劇場公開日 2019年6月28日

「心に残る」凪待ち としまなさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0心に残る

2019年6月30日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

白石和彌監督のR12指定…と言うことで、少し構えての鑑賞でしたが、命や再生を描いた秀作でした。
主演の香取慎吾さんのイメージは明るいキャラクターを演じる感じでしたが、凪待ちの郁男は、正義感も持った優しい男だが、ギャンブル依存から逃れられず、そんな自分を許せない葛藤の中落ちぶれていく男を演じていました。彼の苦悩や憤り、やるせなさが画面から伝わってきて、思わず叱咤、激励したくなるようなそんな気持ちにさせてくれました。
それ故に郁男に関わる周囲の人々が、彼に差しのべる手にリアリティーが増してきます。
東日本大震災の被害を受けて傷ついた周囲の人々の傷、傷付いた故の優しい愛を描いていました。西田尚美さん演じる亜弓の内縁の妻的存在が自然で、娘美波役恒松祐里さんのお父さんでも無いけど「郁男」と呼んで慕う感じは、3人の家族としての数年を自然に感じれたし、凄く自然で良かったです。郁男とは義父関係になる吉澤健さんの芝居で最後に郁男に見せる優しさが自然でなんとも良かったです。
亜弓を殺害した人物の捜査に当たって、郁男が一段と傷ついて、ギャンブル依存に拍車が掛かっていくのですが、そこで手を差しのべるリリー・フランキーさんの考えていることが今一読めないような笑顔と自然な方言。
本当にこの方、放送作家さんですけど、凄い役者さんだなぁ~って思いました。
とにかく、主演を囲む役者さんも素晴らしい。
最後に亜弓(現在美波)の部屋から眺められる海の風景から海中にパーンし、エンドロールは震災で流されたピアノなど家財道具を写し出す所に、石巻の再生を見せてくれるような気持ちになりました。

上映館が少な目で、関東ではテレビでの宣伝は見掛けないですが、見応えのある作品なので、また別角度から観てみたいですわ

としまな