凪待ち
劇場公開日:2019年6月28日
解説
「孤狼の血」の白石和彌監督が、香取慎吾を主演に迎えて描くヒューマンサスペンス。「クライマーズ・ハイ」の加藤正人が脚本を手がけ、人生につまずき落ちぶれた男の喪失と再生を描く。無為な毎日を送っていた木野本郁男は、ギャンブルから足を洗い、恋人・亜弓と彼女の娘・美波とともに亜弓の故郷である石巻に移り住むことに。亜弓の父・勝美は末期がんに冒されながらも漁師を続けており、近所に住む小野寺が世話を焼いていた。人懐っこい小野寺に誘われて飲みに出かけた郁男は、泥酔している中学教師・村上と出会う。彼は亜弓の元夫で、美波の父親だった。ある日、美波は亜弓と衝突して家を飛び出す。亜弓は夜になっても帰って来ない美波を心配してパニックに陥り、激しく罵られた郁男は彼女を車から降ろしてひとりで捜すよう突き放す。その夜遅く、亜弓は遺体となって発見され……。「くちびるに歌を」の恒松祐里が美波、「ナビィの恋」の西田尚美が亜弓、「万引き家族」のリリー・フランキーが小野寺を演じる。
2019年製作/124分/PG12/日本
配給:キノフィルムズ
スタッフ・キャスト
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2019年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
とにかく香取慎吾をこの役に起用し、彼の隠された魅力を引き出したことがこの映画最大の功績であり、魅力の核だろう。ギャンブル依存症で良いところは一つもないような男だが、見捨てることのできない人としての魅力を放っている。こういう駄目人間って確かにいるよなというリアリティを強く感じさせる、大変説得力ある芝居をしている。
人生をやり直すために引っ越した石巻で、悲劇に巻き込まれ、同調圧力の強い田舎町に馴染めず、殺人犯だと噂される。強くありたいと願うのに、強くなれない、環境のせいにしていつでも言い訳を考えてしまっている。震災から復興のためにがんばっている東北の町と人生に絶望した男の喪失感が重なるようで対比的だ。失われたものは帰ってこない、それでも前を向く町と、喪失感から逃れられず前を向くことができない男。映画はほんの少し、男の再生の可能性を見せて終わる。人はだれもそんな強くない、それを認めることが強くなる第一歩なんだと思う。
2019年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
暴力やエロスでエッジを利かせた映画を撮り続けてきた白石和彌監督にしては、かなり抑えた演出が印象的。去年、今年と劇場公開作を3本ずつ作っている超売れっ子監督だが、原作ありきではない映画で本当にやりたいことを追求した結果のように思える。
本作の香取慎吾、「半世界」の稲垣吾郎もそうだが、元SMAPの彼らはいわゆるガテン系のキャラクターに扮することで、セルフイメージを壊して演技の幅を広げようとしている。白石監督と香取それぞれの新境地を志向して挑戦する姿勢が合致し、意欲的な社会派ドラマと相成った。
リリーフランキーと白石映画とくればもちろん「凶悪」での怪演が思い出されるが、本作での起用は果たして正解だったのか。観客にある種の先入観を与えてしまうし、人物の内面描写も物足りない。
「ろくでなし」という言葉の意味を、しみじみと考えさせられた。
2023年5月24日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
石巻の海は穏やかでまるで湖面のように波一つ立ってない。その海の底には震災の記憶が今も残る。ピアノやタンス、自転車、様々な生活用品が静かに眠っている。人々の暮らしが確かにそこにはあった。
津波がすべてを駄目にしてしまったという郁男の言葉に、亜弓の父勝美は海が新しく生まれ変わったと答える。
震災で人々は家族を失い仕事も失い、生活のすべてが失われた。しかし人々は新たな人生を歩もうとしている。どんなにどん底に落ちても人は生きている限り何度でも生まれ変われる。
主人公の郁男は亜弓の内縁の夫ながら仕事は安定せずギャンブルに明け暮れていた。心機一転彼女の故郷でやり直すつもりがまたもギャンブルの誘惑に負けてしまう。
そんな時、けんか別れした亜弓が殺害され、その罪悪感からまた周囲のあらぬ偏見から、ストレスによりさらにギャンブルにのめりこんでしまう。
多額の借金を重ね、もはや自分ではギャンブルを止められずどこまでも堕ちてゆく郁男。
そんな彼を勝美や美波たちは見捨てなかった。津波で妻を失った勝美は妻のおかげでかつてチンピラから足を洗い真人間になれたという。どんなにどん底に落ちようとも人は生きている限り生まれ変わることができる。小さな家族、共に手を取り合って生きてゆこうと。
震災で全てを失った人々が互いに手を取り合い、新たに生まれ変わろうとしているように。
本作は殺人事件が起きるのでミステリーサスペンスとして宣伝されていたが、震災の記憶が残る石巻を舞台にした純粋な人間ドラマだった、それもかなり重厚な。
どこまでも堕ちてゆく郁男を演じた香取慎吾の熱演っぷり、存在感が素晴らしかった。
2023年4月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ギャンブル依存症のどうしようもない男の話。香取慎吾があまりにもハマり役すぎて。。どん底でもがき苦しむ様はこちらまで苦しくなってしまうほど。
飽きさせないストーリー展開であっという間だった。終始暗めの展開だけどラストにはほんの少し希望が見えてよかった。