町田くんの世界のレビュー・感想・評価
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分からない事ばかりだからこそ、町田くんの世界は素敵だ
石井裕也監督がよりによって少女漫画実写化を手掛ける。
が、原作もありふれた代物ではなく、今や日本映画界を代表する若き名匠に掛かれば、コミックの実写化も一風変わった魅力の好編に。
高校生の町田くん。
勉強もイマイチ、運動もダメ。ボウリングでは奇跡的な連続ガーター。
画に描いたようなのび太くんタイプの冴えないメガネ男子だが、唯一の取り柄が一つ。
人間愛に溢れ、誰にも優しいピュア過ぎるくん。
困ってる人が居ると助けずには居られず、滑稽な走り方で猪突猛進、一生懸命。遅いけど。
助けると、助けられた人には風が吹く。…いや、マジで。
町田くんにとっては、家族、クラスメイト、周り、皆、それどころか人類全員が“大切な人”。
聖人君子。“キリスト”なんてあだ名さえも。
愛し、愛され、愛すべき男の子だが、それはイコール、周囲からは“変わり者”。
そんな町田くんの世界が変わる出来事が…!
クラスメイトの猪原さん。
美人だが、クラスの誰とも話さない…と言うか、近寄るなオーラ全開。いつも不機嫌。
町田くんとは真逆の、人嫌いの女の子。
ある日、町田くんは猪原さんに親切にする。
いつもと同じく人に親切にしただけの筈なのに、不思議な感情が。
分からない。何なんだろう、コレ…?
町田くん、それはね、誰もが経験するアレなんだよ。特別なアレという感情。
人好きの男の子と人嫌いの女の子の恋。
…と単に言ってしまうとそんな設定だが、もうちょい一捻り。
次第に猪原さんは町田くんが気になり始める。
人嫌いだった女の子が人好きの男の子にアプローチし始めるが、相手はそれが“恋”とは知らず。
と言うか、そもそもが分からない。
“好き”ってのは分かる。家族が好き、人が好き。
でも、それとは違う“好き”。その“好き”って何…? “恋”って何…?
鈍感?…いえいえ、ピュア過ぎて分からないピュア男子の波乱いっぱいの初恋物語。
二人の初恋ストーリーが、笑えて、やきもきいじらしく、ほっこり微笑ましく愛らしい。
町田くんも町田くんで初めての感情に右往左往するが、猪原さんも猪原さんで町田くんへの恋に感情がハイ&ロー。
にしても、町田くん…。
猪原さんに言い寄る男子に協力。結果、猪原さんを怒らせ、悲しませてしまう。
その優しさから他の女子から好意も持たれ…。
時々KY。いや、いつもKYか。
もう何と言うか…、何て言ったらいいか分からない!
寅さん、この不器用な高校生二人に恋の指南して!
傑作コミック、人気監督、豪華キャストのメジャー話題作。
その主演を演じる二人は、売れ始めの若手注目株ではなく、オーディションで選ばれたそれこそまっさらでピュアな新人二人。
細田佳央太と関水渚。
本作の魅力は、この新人二人の魅力と言ってもいいだろう。
よくよく見るとイケメンだが、いい意味で平凡で素朴なメガネ男子を好演した細田くん。
そして、新川優愛似のキュートで美人な渚ちゃんに萌え~。(私は男なので、彼女には今後大注目!)
演技も悪くなく、魅力的で瑞々しくて、こりゃ二人共、年末の映画賞で新人賞を圧巻するだろう。
この二人を見守るかのように、周りが主役級の豪華キャスト。
二人に合わせて(?)、前田敦子、岩田剛典、高畑充希、太賀は高校生役。高畑に至っては、後輩!
見もしないでこういう作品を茶化す輩にはあーだこーだ言われそうだが、各々心得た役回り。
岩ちゃんはちとヤな奴、高畑は年下小悪魔に徹し、中でも前田敦子!
姉御口調で冷めたツッコミ役ながら、印象抜群! マジかヤベェなくらい、登場すると作品が面白くなる。
町田くんの両親役に松嶋菜々子と北村有起哉、ある雑誌記者役に池松壮亮、その妻に戸田恵梨香、編集長に佐藤浩市…。
サブキャラやサブエピソードなのに、一本の大作映画が撮れるくらい豪華過ぎでしょ!
このキャスティングも石井裕也監督だからこそだろう。
美しい映像で、瑞々しい初恋青春ストーリー。
切なかったり、もどかしかったり。
かと思うと、ドタバタなコメディ。
そしてラストは、意表を突くファンタジー…!?
確かにラストはちとありえねー!だけど、初恋や青春はこれくらいファンタジー!なのだ。
このユニークな作風/演出は飽きさせはしない。
サブエピソードもこの初恋物語を応援。
善意など無い悪意に満ちたこの世の中に不満や苛立ち募る雑誌記者。そんな彼が、町田くんと出会って…。
町田くんの優しさに触れた同級生たち。そんな彼らがラスト、町田くんの大ピンチに…。いいね、こういうの。
町田くんだけじゃなく、彼らの世界も変わっていく。
海外へ生物の撮影に行ってる町田パパの台詞が良かった。
「分からない事があるから、この世界は楽しい。素晴らしい」
そして最後は一生懸命、ファンタスティックながらハートフルに。
本当にピュアな初恋ストーリー!
善意や優しさ、恋や好きが、世界を変える。
周りも、自分自身も。
あたふたするだろう。分からない事ばかりだろう。
でも、新しく知ったその世界は…
とても素敵だ。
優しさの哲学
もしも僕が 優しい人だったら
困ってる人は 全員助ける
見て見ぬ振りで素通りして
惨めな気持ちになるのは、もう嫌だ
もしも僕が 神様だったなら
喜怒哀楽の 怒と哀を無くす
喜と楽だけで 笑って生きていて
それはきっと 贅沢な事じゃない
amazarashi /『たられば』より ~
町田くんをみていると、
自分のなかの良心が、揺らぐ…
揺らぐべき心がある事が
ヒトとして大切な事だと思いました。
それだけでも意義のある作品なのだと…
新人俳優と、若手実力派俳優を配したのは…
一生懸命、自分の道を進む者
それを見て自分をごまかすのをやめた者
他人に自分の存在意義を見出だす者
…の、対比を意識したことだと
わたしは解釈しました。
そしてその三様の、
どれが正しいなんて誰にもわからない
ぶつかってみなければ、見えてこないことがある
ヒトは他者を知らないからこそ、興味が湧いたり
また、勝手にいぶかしく思ったりもする…
“人”が生きてく“間”、他者と接触しぶつかってこそ
はじめて自分の存在を実感できる。
それが“人間”ってことなんですよね!
石井裕也 監督ならでは!の
さりげない技巧的な演出が光る!
あとはラストの「ファンタジー要素」を
許容できるか否かが
本作『町田くんの世界』の評価が別れる
大きなポイントなのでしょうが、わたしは…
ですが啓発モノとしては十二分!
ヒトにオススメしたくなる良い作品です♪
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もしも僕が 生まれ変われるなら
もう一度だけ 僕をやってみる
失敗も後悔もしないように
でも果たして それは僕なんだろうか…
町田くんのご両親が立派、特に父親
お釈迦さんが修行した過程にも、女を始め、さまざまな邪魔が入りました。───PHP研究所『心配するな、なんとかなる』
世の中にはそもそも「結婚」という形態に向いていない男というのが存在する。───セブン&アイ出版『女子の兵法』
「アンベードカルは二度結婚しましたよね」──山際素男氏───光文社『アンベードカルの生涯』
「あの方は、僧ではなかったし、サズゥでもなかった。世俗人として生き、苦悩する同胞を解放するためこの世に送られてきた “菩薩” だったのだよ。形にこだわることはないと思う。そういう姿で全身全霊をもって生き抜いた人なんだ。結婚していようといまいと、仏教は男も女もそういう人間を “菩薩” と呼んできたのじゃないのかな」───仏教指導者アーナンダ・デオ師(元盗賊首領)───光文社『アンベードカルの生涯』
私たちの信念は、自らの行動の正当化や、所属するグループの支持のために、事後に考え出された解釈であることが多い。───紀伊國屋書店『社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学』
空気を読み、的確な論評を加え、炎上の着地点を予測する "賢者" もいます。───祥伝社『「炎上」と「拡散」の考現学――なぜネット空間で情報は変容するのか』
手放すことと担ぐことが表裏一体の関係(中略) 趙州は逆に「担ぎなさい」といいます。(中略) 捨てられぬ荷なら担ぐいさぎよさ───サンガ『裸の坊様』
まとめますと、担ぐのなら、オキシトンという戦争や差別を簡単に引き起こすホルモンの作用に十分に気をつけて日々過ごして頂きたいと思います。動物(特にメス)を凶暴化させるホルモンがオキシトンというホルモン。愛(大事にする)=執着であり煩悩での一番大きいもの。大事にしているから守ろうとする、周りが見えなくなる、ということです。
ぶっ飛んだ世界観
めちゃめちゃ
まあまあ面白かった。
漫画から飛び出すってまさにこのこと
天網恢恢
初心でぎこちなく不器用な少年と少女の青春恋愛ファンタジードラマであって、決して際立って端正な主人公同士の整然としたラブストーリーではありません。
片や純真にして素朴で、何より純粋に周囲に利他を実践する不得要領な少年・町田くん、片や真の己を韜晦し、心が屈折して拗強な少女・猪原さん。まるで接点がないはずの二人が、歯痒くも焦れったいすれ違いを繰り返して収まる様を、実に巧妙に綴り上げています。
最も特徴的なのは、作品の中で演出の立ち位置が明らかに変わっていくことです。
前半導入部は町田くん視点、中盤は猪原さん視点、佳境に入る後半は、主役二人に絡んでいく諸々の登場人物其々の視点で目まぐるしく展開し、それら全てが一点に収束して熱気が最高潮に達しラストを迎えます。この構成は絶妙です。
もう一つの特徴は、最近の青春映画では珍しく寄せの画があまり無く、殆ど引きの画で且つトラッキングやパンの長回しが多く、そのために淡々とストーリーが進行する印象となって、緊張を強いられることは全くなく、観衆は客観的な視点で寛りとドラマの推移を観つめられたことです。
周りの難儀する人に只管善行を施す町田くん、その世界観は崇高ですが、本作では町田くんを決して神格化せず、あくまで市井の一人の高校生として見つめています。そのカメラの目は玲瓏でありながら仄暖かく、観衆も、聖人君子に看做しかねない町田くんを過度に絶賛することにもならず、カメラ同様にやや距離を置いて仄々と観ていたと思います。
新人男女の主人公二人に比して豪華過ぎる脇役陣の配役は、つい作品の焦点を茫漠とさせてしまいがちですが、作品としての構造は堅固に築かれています。
「情けは人の為ならず」、そして「天網恢恢疎にして漏らさず」。二人の間の込み入った入り繰りと押し引きのもどかしさや、一人の女生徒を狂言回しの語り部にするといった凝った構成も、ラストから振り返ると、これこそ本作のテーマではないかと思っています。
多分本作は現代のメルヘンを目指したのでしょう。やや美しすぎる嫌いもする観賞後感とも符合します。
尚、蛇足ながら、本作で非常に耳に障ったのが「ごめん」という台詞の、いわば間投詞のような使い方での多用です。最近の現代劇映画の殆ど全てに共通する特徴のように感じます。
対人関係に極度に敏感な現代若者気質を捉えているのかもしれませんが、ガラスのような壊れやすい繊細な神経を感じる一方、柔弱な線の細さを感じざるを得ません。その実相は、町田くんといえども不安と猜疑心の裏返しではないかと、ふと邪推してしまったしだいです。
漫画チック過ぎて、感情移入できない
タイトルなし
この世界観には浸れない面はあるが、これはオッサン向けのストーリーだと思った。
クライマックス以外は充分に楽しめた。
原作は少女マンガらしいが、原作の読者層が観てどう感じるかはわからない。
前田敦子の台詞が秀逸。
原作にあるのか、脚本が素晴らしいのか、
「やべぇな、青春」
猪原さんが町田くんに翻弄される姿が、新人関水渚の演じぶりも含めて、本当によく伝わってくる。
「好き」が爆発して「恋」になる過程が、町田くんのリアリティーのなさに相反して、実にリアル。
恋したくてもできなくなったオッサンが「恋って、そうなんだよ」と言いたくなる。
風船を掴んだ町田くんが浮かび上がるところは、大林宣彦的なファンタジーを感じさせたが、それがその ままクライマックスに移行するのは、冗長で安直ではなかったか。
達観した高校生に違和感を感じる人もいるだろうけど、意外と今の高校生は大人なのよ。
視野は狭いけど。
ホンマ、終盤ぶっ飛び。。。
前田敦子の存在感
良質のコメディ
良質のコメディは、笑えて、感動して、心温まる。
この映画はまさにそんな映画だ。
主役もわき役もチョイ役も、みなキャラがはっきりしていて、誰もかれも愛おしくなる。みな、誰かのことを「変な奴」と思いつつ、自分の灰汁の強さに気付かない。主役を囲む曲者たちは、私たちの目線になっている。だから共感できる。
浩市氏のみ唯一の悪役になってしまった。彼のそうなった背景や、町田君に触れて救われる場面があればさらに良かったと思うが贅沢か?
最後の場面も、もう少し現実に寄せてほしかった。そうでないとこの居心地のいい世界があり得ない話に寄ってしまいそうだから。
それでも、この映画には高評価を与えたいし、もう一度観てみようかな、とも思っている。
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