野村萬斎、「のぼうの城」成田長親役で8年ぶり映画主演
2010年6月23日 05:17
[映画.com ニュース] 狂言師で俳優の野村萬斎が、和田竜の人気時代小説を映画化する「のぼうの城」に主演することが決まった。「ゼロの焦点」の犬童一心監督と「ローレライ」の樋口真嗣監督が共同でメガホンをとる同作は、野村にとって「陰陽師II」以来8年ぶりとなる主演作。配給のアスミック・エースは、佐藤浩市、山口智充、成宮寛貴の出演も併せて発表した。
同作は、第29回城戸賞を受賞した脚本「忍ぶの城」を、映画化を前提に小説として執筆した和田の文壇デビュー作。第139回直木賞にノミネートされたほか2008年の本屋大賞では2位となり、時代小説としては異例の発行部数40万部を超えるベストセラーとなった。武蔵国忍城(現在の埼玉県行田市)を舞台に、「のぼう様(でくのぼうの意)」と呼ばれ領民からも慕われた城代・成田長親が、天下統一を目指す豊臣秀吉方2万人の大軍を指揮した石田三成の水攻めに屈せず、わずか500人の兵で抗戦した姿をダイナミックに描く。
野村が演じる長親は、武力も知力もないが圧倒的な人気で領民から慕われる不思議な魅力をもつ人物だ。映画化へ向けて始動してから7年越しで実現にこぎ着けた犬童監督は、「初期の段階で『のぼう様は萬斎さんしかいない』という話になっていた。ふだん映画やテレビに出演している俳優のかただと、周りに自然となじんでしまいキャラクターが立たなくなると思ったんです」と説明。だからこそ、「どこかいつも宙に浮いているようなこの人物を全編通してやりこなせる人はと探してみると、萬斎さんしかいなかった」と全幅の信頼を寄せる。
約5年前にラブコールを受けた野村は、待望の製作決定に「このような映像作品に出演できることを素直にうれしく思います。自分が浮いているのか分かりませんけれども(笑)、違うジャンルの方々とひとつの作品をつくる、ドレッシングの水と油のように分離しながら一緒になっての共同作業にあこがれます」と喜びをかみしめている。ぼーっとして仙人的な役どころは、自らにも相通ずるものがあるそうで「みんなと一緒になりたいとずっと思っているのですが、どうやら一緒になれないらしいというのが40歳を過ぎてやっと分かってきました(笑)。どこか違うところ、しかしそこに愛すべき人柄がにじみ出るというところを作りこんでいきたいなと思っています」とクランクインが待ちきれない様子だ。
犬童監督は、樋口監督との二人三脚という道を選んだ理由を「アクションシーンなどビジュアル的に作り込んでいくうえで大変な部分が多数あったことと、キャラクターの造形など助けていただきたい部分がたくさんあったから」だという。しかし、役割分担を明確にするつもりはないそうで「一緒にひとつのものを作りあげてふたりの作品にしたいと思っています」と意欲新た。一方の樋口監督は、同作の本格始動を待つ間に「日本沈没」(06)や「隠し砦の三悪人/THE LAST PRINCESS」(08)などエンタテインメント作品を経験することで腕に磨きをかけた。その集大成として、「『のぼうの城』を監督できることをうれしく思います。大変なことがいっぱいあるだろうけれど、犬童監督と力を合わせてやっていきたい」と意気込んでいる。
現在、北海道に忍城の巨大セットを建築中で、8月にクランクイン予定。共演の佐藤は、長親の幼なじみで「皆朱(かいしゅ)の槍」の使用を許された成田家の侍大将・丹波に扮する。山口は、丹波をライバル視する侍大将で6児の父でもある豪傑・和泉役。成宮は、実戦経験はないがあらゆる兵書を読破した“自称”軍略の天才・靱負(ゆきえ)を演じる。撮影では、湖とその中にできた島々を要塞化し“浮き島”と称される忍島の全ぼうが明らかになるほか、各侍大将の戦いぶりや水攻め攻防など、原作でつむがれた名場面がどのように描かれるのかにも注目が集まる。
「のぼうの城」は、2011年に全国で公開。
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