レ・ミゼラブル

劇場公開日:

レ・ミゼラブル

解説

ビクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」で知られ、現在は犯罪多発地区の一部となっているパリ郊外のモンフェルメイユを舞台に、現代社会が抱えている闇をリアルに描いたドラマ。モンフェルメイユ出身で現在もその地に暮らすラジ・リの初長編監督作品で、2019年・第72回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞。第92回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートもされた。パリ郊外に位置するモンフェルメイユの警察署。地方出身のステファンが犯罪防止班に新しく加わることとなった。知的で自制心のあるステファンは、未成年に対して粗暴な言動をとる気性の荒いクリス、警官である自分の力を信じて疑わないグワダとともにパトロールを開始する。そんな中、ステファンたちは複数のグループが緊張関係にあることを察知するが、イッサという名の少年が引き起こした些細な出来事から、事態は取り返しのつかない大きな騒動へと発展してしまう。

2019年製作/104分/G/フランス
原題または英題:Les miserables
配給:東北新社、STAR CHANNEL MOVIES
劇場公開日:2020年2月28日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第92回 アカデミー賞(2020年)

ノミネート

国際長編映画賞  

第77回 ゴールデングローブ賞(2020年)

ノミネート

最優秀外国語映画賞  

第72回 カンヌ国際映画祭(2019年)

受賞

コンペティション部門
審査員賞 ラジ・リ

出品

コンペティション部門
出品作品 ラジ・リ
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映画レビュー

4.0Indie Cinema Armageddon

2020年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

興奮

A cop tale mystified by the community patrols' hunt for a lion that some kid stole. It's really hard to see where the movie is going, which is what makes it so fun. The Mali-born director sees French immigrant neighborhoods with a certain danger, an uprising brimming up among the youth, caught in a struggle similar to the refugee camps' in Children of Men. Does good triumph natural evil? Up to you.

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Dan Knighton

4.5ここにあるカオスはフランスだけの問題ではない

2020年2月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

フランスで社会問題になっている都市郊外のスラム化が、ヨーロッパ全土に、ひいては全世界に広がっていく。発展から取り残された低所得者用住宅、通称バンリューには、アフリカ移民の2世、3世はもちろん、麻薬ディーラー、イスラム教徒、ロマのサーカス団たちが、一触即発の状態でひしめき合っている。街を パトロールする警官たちはすでに正義のなんたるかを忘れ去り、差別や恐怖を通り越した荒廃が彼らの心を蝕んでいる。ある日。そこで発生した警官による無防備な移民少年への発砲事件が、遂に、積りに積もったフラストレーションに火を付ける時、そこにあるカオスは今の世界共通の問題であることに気づかされる。皮肉にも、文豪ヴィクトル・ユーゴーによる代表作の舞台になった同じ街で展開する物語は、実際にそこに住む監督、ラジ・リの実体験に基づいているとか。「レ・ミゼラブル(悲惨な人々)」と言うタイトルが、これほどまでリアルに響くとは驚きだが、監督の目は彼ら個々人ではもちろんなく、人々をそうしてしまった犯人、つまり、政治と社会に向けられている。

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清藤秀人

4.5社会派アクション映画の秀作

2024年6月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

先日観て衝撃を覚えたラジ・リ監督の「バティモン5 望まれざる者」。パリ郊外の移民労働者たちが暮らす地区における行政と住民との対立や、多数の移民を受け入れた社会を描いた同作でしたが、同じラジ・リ監督作品で、2020年に日本公開された本作「レ・ミゼラブル」も、コンセプト的には「バティモン5」と軌を一にするものでした。題名の「レ・ミゼラブル」は、本作の舞台となったモンフェルメイユ地区が、ヴィクトル・ユーゴーの小説『レ・ミゼラブル』に出て来るところから付けられたそうです。地理的には、パリ中心部から見て東側の郊外にある地区みたいですが、 「バティモン5」の舞台にしても本作の舞台モンフェルメイユにしても、パリにはこうした地区がそこそこ存在するようで、”花の都”のイメージと裏腹に、今やパリは”燃える都”の様相を呈しているようです。

両方の作品に共通して言えるのは、フランスの移民問題が、旧住民や地元行政と、新住民(移民)との単純な二項対立的な構図ではなく、行政側にも移民側にも様々な立場や考え方の人がいて、それぞれに利害対立があるということを的確に物語に盛り込んでいたことでした。「バティモン5」においては、移民系住民の中にも、副市長として権力側に立つ人から、行政サイドに従順で保護を受けている人、移民系住民の権利獲得のために立ち上がる女性(主人公)、さらには暴力に訴える主人公の友人に至るまで、様々な立場の人がいることが示されていました。(因みに主人公の女性・アビーが、登場人物中”自由”、”平等”、”博愛”というフランス革命の正の部分を最も体現していたのに対して、アビーの友人であるブラズが、文字通り暴力革命的なフランス革命の負の部分を体現していたのが非常に面白かったです。)

本作では、主人公の警察官3人が居て、それに対して移民系の市長グループ、地元のマフィア集団、地元のティーンエイジャー集団、さらには各地を転々するロマのサーカス団が、ある時は対立し、ある時は談合していました。警察官3人にしても、リーダーのクリスは白人で強硬派、移民系の黒人であるグワダは中間派、そして主人公というべきステファンは白人で良識派という感じで、「バティモン5」と同様に登場人物それぞれに明確な役割が与えられており、監督の問題意識が伝わって来た感じがしました。

「バティモン5」との比較で言うと、クライマックスに向かって事態がどんどん切迫し、緊張していく展開は共通していました。ただ本作はよりアクションシーンが多くかつ過激で、物語の内容はさておき、その点で血沸き肉躍る面白さがありました。特に暴れる主体がそれまで大人たちにいいように言いくるめられて抑圧されて来たティーンエイジャーたちであり、彼らの怒りが終盤になって爆発し、留まるところを知らない極限にまで行ってしまったことから、「おいおい大丈夫か」という驚きとともに、爽快感すらも覚えさせてくれました。

また、強硬派の白人警官・クリスが、どこかで見たような気がしましたが、なんと「バティモン5」でやはり強硬派の市長を演じていたアレクシス・マネンティでした。ラジ・リ監督作品の常連ということなのでしょうが、若い頃のプーチンに似た見た目が、実にそれっぽくて素晴らしいキャスティングだと感じました。

「バティモン5」を観た時も思いましたが、こうした問題は対岸の火事ではなく、日本においても既に起き始めている話であるだけに、観客に対する問題提起は重く受け止めるべきと思いつつ、印象的なアクションシーンで興奮させてくれた本作は、非常に意義深い作品だったと思います。

そんな訳で、本作の評価は★4.5とします。

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鶏

4.0フランスらしいウソのない映画だ!

2024年5月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

日本代表が初めて出場を果たした1998年のFIFAワールドカップで勝ったフランス代表は、監督・キャプテンの白人、マグレブ(地中海沿岸の旧フランス植民地)からの褐色の移民たち、アフリカ・サハラ砂漠以南の旧フランス植民地からの黒い人たちのトリコロール(三色旗)と言われた。何と言っても、中心はマグレブの英雄、ジダン。
2018年のワールドカップでフランス代表が再び勝ったときは、若手のFWエムバペが目立ったが、カメルーン系の父親の血を引いて肌の色が黒かった。フランスにもこうした変遷があり、この映画にも現れていた。
主人公のステファンは、この頃よくフランス映画で見かけるダミアン・ボナールが演じている白人警官。別れた妻と子が引っ越ししてきたのに合わせてシェルブールからパリ地域に来た。住んでいるのは、窓からパリの文化の一つの中心であるラ・ヴィレット公園のラ・ジェオードが見えるアパート。リアリティがある。
彼は新任早々、同僚のクリスとグワダと組んで、パリ近郊(バンリュー)モンフェルメイユの警備にあたる。この地は、もともとヴィクトル・ユーゴーのレ・ミゼラブルの舞台の一つ。今は移民の街で、中高層の低所得者用のアパートが立ち並び、治安はお世辞にもよいとは言えない。
始まりは、マグレブ系らしいイッサを中心にした若者たちの悪ふざけだったが、とんでもない事態に発展する。現在のモンフェルメイユの表の顔のアフリカンの市長とその取り巻き、実際に街を仕切っているケバブ・レストランのマネージャーであるサラー、情報屋、伝統の移動サーカスの担い手のロマ(ジプシー)まで出てくる。しかも彼らは、どの一人をとっても、よいことをすれば悪いこともする(鬼平犯科帳と全く同じ)。事件の狂言回しは、警官も利用しているSNSを通じて広まる情報とドローンで撮影された画像。マグレブもアフリカンも、基本的にはムスリム(イスラム教徒)か。
いったん、新入りステファンの活躍でことが収まったと思ったが、おっとどっこい、舞台には奥の幕が用意されていた。驚くのは、若者たちは徒党を組むと、警官どころか、地域の表の顔や、実質的支配者の言うことにも耳を貸さず、やりたい放題暴れる。それだけ追い込まれていて、将来に希望を抱いていないということか。この映画は、2008年に実際起きた事件を元にしているようだ。
初めて長編の監督を務めた自身モンフィルメイユの住人、マリ出身のラジ・リ監督は、解決の方向として、何とレ・ミゼラブルに出てくる言葉を提示する。
il n'y a ni mauvaises herbes,
ni mauvais hommes,
il n'y a que de mauvais cultivateurs.
この世には、生まれつきのならず者も、悪い人間もいない。育てる者が悪いだけだ「抄訳」
最後は、フランス文化の伝統と叡智の中に、救いを求めよということか。
ラジ・リの次回作が我々を待っている。緊張感に満ちた素晴らしい映画だった。

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詠み人知らず