凪待ちのレビュー・感想・評価
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どん底から這い上がる
どうしようもないクソ野朗ですが、
香取慎吾の演技が素晴らしく、ダメなんだけど憎めなくて面倒を見てやりたくなる。
主人公を取り巻く環境は日本の都心部以外の場所ではよくある環境だと思いました。
だからこそ再び立ち上がる希望が持てる。
降りかかる事件は普通では無いですが。
大丈夫。まだやれる
差し出されたその手を絶対に離しちゃいけないよって
いうのをことごとく裏切る主人公。
でも居るんですよ、こういうダメな人。
自分の身近に居たからこそ余計に感情移入しちゃいました。
震災も重なり、涙腺が緩む場面も何度かありました。
撮影も演技も全てが良かった。
音楽のセンスが良くない気はしましたが。
印刷工場でカッとなる場面とか。
本当に素晴らしい映画でした。
白石和彌作品としては非凡
あっという間にエンディングまで
白石和彌=暴力という先入観を持って観たが心に沁みる良い映画だった。
まず主演の香取慎吾の泣き顔が圧巻!
お茶の間のアイドルという前振りが効いていて「これがあの慎吾ちゃん!?」というギャップにやられてどんどん引き込まれていく。
周りの芸達者な俳優さんの中にいても浮くことなく「ああ本当に泣いているな」と説得力があった。
終盤、大きな体を丸めて泣きじゃくる主人公の演出が良かった。
無力感が伝わって逆に小さく見える。
大袈裟に泣き叫ぶわけでなくシラけない。
恋人の父親役の吉澤健は土地の人では?と思えるほど溶け込んでいて助演男優賞にノミネートされて欲しいと思った。
エンドロールが始まっても席を立ってはいけない。
凪に見えても傷を内包しているんだというメッセージを受け取った。
関東のテレビでスルーは惜しい
「喪失と再生」を見事に表現できた作品
白石監督はこの映画のテーマを「震災」を絡めた「喪失と再生」だと言っていたが、納得のいく映画が出来たのではないか。一緒に見た友人は「自分ひとりでも立ち直れる」と言ったけど、人はそんなに強い生き物ではないから、「人生に目標がある人」意外は「守るべき人、守ってくれる人」がいないと生きる為の情熱を見出し辛い。人生の歯車が回りかけた時に突然「一番大事な人」を失うと尚更だ。
話にリアリティーをもたらしたのは、白石監督の容赦ない演出とそれを演りきった香取慎吾の演技力だ。香取さん程の役者になると、あそこまでさせる事は普通はできないだろう。それを的を得た演技で「堕ちる男」を演じる事で見る者を引き込んでいく。堕ちても尚、純粋さを失わない「郁男」があるきっかけを見出すのだが、それは劇場で確認していただきたい。「再生」の方法は人それぞれだと思うが、「居場所」を作ってあげる事、それが大事なのだとこの映画は訴えているように思う。
本当にヤバい奴は被害者なのでは?
これだけのクズ男がなぜ愛されるのか全く伝わってこなかった。情はわかるが何年も一緒に辛抱強く愛し続けられる程の男だろうか。
郁男には平凡な、一般人の誰もが持つレベルの優しさこそあるが、人格的にも人間的にも魅力がない。
従って強いて理由付けを行うと元国民的アイドルグループ並みのルックスを持っているからというメタ的な答えしか見つからない。
次に亜弓は絞殺されたとあるが、そこに至るまでの犯人の憎しみが描かれておらず迷宮入りである。ヘアサロンを開店した際に祝い花を持って来ていたが、亜弓はほとんど取り合わずあしらっていた。過去に気を持たせるような事をして金を出させたのではないか。今はもう違うという意思表示だったのではないか。
元夫はDV男と称されていたが新妻には優しく出産時には感動に涙し亜弓サイドで認識されている悪い男という演出は一切なかった。口論時の台詞にもあった通り、亜弓固有の問題があったのではないか。
また亜弓の子供に対する一方的な決めつけや感情的な行動にも問題を感じたのは視聴者の共通認識だろう。
最後に、犯人はパナマのサンブラス諸島について言及するが、この島は亜弓と郁男の色恋の象徴だった。郁男はその島の名前を忘れていたが犯人は「俺はちゃんと覚えている。お前よりももっと深い関係を持っていた」と言わんばかりの態度だった。
この映画のテーマは“喪失と再生”だが、津波で亡くなった人達がそうであるように失ったものは絶対に元に戻らない。
では再生とは何か。この映画から希望が見えるようなポジティブなものは感じ取れただろうか。あれだけ反省と後悔に涙したにも関わらず、結局本質は変わらずに依存症を“再発”するリアリティの方がしっくりくる。
後味の悪い映画だ。
ろくでなしの主人公でも感情移入出来てしまうのは
絆、裏切り、嫉妬、再生、生死、小さなコミュニティーでありながら人間の様々な業が何層にも折り重なり描かれる。
静かな映画かと思っていたが、テンポよく物語が展開され、飽きさせない。
宣伝でも使われている通り、ある意味主人公はどうしようもないろくでなしである。しかし、仕事は出来、言葉遣いは丁寧であり、そこまで悪い人間ではなさそうだと見ていれば早々に感じる。
ただギャンブルへの依存と、「キレる」という大きな問題が主人公(郁男)を転落させていく。
カメラの傾きや揺れが特徴的だが、これは郁男の心情に重なり、観客が郁男に共感するのに一役買っている。特に病院のシーンでの「揺れ」に切なさを感じた。
そして主人公を見守る(内縁だが)義理の父の人生と主人公が重なる。
あらゆる場面でこの義理の父が主人公を見る目が優しいのはそのためであろう。
とにかくキレた時の香取慎吾の演技はあの体格が持つ迫力が存分に生かされ、釘づけにされる。香取以外の役者も皆芸達者なため、どっぷりと作品の世界に浸れる。
作品、役者共に何らかの映画賞に絡んでくる作品ではないか。
さりげなく石巻の現状が織り交ぜられ、郁男が駅に向かう場面では震災後に作られたあの巨大な防波堤沿いを歩き続けるシーンがある。
また、エンドロールには被災地に対するの監督の思いが込められていると思う。
白石監督と香取慎吾のリンクが
心に残る
白石和彌監督のR12指定…と言うことで、少し構えての鑑賞でしたが、命や再生を描いた秀作でした。
主演の香取慎吾さんのイメージは明るいキャラクターを演じる感じでしたが、凪待ちの郁男は、正義感も持った優しい男だが、ギャンブル依存から逃れられず、そんな自分を許せない葛藤の中落ちぶれていく男を演じていました。彼の苦悩や憤り、やるせなさが画面から伝わってきて、思わず叱咤、激励したくなるようなそんな気持ちにさせてくれました。
それ故に郁男に関わる周囲の人々が、彼に差しのべる手にリアリティーが増してきます。
東日本大震災の被害を受けて傷ついた周囲の人々の傷、傷付いた故の優しい愛を描いていました。西田尚美さん演じる亜弓の内縁の妻的存在が自然で、娘美波役恒松祐里さんのお父さんでも無いけど「郁男」と呼んで慕う感じは、3人の家族としての数年を自然に感じれたし、凄く自然で良かったです。郁男とは義父関係になる吉澤健さんの芝居で最後に郁男に見せる優しさが自然でなんとも良かったです。
亜弓を殺害した人物の捜査に当たって、郁男が一段と傷ついて、ギャンブル依存に拍車が掛かっていくのですが、そこで手を差しのべるリリー・フランキーさんの考えていることが今一読めないような笑顔と自然な方言。
本当にこの方、放送作家さんですけど、凄い役者さんだなぁ~って思いました。
とにかく、主演を囲む役者さんも素晴らしい。
最後に亜弓(現在美波)の部屋から眺められる海の風景から海中にパーンし、エンドロールは震災で流されたピアノなど家財道具を写し出す所に、石巻の再生を見せてくれるような気持ちになりました。
上映館が少な目で、関東ではテレビでの宣伝は見掛けないですが、見応えのある作品なので、また別角度から観てみたいですわ
エンディングに込められた想い
素晴らしい作品。
とにかく沢山の人に観て欲しい。
作品のテーマである
誰が殺したか?ということよりも、
人間の弱さ、脆さ、変わることの難しさと
どんな人間も再生できるという光を
僅かだか感じられる。
人間臭さが溢れる作品です。
香取慎吾が本当に素晴らしい。
彼が演じた郁男のどうしようもなさが本当に堪らなかった。
彼のこれからの幸せと彼を支えてくれた人たちの幸せを願っている自分がいました。
そしてエンディングは最後まで観てほしい。
誰かに薦めたくなる素晴らしい映画
舞台が石巻。そこの人間ドラマの中に、家族、血の繋がり、人との繋がり、震災、病期、絆、仕事、暴力、博打、絶望、光、色んなものが繋がって、最後はエンドロールにまで想いを馳せられる。
アラジンやキングダムのような、ザッツエンターテインメントな映画じゃないと嫌な方は観なくて良いが、日本人としてある意味、震災後を描いたこの作品は、個人的には多くの方に観て欲しいと、心から思う。
涙が溢れました
人を裏切り、人を傷つけ、人に裏切られ、人に傷つけられ…ギャンブル依存、自己肯定感もなく自暴自棄になった男・郁男。
私自身、今まで出会ったことがない、どうしようもない、関わりたくない男…
…なのに何だろう…何故だろう…見ていて苦しくて辛くて、もうやめよ、自分を大事にして!って声をかけたいほど入り込んでしまった。
人の無条件の思いやりと優しさ…包み込んでくれるものの大きさと郁男の表情の変化にとにかく涙が溢れました。
俳優・香取慎吾、表情・眼差し・しぐさ・大きな体の圧倒される動き…彼のイメージとはかけ離れていてゾクゾクしました。凄いです。
俳優・香取慎吾とエンドロールの石巻の海…1人でも多くの人に観てほしいです。
ポスターのコピーはミスリードだが...しかし。
これまで白石監督が作品を全て観てきた若松フリークとして、今作、「主演・香取慎吾」と聞いたときは、正直、不安しかなかった。あーついに、白石和彌も、人寄せをしなければならなくなったのか...と。
しかし、期待せずに観た今作は、間違いなく白石和彌の代表作となるであろう作品だった。かえって、裏切られたような気持ちさえ覚える。
この作品を語る上ではもう「香取慎吾」という名詞は使いたくないと思えるほど、彼は「木野本郁男」だったし、人たらしでろくでなしだった。
彼の周りに「血縁者」は1人も登場しない。それでもなぜか構わずにいられない人柄は、やはり「香取慎吾」が演じているからこそなのだろうか。
祭りのシーンは、スタッフに動きを見せてもらっただけの一発撮りだったそうだし、直前まで本当に隣の民家で楽しく飲んで、顔が赤いまま撮った夜のシーンもあるようだ。
監督がインタビューで、もろもろを瞬時に察知する能力が卓越していて、こんな人を仕事をしたのは初めてのことだったと話している。それこそが、SMAPとして30年間トップを走り続けてきた中で会得してきたものなのだろう。
若松組、白石組の中に、すっと溶け込んでいる香取に驚かされたのも事実。
あの体躯、背中から醸し出される郁男の「感触」が、じっとりと伝わってくる。
初日ということもあったのか、スクリーンは思いのほか老若男女で埋まっていたのだが、終演後、観客の誰もが無言のまま退場していく...そんな光景を初めて体験した。
誰もが郁男の中に、震災を、石巻を、そして自分の中の「何か」を投影させていたのだろう。
残念なのは、ポスターの香取慎吾の表情や、サスペンスを予想させるようなコピー。
それに惑わされることなく、ぜひ映画館で見て欲しい。「喪失と再生」、そのテーマが身に染みる良作だと言える。
ミスリードのはずのコピーは、エンドロールで引き立つ。映像をスクリーンで確認して欲しい。
なによりこの秀作が、関東近県でほとんど宣伝されていない事実に不条理を感じる。
俳優 香取慎吾
観終わってからもジワジワ来ています
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