沈黙 サイレンス

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劇場公開日:2017年1月21日

沈黙 サイレンス

解説・あらすじ

遠藤周作の小説「沈黙」を、「ディパーテッド」「タクシードライバー」の巨匠マーティン・スコセッシが映画化したヒューマンドラマ。キリシタンの弾圧が行われていた江戸初期の日本に渡ってきたポルトガル人宣教師の目を通し、人間にとって大切なものか、人間の弱さとは何かを描き出した。17世紀、キリスト教が禁じられた日本で棄教したとされる師の真相を確かめるため、日本を目指す若き宣教師のロドリゴとガルペ。2人は旅の途上のマカオで出会ったキチジローという日本人を案内役に、やがて長崎へとたどり着き、厳しい弾圧を受けながら自らの信仰心と向き合っていく。スコセッシが1988年に原作を読んで以来、28年をかけて映画化にこぎつけた念願の企画で、主人公ロドリゴ役を「アメイジング・スパイダーマン」のアンドリュー・ガーフィールドが演じた。そのほか「シンドラーのリスト」のリーアム・ニーソン、「スター・ウォーズ フォースの覚醒」のアダム・ドライバーらが共演。キチジロー役の窪塚洋介をはじめ、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシといった日本人キャストが出演する。

2016年製作/162分/PG12/アメリカ
原題または英題:Silence
配給:KADOKAWA
劇場公開日:2017年1月21日

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映画レビュー

4.0 宗教とはを考えるハイカロリー作品

2025年11月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

原作は大学時代に読んだ。その時も宗教ってなんだ、命をかける価値はあるのかと思った。
そして今回遅ればせながら、マーティン・スコセッシ監督が実写化した今作を見て、より「宗教」ってなんだ…という私の疑問は増幅した。

歴史の授業でサラッと流れてしまうキリシタン迫害について、ここまで深掘りをして、多角的に宗教とは何かを文学として確立させた原作者の遠藤周作はすごいと感動したが、この作品を外国人である監督が映像化したというのもまたすごい。しかもかなりのクオリティである。
監督自身が、より深くこの「沈黙」という作品と向き合ったことが作品の端々から感じられて、映像化されたことでよりこの作品の理解が深まった。

それにしても、なんてハイカロリーな作品なんだろう。救われるための宗教で、とことん苦しんで痛めつけられて、命まで奪われるだなんて、本末転倒だ。
私は結局、宗教はひとつの判断軸や教えとして受け取るのは良いとしても、生活や人生全てを捧げるほどのめり込んではいけないに結論付くんだけども、そう思えるのも心が平穏だからなのか。

歴史を学んだ時は、何を信じるのかは自由なのに、政府がそれを取り締まるなんてひどい!と思ったけれど、この作品を見ると、そこまで政府を酷いとも思えず。
むしろ他国まできて、自分たちの教えを広めようとしてくる宣教師たちの方が厚かましいとも思えてしまった。

日本で実際に起こった歴史を学べると同時に、改めて宗教とは何かを考えさせられる学びの多い作品だった。

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AZU

4.0 いつもと違う、スコセッシ監督の「法と信念」の描き方。

2024年12月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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すっかん

5.0 映画の世界にずぶずぶと浸る、至福の2時間42分

2017年2月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

出張帰りに、子どものお迎え時間を気にしながら鑑賞した。バタバタの生活の中の、2時間42分は大きい。ちょっと決意がいる。けれども、いざ踏み込んでみると、全く長さを感じることがなかった。どっぷり、ずぶずぶと映画の世界に浸る幸せを、存分に満喫した。
個人的に何より気になっていたのは、アンドリュー・ガーフィールド(以下、敬称略)の出演。彼を初めて見た「BOY A」の衝撃は忘れられない。キチジロー役の窪塚洋介と宣教師ロドリゴを演じた彼のツーショットを見て、「あ、二人とも黒目が多い、子鹿の目なんだなあ」と気づいた。(以前、冨永監督が、窪塚さんや染谷将太くんを「子鹿みたいに澄んだ黒目が多い人は、何を考えているかよく分からない、そこが魅力」といったことを、インタビューで発言していた気がする。)
若く青い使命を持って異国に来たものの、如何ともしがたい凄まじい現実に直面し、揺らぎ壊れていくロドリゴ。川辺に膝をつき水をむさぼるうち、水面に映る自分の姿にキリストの姿が重なり、ゆらゆらと揺れ動く。…あ、キリストも子鹿の目だ、と再び気づかされた。
もがきながら狂気をさまようキリスト教徒たちに比して、イッセー尾形や浅野忠信が演じる奉行所側は、全く動じない。余裕たっぷりに、一寸の隙なく自らの勤めを果たす。卑劣、残酷、老獪…ぴったりくる言葉がなかなか浮かばない。観ているときは、どうしてここまで…などと素朴に思ったが、思い返すにつけ、狂気も極限までいけば、静謐なまでの落ち着きを醸すのだと思いが至り、改めてぞわぞわとした。
言うまでもなく、日本人キャストはいずれも素晴らしい。片桐はいりはそこにいるだけで絶妙な味を醸し出しているし、小松菜奈は邦画では見せない田舎っぽさを発揮し、作品によく馴染んでいる。中でも光っていたのは、「六月の蛇」コンビと言いたい塚本晋也と黒沢あすかの存在だ。特に、ロドリゴの妻を演じた黒沢あすかは、セリフなしにもかかわらず十二分に背後の物語をにじませ、重要な役どころを果たす。「六月の蛇」のヒロインと重なるところが多く、「六月の蛇」あっての本作では、と感じた。また、冒頭と終幕の暗黒と自然音(風の音、虫の声…)のひとときは「野火」を彷彿とさせる。思いがけず、このような大作の対極とも言える、塚本作品との化学反応が垣間見られたようで、ほくほくとうれしくなった。…となれば、今度は、塚本晋也監督の次作に期待せずにいられない! 映画って、本当に空恐ろしいほど奥深く、面白いなあとしみじみと感じた。

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cma

4.0 これほど丁寧に、執念と尊厳を持って映画化されるとは思わなかった

2018年12月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

原作小説が発表されたとき、神の沈黙というテーマは多くの教会でタブー視されたと聞く。そんな原作に大きく魂を揺さぶられたのが、全く異なるアメリカの風土で育った巨匠スコセッシ。その後、幾度も彼による映画化の道が探られては断念されてきた。原作発表から50年が過ぎ、今こうして完成版がお目見えすること自体、幻を見ているかのようだ。

それにしても、さすがスコセッシである。ここには「おかしな日本」など微塵もない。決して欧米式の安易な解釈に寄せるのではなく、当時のスペイン人宣教師やキリシタンの心のキャンバスに映っていたものをしっかりと研究し、理解した上で表現しようとする覚悟と執念がある。しかも原作を読んだことのある私が全く掴みきれていなかった情景さえも具象性を持って描かれている。そこに凄さを感じてやまなかった。私にとっては、スコセッシが辿った数十年に及ぶ映画化の道こそ、真の信仰のように思えてならない。

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牛津厚信