マイ・ブックショップ
劇場公開日 2019年3月9日
解説
イギリスの文学賞ブッカー賞を受賞したペネロピ・フィッツジェラルドの小説を「死ぬまでにしたい10のこと」「しあわせへのまわり道」のイザベル・コイシェ監督が映画化。1959年イギリスのある海岸地方の町。書店が1軒もないこの町でフローレンスは戦争で亡くなった夫との夢だった書店を開業しようとする。しかし、保守的なこの町では女性の開業はまだ一般的ではなく、フローレンスの行動は住民たちに冷ややかに迎えられる。40年以上も自宅に引きこもり、ただ本を読むだけの毎日を過ごしていた老紳士と出会ったフローレンスは、老紳士に支えられ、書店を軌道に乗せる。そんな中、彼女をよく思わない地元の有力者夫人が書店をつぶそうと画策していた。フローレンス役を「メリー・ポピンズ リターンズ」のエミリー・モーティマーが演じるほか、「しあわせへのまわり道」のパトリシア・クラークソン、「ラブ・アクチュアリー」のビル・ナイらが顔をそろえる。
2017年製作/112分/G/スペイン
原題:La libreria
配給:ココロヲ・動かす・映画社○
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2019年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
本屋のないイングランドの田舎町に、小さな本屋を作った女性の話。本屋がなければ人々に読書の習慣はない。本屋が誕生することによって、人々がどう変わるのか。文化施設などの場所が持つ力について改めて考えさせてくれる映画だ。
ナバコフの「ロリータ」を売るのにふさわしい本なのかを悩むシーンがある。本好きだが孤独な老紳士に助言を求めて、センセーショナルだがら本を置くことにするわけだが、なんでも自主規制してしまう昨今の風潮に異を唱えるかのようなシーンだ。
そしてレイ・ブラッドベリの「華氏451」も登場するのだが、その意図は明らかであろう。あらゆる知はできるだけ開かれているべきだと、映画は静かに主張している。
映画も本も、特定の主張によって制限されるべきではない。確かに創作物には社会を変えてしまう力があり、それは時には悪い方向に働くこともあるが、制限してしまえば社会を変える力が衰えるばかりだ。静かでしっとりとしているが、芯は非常に強い作品だ。
2019年4月10日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
戦争未亡人だが健気に店を開こうと海辺の町で穏やかに奮闘するフローレンス、彼女が夢に向かって自由に生きるのが気に入らず邪魔する保守的な町の実力者ガマート夫人、一方で屋敷に引きこもりながらもフローレンスを応援する本好き老紳士、この3人を中心に物語は進む。俳優3人それぞれによかったが、ビル・ナイの渋さと滲み出るおかしみが格別。後半でがマート夫人と対面するスリリングなシークエンスはまさに演技合戦の醍醐味。全体を俯瞰すると暗い話なのだが、彼と、本屋を手伝う利発な少女、2人の存在が希望を感じさせる。知性と自由な精神を封殺しようとする反知性主義との戦いは、たとえ敗れてもその志は継がれることを示唆するから―というのは大げさに過ぎるだろうか。
冒頭が3人のいずれでもなく少女の描写から始まるのも、振り返る視点のナレーターも、意表を突くラストも、なかなかに巧妙な仕掛けで感じ入った。
2021年3月29日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
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スペイン、イギリス、ドイツ合作
映像や映画の雰囲気がイギリス映画っぽいと思った
(原作や舞台はイギリスですし)監督はスペイン人の女性なんですね
どことなく清潔感漂う、品の良い作風は原作、脚本家も女性である事
からくるのかもしれません
主人公フローレンスは特に魅力的でもなく特別本好きにも見えず
書店経営に対する熱意のようなものもあまり感じられなかった
そのせいか、ラストの、この映画で伝えたかったことは「勇気」だと
いうナレーションも心に響かず
そのナレーションは、書店でアルバイトするこまっしゃくれた
知的な少女クリスティーンの言葉
この子役は非常に良かった
自分の役どころをよく理解していたように思える
地で、演技っぽくなく振舞っていただけかもしれませんが
「やられっぱなし」の書店側の登場人物たちの中で
それなりに効果のある抵抗らしい事をしたのは
事の是非はともかくクリスティーンだけだったように思える
そういう意味では確かにあれ(書店を「ガマート夫人(権力)の
思いのままにさせない為に」燃やすこと)は
「勇気」と言えなくはないかも
ひきこもりの読書家の老人ブランデッシュも勇気を振り絞って
ガマート夫人に抗議に行ったのかもしれないが、
行く前から結果は見えていたので「やられ役」のようにしか
思えない(死ぬとまでは思わなかったけど)
フローレンスを招待しての「お茶の時間」はイギリスらしく、
でも微妙な空気に、ハラハラしながら見ました
(フローレンスにとっては歳の差を別にしても、
恋愛対象にはならないだろうと思えて)
彼がフローレンスの書店経営のアドバイス役で
興味を持ったのが、ブラッドベリの「華氏451度」で、
すっかりファンになってしまったのが面白かった
文学小説好きな人ってSFを軽視しがちですからね
ナボコフの「ロリータ」は、途中までしか読んでいないけれど
エキセントリックな話で物議を醸したという事なので
(日本で使われる「ロリータ」という言葉とは随分趣が違うようです)
書店経営が困難になるきっかけとして、相応しいなと思った
しかし、一書店でいきなり250部も注文するのは現実的ではないと思う・・・
女性監督らしいキャスティングと思ったのが、ガマート夫人
恐らく男性脚本・監督だったらわかりやすい高慢ちきで嫌みな女に
したであろうガマート夫人を、見た目も立ち居振る舞いも品の良い、
高貴な印象の老女にした
そして、白い顔+きりっと結ばれた薄い唇に鮮やかに引かれた、
異様にはっきりと、濃い口紅の色
これが、じわじわと滲み出る嫌な(権力の)圧力や
驕りのようなものを言外に匂わせていて効果的
この作品の中で印象的だった言葉
「人間は滅ぼす側と滅ぼされる側に分かれている」
私は「滅ぼす側」は、自身が滅ぼされる事に怯えながら生きなければ
ならないし、「滅ぼされる側」になる事も多いと思う
ラストで書店を「抵抗」の為に燃やし(炎上する書店=クリスティーンの
権力へ、されるがままのフローレンス達への怒り)
本好きではないと言いながら、長じて書店を開くクリスティーンにとっての
「マイ・ブックショップ」は「抵抗」と「勇気」の象徴なのかもしれない
2021年1月9日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル
1959年
イギリスの海辺の小さな町
この町には本屋がなかった
フローレンスは古い家屋を買い取り
夢であった本屋を開くが
妬み嫉み…裏切りにより奪われる
そんななかでも
本好きの孤高の紳士
ブランディッシュはよき理解者であり
アルバイトの少女クリスティーンは
強い味方であった
.
その時代の名作も映画の中に出てきます
本が禁制品となった未来が舞台の小説
📕「華氏451度 ('53) RayBradbury著」
ブランディッシュに渡すはずだった…
📕「たんぽぽのお酒 ('57) 同著」
発売後物議を醸した
📕「ロリータ ('55) VladimirNabokov著」
.
「人は本を読んでいる時
物語の中に住む
本という家のなかで暮らしている」
😍
本も映画も
その世界に入りこむ一時が好き
登場人物に自分を投影できるなら尚いい
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