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映画「The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ」 The Beguiled ビガイルド 欲望のめざめ
劇場公開日 2018年2月23日
解説
「ロスト・イン・トランスレーション」のソフィア・コッポラが、「めぐりあう時間たち」のニコール・キッドマン、「ネオン・デーモン」のエル・ファニング、「マリー・アントワネット」のキルスティン・ダンスト、「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」のコリン・ファレルら豪華キャスト共演で撮りあげた長編監督第6作。1971年のクリント・イーストウッド主演作「白い肌の異常な夜」の原作であるトーマス・カリナンの小説「The Beguiled」を女性視点で映画化し、第70回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞した。南北戦争期のアメリカ南部。世間から隔絶された女子寄宿学園で暮らす7人の女たちの前に、怪我を負った北軍兵士の男が現われる。女性に対し紳士的で美しいその兵士を介抱するうちに、全員が彼に心を奪われていく。やがて情欲と危険な嫉妬に支配されるようになった女たちは、ある決断を下す。
2017年製作/93分/PG12/アメリカ
原題:The Beguiled
配給:アスミック・エース、STAR CHANNEL MOVIES
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2018年2月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
かつてドン・シーゲル監督&クリント・イーストウッド主演で映画化された小説の再映画化であるが、視点を男性から女声側へと移して語り口を変更しているので、別作品のように楽しめる。
当初は白く、無垢なイメージを持たせる衣装しか着ていない女性たちは、一人の男性が転がり込んだことによって、欲望を花開かせ、色鮮やかに個性が生まれていく。夜の会食のシーンでの、それぞれの女性が着る、色とりどりの衣装は象徴的だ。
閉鎖的空間での女性たちの物語という点で、デビュー作の『ヴァージン・スーサイズ』に近い感触もあるが、スリラーであるという点で、彼女の今までの作品とは一線を画している。しかし、宿る感性はやはりソフィアならではで、別ジャンルでもきっちり自分の個性を出せるあたり、優れた監督だなと思う。
ニコール・キッドマンの抑えた演技が良い。彼女とソフィアが相性がいいなと思った。
2018年2月25日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
同じく閉ざされた門の内側で生きる王妃の日常を屈託なく描いた代表作「マリー・アントワネット」とは似て非なるソフィア・コッポラ作品。決壊寸前の閉塞感が、傷つき、匿われた兵士が放つ雄の匂いをビリビリと感じ取り、小さな裂け目からやがて大量の欲望が放出されていく様は、女性独特の観察眼が鋭い刃となり、時にえげつないほど痛烈な密室エロチックサスペンスとして観客の前に突き付けられる。同時にこれは、南北戦争の影で行われた女たちによる犯罪ドラマでもある。遠く大砲の音を聞きながら、女性寄宿学校の中でも同じような行為が成されていく皮肉と怖さは、やはり、ガーリーカルチャーのカリスマと言われてきた監督ソフィア・コッポラにとって分岐点になる1作だと言わざるを得ない。
2018年2月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
女性集団の中で織り成されていく空気。その一点で見るといつものソフィア・コッポラ作品と全く変わらない。ただ、この空気が永遠に続くのかと思いきや、今回はかなり大きなドラマが巻き起こる。ジャンル的にもゴシック・スリラーに分類される本作だが、これほど後半の仕掛けがうまく炸裂するのも、冒頭から緻密な映像美を積み重ねていくからなのだろう。
そこに投入されるコリン・ファレルは、誰からも人好きのする純朴さを持った男だ。女性たちもまた彼を親身に看護しようとする。その良心と良心の間に、様々な奇妙な心象模様が生まれていく過程がスリリング。そして、ハッとするような神々しい光が差し込む寄宿舎は、いつしか牢獄のような閉所感へと変化を遂げる。これにはヨーロッパビスタ・サイズがもたらす心理作用がかなり効いている。
隅から隅までソフィアの創造性が発揮された本作は、これまで以上に噛み応えとパンチの強さを秘めた一作なのだ。
2021年11月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
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戦争と日常が、寄宿学園の門によって分けられていたのに、負傷した兵士が門の中に運ばれることによって、境界が曖昧になってしまい、寄宿学園のなかにもまた戦争状態が運び込まれるおはなし、
日常生活には秩序があって、それが守られていれば、その生活は保たれるけれど、戦争にはそれが全くない。
女たちは美しくて紳士的な負傷兵に興味を持って、取り合う。女たちによる男を巡る戦争。
その結果、男は階段から落ちてしまって脚を失うのだけれど、逆上した男は女たちに憎しみを持つようになる。女たちと男の戦争。
結局彼は女たちが毒キノコを食べさせて殺されてしまう。
寄宿学園のなかの戦争が終わった証として、彼は門の外に出されてしまう。運び込まれてしまった兵士が、戦争が、また外に出される。とても象徴的な場面。
彼女たちが共謀して、彼を殺すことができたのは、戦争状態で、秩序がなくなっている状態だったからこそ。敬虔なキリスト教主義者たちが日常において、教えに反くことである殺人を犯すことは考えられない。戦争は、秩序も人間の信じている宗教もすべて意味のないものにしてしまう、
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