立して自由に生きた女絵師。 幕府の取り締まりのあれこれを、ものともしない江戸の人々の自由な気質にも重なる。 しかし、作品は多くなく、北斎をして、美人画は自分より上手いとされたが、艶っぽさは歌麿やへた善には及ばない。 歌麿のちょっとエロチックな江戸の女性は誰もが知るところだと思う思うが、へた善こと渓斎英泉の描く女性は、石原さとみのようなふっくらした唇が特徴でセクシーだ。 でも、葛飾応為の描く女性は、凛として誰にも依存しない自立した感じが最大の特徴だ。 「月下砧打美人図」や「三曲合奏図」がそうだ。 前者は東京国立博物館蔵、後者はボストン美術館蔵で、昔、里帰りした時に見た。 そして、応為は、卓越した陰影表現を用い、「吉原格子先之図」や「夜桜美人図(春夜美人図)」を描いた。 前者は太田記念美術館蔵で、後者はメナード美術館蔵。 江戸末期とは云え、ルネサンス後期の陰影表現を用いた天才画家カラヴァッジオの作品に触れることなどなかったはずなのに、この独特な陰影表現を見ると、天才とはアトランダムに出現するのだと改めて思う。 日本にある作品も数年に一度観る機会があるかないかのはずなので、興味のある方は色々調べてみて下さい。 お栄。 江戸の自由な雰囲気のなか、オヤジの世話をしながら、オヤジの代筆も厭わず、気ままに自身で凄い肉筆画を残した天才女絵師。 描く女も男な諂うことなどない自立した女だ。 わさわさと咲き、もりもりと散る。 短くはなかったと思うが、ふっとく生きた百日紅のような女の人生だ。 おもしれぇ。 因みに、僕は、杉浦日向子さんが生前よく通ったという浅草の蕎麦屋が大好きだ。 もともと昼しか営業してなくて、開店前から人が並んで、蕎麦が無くなることもしばしば。 辛い蕎麦つゆに、摘んだ蕎麦の先っぽをちょいとつけて、ずずっ一気に啜る。 蕎麦の香りが口の中にふわっと広がる。 相席した下町のおばさんに、良い食いっぷりだね!江戸っ子だね!と言われて、良い気分になったこともある。 江戸っ子じゃないけど。 ドイツのグルメ雑誌の取材に同席したこともある。 その雑誌にデカデカと僕の顔が何枚か載った。 ちょっとした自慢だ。 百日紅は大好きなアニメだ。
好悪定まらぬ中、キネマ旬報 6月上旬号斎藤環氏の緻密骨太な評を読んで合点がいった。 見えぬこと、見えること、そして見え過ぎることの映画。 だが原典と思しき「赤ひげ」「千と千尋」の何れにも少しずつ劣る気がする。
2021年1月27日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
原作の杉浦先生が好きで、ずっと気になりながらやっと見られた。 口コミ見ると、ストーリーに対する意見が多いみたいですが、原作結構長いのであまり気にならない。ストーリーも、江戸の文化を描くという視点で捉えると気にならなかった。映画を見る目的が原作者か映画監督かで感想が変わると思った。 確かに演技は朴訥としている印象(嫌いではなかった)で、音楽も所々合わないものもあって、結果的に映画としての評価は辛めになってしまうかもしれないが江戸の街並み、長屋の佇まい、吉原‥随所に杉浦先生の絵を思い出すシーンがあり、それが動いているだけで満足した。 ただ、髪型、着物、物売りの声などで気になる所もあった。また、劇中の何気ない仕草など、杉浦先生でなければわからないこともあったであろう。 叶わないことではあるが、原作者に、「このお芝居の間違いを教えてください」と聞いてみたい。 杉浦先生のもう一つの作品もそうだが、原作者が存命でない事がこれ程惜しまれる作品はないだろう。
すべての映画レビューを見る(全69件)