護られなかった者たちへのレビュー・感想・評価
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阿部寛の目の演技の秀逸さ
昭和平成は寅と健さん。令和は阿部寛か。
初めてだっからラストまで涙が流れる稀有な物語
演技の上手い役者が集結
震災から話は始まるが、テーマは生活保護に関して。かなり深い話、重...
震災から話は始まるが、テーマは生活保護に関して。かなり深い話、重いテーマ。
利根はあまり人と関わらず寡黙な性格で、避難所でもあまり話さない。けいさんとカンちゃんとは家族のように仲良くなった。そのカンちゃんがパンを貰うために並んでいたのに、後から来た人に奪われてしまう。それを見て利根はカンちゃんのためにパンをもらおうとする場面、カンちゃんを思っての優しさなのに、やり方が少し乱暴でみんなには理解されない。黄色いジャケットを着たカンちゃんに優しくする理由は最後に語られるのだが、これがまた辛い話なわけで。
震災も辛い場面、生活保護に関わる場面も不正受給や貰いたいのに貰うことに罪の意識を持ってしまったりと胸を締め付けられる。私の知り合いの近所の人が生活保護を受けているけど、パチンコに行っているという話をしているのを聞いたことがあるが、そういうことがあったりするから、職員の人も審査を厳しくすることは仕方のないことなんだろう。この映画は殺人事件ではあるけれど、殺される人も犯人も、悪い人ではないのがまた辛いところ。
話も良いし、出演者も上手い。佐藤健は安定の演技、清原果耶はこの難しい役をちゃんとこなして、これからが本当に楽しみな女優さん。
ただ、利根が犯人では、と結びついた経緯が少し弱かったかな。
絆と生活保護の実態
東北大震災のあと、いわゆる、絆の大切さが改めて認識され、そういう想いを強くした人も多い。
あれから10年。生活保護の実態というまた違った観点から10年を見つめなおすことができた。
絆と生活保護。みんななんとかしたいと思いながら、劇中にもあったが、思考停止に陥ってしまう実態。それでも、幹ちゃんも、笘篠も、上崎さえも、みんなそれぞれの立場で何かを変えようとしていた。そうやって生きようとしていた。
そんななか、利根(泰久にいちゃん)だけは、(生活保護科に就職した幹ちゃんに)「そんなことしても、何も変わらないんだよ」と言い、斜に構え、淡々と生きているように見えたが・・・
最後の最後に、「死んでいい人なんか誰もいないんだ」と幹ちゃんに訴え、とある悲しみを抱えながら生きていたことを笘篠に明かした。
10年たっても癒えるものではない。でも何かを変えようと生きていき、絆は繋がる。
P.S.)倍賞美津子さんが相変わらず素晴らし過ぎました。
どのシーンで終わるのか?と思いました
倍賞美津子さんは、初めから最後までそこで生きて愛を持っていて、どんな動作も目を奪われました。
とても素敵でした。
清原果耶さんは、恨むような目を忘れられません。最後の緊迫したシーンをやり切る集中力が半端ないなと思いました。
永山瑛太さんは、
嫌な人に恐れず飛び込む感じがしました。
一緒に見た方は、
「こんな人はこんなふうに動くかも」みたいな感じがしてよかったと言っていましたが、
私は、スイーツにさらに蜜をかけたように
嫌な人という印象を過剰に受けてしまいました。
生活保護の職員を、嫌な目で見てしまいそうです。
佐藤健さんは
すっかり犯人だと騙されました。
フードをかぶって、人付き合い悪そうな目。
そんなふうに、無意識にも
こいつ人を殺しそうだ
とジャッジする自分も恐ろしいですね。
何が正義かわからなくなりました。
結局、無理心中を試みた親子はどうなってしまったのか。
けいさんだって娘に迷惑をかけたくなかった。そしてそれを2人には話せなかったのが事実…。残されたものがその判断に、何かをしてしまっていいのか。
保護を受ける必要がある人って一体どんな人のか。
健康で文化的な最低限度の生活ってなんなのか…
暗い気持ちになるようで、
邦画では、珍しく心を揺さぶられて自ずと泣きそうになった映画でした。
当たり前とは何かを考えさせてくれる、刑事ドラマとして、そして震災を通じて生活保護の意味を訴えかける作品
あの日あの時、大勢の人が犠牲になった震災で誰もが疲弊していたあの瞬間。
心の余裕などなくて如何しようも無い中で、見ず知らずの他人同士で心を通わせ「幸せ」を実感する瞬間。
生活保護という「当たり前」を保証する制度を通じ、保証されていく人とされぬ人。
凶悪な事件を皮切りに、過去に起きた悲惨な災害を思い返す刑事ドラマとしての一面。
この三者がバランスよく盛り込まれ、「何が当たり前なのか」、「何を当たり前とするのか」、「誰が当たり前を保証するのか」を描いた作品。
守るではなく「護る」だからこそ意味がある、涙無しには観れない映画でした。
劇場という大スクリーンでだからこそより感じる、恐怖、失意、希望、そして未来 。
一見すると描き切るのが難しい内容を丁寧に描写し、その中にも伝えたいことを軸に、様々な人の思いを少ない時間の中でも伝えきった素晴らしいものでした。
是非劇場で観てほしいです
色々考えさせられました
護られなかった者たちへ…
何度もタイトルにしてますが、考えさせられました。
いやあ実に深い!そして重い!現代日本の問題点をえぐるような題材。
やはり『友罪』の瀬々監督らしい社会問題に食い込む切り口。
また『糸』で感じたやるせなさ、切なさをひしひしと感じる展開でした。
それにしてもいい役者さん揃いでしたね。
鬼気迫る佐藤健さんの見事な演技。ほとんど笑わない利根(佐藤健さん)に「笑いなさい」っていうケイ(倍賞美津子さん)のシーンは、『あん』で「美味しいときは笑うんですよ!」って永瀬正敏さんをたしなめる樹木希林さんを彷彿とさせました。
また阿部寛さんの刑事役(笘篠誠一郎)とバディの林遣都さん(蓮田)は『新参者』の加賀恭一郎と松宮(溝端淳平さん)を思い出しましたが、加賀さんよりさらに癖が強い、でも真実を追いかける強い執念を感じました。阿部さん、佐藤さんとも目力では日本でも5本指に入りそうですね。
この二人の主役はもちろんのこと、女優陣、倍賞美津子さん、清原果耶さんは(新旧と言っては失礼ですが)日本の映画界に欠かせないベテランと新進女優の代表にすら感じます。あと大切な脇役としての瑛太さん、緒形直人さん、吉岡秀隆さん、出番は少ないですが安定の演技の渡辺真起子さん、宇野祥平さん、井之脇海さんも、あと最近出まくってる感のある岩松了さん、皆さんいい味出してました。それから忘れちゃいけない子供時代のカンちゃん(石井心咲さん)もいい表情、演技してましたね!今後が楽しみです。
数々の代表作を持つ佐藤健さん、阿部寛さんですがこの映画も社会派映画として後世に残る作品になるのではないでしょうか。色々考えさせられましたし泣けました!
この哀しみに
相応しい言葉が出てこないのでネタバレ注意でつらつらと書き留めておこうと思う。
切ない気分の中にドップリといる今も、この作品に出会えてとても良かったと想っています。登場人物たちは誰も悪くなく、だけどしてはいけない悪いことをしてしまう。震えが止められないような深い哀しみと抗えない怒りの発露の数々を目の当たりにして、やるせなく切なくなった。
ハッキリ言って強者、支配者の論理で構築し執行される日本の行政組織は常に何かしら問題を抱えている。僕らは勤勉に働き、様々な租税を素直に納付し、震災復興税も払っている。今回、焦点を当てた生活保護の問題点も中山七里さんの原作、そしてこの映画を観るまで自分には闇の中。心ある者が勇気を振り絞って作品を生み出し世に問うまで僕らは知る由もない。
今をときめく役者も顔を揃えたが、話が佳境に近づくにつれ全く気にならなくなり、迫真の演技にスクリーンの向こう側に引きずり込まれてしまった。脇を固める倍賞美津子さん、吉岡秀隆さん達も言葉に出来ない素晴らしい演技で、これだけの個性豊かな一流の役者を揃えながら、抑揚がありながら、悪目立ちなど破綻のない瀬々監督の演出の手腕に改めて敬服いたしました。
震災発生3ヶ月後から4年間かけ、被災した沿岸線の道を青森から茨城まで自転車で走破した日々に見聞きしたことが自分の中で木霊している。一生忘れることが出来ない、忘れてはならない光景と言葉が甦っては消えてゆく。
今夜は久しぶりに一献だな
(-_-)
この映画を観るということ
東日本大震災、その絶望下での生活保護の話、申し込む方も受理する方も、ある意味平等に、近い人を失ってたりあるいは失ってるかどうかもわかってなかったり
そんな極限状態の中で、良かれと作られた制度に埋もれて煽りを食う人もやっぱりいて、いかんともなく極端に無力に手詰まる、そしてその人たちにとってそれが一度限りの人生
本当に申し訳ない位に見えてない、餓死なんか無くなっちゃいないし、今後どっちかといえば、増えると考えるのが普通
イノベーションも再配分も、きっとどっちも要る、ウダウダいってる間に困窮極まる人もいる
呑気に映画観てこんな感想垂れてるのもどうかではある、気付きの多い作品、経済は回んなきゃいけないし、回り切らなきゃいけない
生活保護の実態
震災で大切な人を失ったり、生きているのが自分でいいかと感じたり、様々な痛みを抱えた
人々。おおきな災害のあとの復興は、生きるための支えが必要な弱者が取り残される。そしてそれだけでない生活保護の実態。日常の生活保護の実態に、とても近いとおもった。他国は現金給付が多いが、日本はケースワーカーとともに自立支援がセットの本来は誇るべき制度。なのに。あまりに人員が足らない。ケースワーカー1人辺り100にん以上の担当の自治体は、ざらにあり、丁寧に関わる余裕すらない。ノルマのように給付制限を、求められ、また威圧的な対象者でも、人員や組織の仕組みのために、一人で対処する危険な状況ににおかれる。結局それらは、当事者に皺寄せがいく。やれなかったらどうなるか、あんたたち分かってただろう!。当事者たちが声を挙げないと拾えない、専門職がリスクを予見しても、動けない環境におかれているのが生活保護の実態だ。
苦悩
1%の不埒者が何を指すのかはわからない。
不正受給をする者なのか、受給を阻む者なのか、それとも全く別の物なのか。
生活保護にまつわる話だった。
震災も絡めてあって、特殊と言えば特殊な状況ではあるけれど、語られるメッセージは、その状況には左右されないもので…非常に重く、先入観や固定観念に縛られてしまう対象者の多様な境遇に、対応の難しさを想像してしまう。
「セーフティネット」そのシステムがあるのは分かる。ただ、そのシステムの財源は湯水の如くは溢れてこない。だからこそ、厳格な取り決めがあるのだろうとは思うが、その厳格さ故に弾かれてしまう人もいる。
もしくは、行政に割振りがあって、これ以上は支給できないって事もあるのではと勘繰る。
善意だけで社会は成り立ちはしない。
いや、だとしても想像で断言するのは無礼極まりない事だ。困窮者に必死になって手を広げている人達をも殺してしまう事になりかねない。
作品は、そういう繊細なバランス感覚を必死に保ち続けてたような気がする。
たぶん間違いじゃない。
監督の絶叫なのか懇願なのか訴えなのかは分からんが、その意図に俳優陣はシンクロし心血を注いだかのような…台本を読むだけでは出てこない心情を垣間見たような気がする。俳優陣は皆様、最高の仕事だった。
「ふざけるんじゃねえ!」
泥水に顔半分浸かりながら吠える。
とあるシュチュエーションに向けられた台詞ではあるが、今となっては作品を代表する一言の様にも思える。
ケイさんが亡くなり三雲に詰め寄る利根。
それに放たれる緒方氏の一言とか。
リアリズムを纏うために行った膨大な準備が作品の隅々を埋め尽くしているようだった。
「死んでいい人なんかいない」
腑に落ちた台詞だった。
とあるメンタリストは、あの発言をする前にこの作品に出会えていたら、その発言に至らなかったかもしれない。
作品の最後に「原理原則を飛び越えて声を上げてほしい」とのメッセージがあった。
ソレが現場の総意ならばこんなに頼もしい事はない。今の原理原則を飛び越える事で広がる、新たな原理原則が生まれるのかもしれない。
ただの体面だけでない事を願いたい。
ラストに息子の死に際の話が出てきて、蛇足にしか思えなかったのだけど…「死んだら終わりじゃない」ってメッセージの一環とも捉えられはする。
必要以上に拘束された物言わぬ死体も、現状を訴えるに足るギミックだった。
慣習や世間体ってのは、ああも雁字搦めにされる要素なのだろう。
そういえばノーベル賞をとった日本人が日本に住みたくない理由に「誰もが他人の視線を気にしてる。自分がしたい事ではなく、した時にどう思われるかが行動する原理になってて生き辛い」みたいな事言ってたな。
映画館を出て新宿の街並みを歩き駅に向かう。
緊急事態宣言が解かれた人混みの喧騒は雑音のように耳障りで空虚で…ネオンがヤケに眩しかった。
過剰な供給。
資本主義と多数決の呪いに埋め尽くされているような…そんな錯覚を覚える。
良いんだけれど。。。
生活保護の制度の仕組みや問題点について考えさせられるお話。
それは良いんだけれど、
主人公が震災にあって妻と子供を亡くし遺体安置所で言葉を交わした少女が9年後の事件に絡み、もう一人の犯人と思われていた青年もまた主人公の子供が震災時に津波に沈むのを目撃していた。
物語の伏線回収としてはドラマチックではあるのだが、あまりにも偶然が過ぎて、ちょっと白けた気持ちになってしまった。
20代の女性が40~50歳の成人男性を拉致し監禁して餓死させるとか現実的に相当難しいし、リアリティは乏しい。
映画のフィクションの物語だから、そんなこと言っても仕方ないのだけど。
演者さんは、皆さん上手で素晴らしかったです。
全456件中、261~280件目を表示