ルームのレビュー・感想・評価
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7年の監禁から脱出してからが面白い。家族の再会そして離婚していた父...
7年の監禁から脱出してからが面白い。家族の再会そして離婚していた父と母、まともに見れない被疑者の子、母となった娘が7年の空白を埋めようと調整すればするほどズレが出るジレンマの日々、だんだん目が冴え出した頃に不意にくる泣きどころ、犬のシェイマスに散髪、何気ない子供の一言に重い揺さぶりが波打ちます。ラスト、監禁されていた部屋に訪れる母子、母にとっては地獄だったけど子供には忘れられない物が詰まる部屋、複雑な場面なんだけどこの決別は有りだと思いました。
子役の演技が見事
期待以上!
子供から見た世界の恐怖
18歳の時点で誘拐監禁され、狭い納屋で7年間監禁されていた女性と、監禁されている間に出産した5歳の子供が主人公の話。
生まれてから一度も「部屋」の外の世界を知らない子供には、いったいどんな風に世界が見えているのか。それが映画の主題であるように思った。
子供の目線からの世界と、大人の目線からの世界の「ズレ」が面白い。
監禁されている間は、母親にとっては地獄だが、子供にとっては母親と2人だけの世界で完成されている、むしろ天国と言ってよいような安心できる世界だったのかも知れない。
子供にとっては知らない大人が話しかけてくるだけでも恐怖であることとか、そっとしてほしいときに干渉してくる無神経さ。大人になるとつい、そのことを忘れてしまう。
あと思ったのは、マスコミや野次馬のお節介さ、下劣さ。このへんは日本もアメリカも変わらないのか…。皮肉なことに、母親は監禁されている間よりも、助かった後の方が辛い状況に置かれた。
何も変わらない「部屋」の外に出て、世界の大きさ、信じられないような広さを知り、また、辛いこともたくさんあることけど、次第に楽しいこともたくさんあることを知っていく。
最後、かつての「部屋」をおとずれるシーンでは、なぜだか分からないが泣ける。そこに去来する様々な思いが、なんだか誰にとっても普遍的なものを表している気がする。
幼き日の思い出、母親と2人だけの完成された世界、甘美な過去との別れを理解し、そして二度とそこにかえれないことを受け入れる。
そして、新しい希望と不安に満ちた世界へ踏み出す、さみしさ…。
興味本位の監禁ものじゃない
リアルにしようと一生懸命に作られていたが、どう見ても作られた話にしか思えない内容。だから最初は、これは期待しすぎと思ったし、絶対面白くないとも思った。しかし、その思いは完全に外され、涙し、素直に面白い映画だと言える。
監禁というものが軸であることは間違いないけれど、伝えたい意志というのは、人と人との繋がりというところにあったと理解できたし、特異な者だけの話に終始しなかったところに共感できた。
ブリー・ラーソンが最優秀を受賞したのも、制作陣全ての繋がりだというところも垣間見られ、想像以上に素晴らしい作品だと思うところが大。
正直、話の偽り具合は半端ない。それでもグッと来てしまうわけで、制作スタッフ全てに敬意を表したくなる映画だった。
多分面白いと思う
『「世界」を知ること』を知る
7年間監禁された母親と、そこで生まれた5歳の男の子の監禁生活・脱出とその後を描いた物語です。
とにかくジャックが食べちゃいたいくらい可愛い。生まれてから5年間納屋の中で育った彼は、当然外の世界を知らず、髪の毛も伸び放題。でも、とても素直な子で「部屋」の中がすべてかのように教えられてきました。
ジャックはずっとこの生活が続くと思っていますが、5歳になってジャックが大きくなったことを機に、母親は脱出を決意します。
もちろん、ジャックは脱出することにすぐ納得するわけではありません。そのあたりの母親の切実な願いとジャックの素直さがぶつかるシーンは、何とも心苦しかったです。
ただ、母親が「ぬけがら」になったことをきっかけにジャックの心情に変化が現れます。
そしてついに訪れる、初めて外に出た瞬間。ジャックが初めて「世界」を知る瞬間。目に映るものが未知のもので戸惑いつつ、しっかりと母親が言った通りに勇気を振り絞って助けを求めようとするシーンは胸が締め付けられました。
無事に母親と共に本当の「世界」へ戻ってきたのもつかの間、時が過ぎてきたことや今まで閉ざされた空間で生活していたことによる歪みが生じます。
母親の周りも時を経て環境が変わってるし、ジャックにとっては階段を上り下りするのも初めてのこと。母親以外の人とはうまくコミュニケーションも取れません。
また、事実としては犯人の子供であるジャックを、母親の父親(祖父)は簡単に受け入れません。テレビのインタビューでも「生まれた瞬間に病院に預ける方が子供は幸せだったのでは?」と聞かれた母親は、精神的にまいってしまいます。
脱出できたとしても、元の世界での生活に順応する大変さ。「部屋」しか「世界」を知らないジャックの成長は、悲しくもあり切なくもありました。
母親と2人きりで過ごした「部屋」は、ジャックが生まれてから5年間生活した大切な場所です。「へや」の思い出を語るジャックに対する周りの大人たちの何とも言えない視線や返答が、また考えさせられました。
最後はどうなるかと思いましたが、「おはよう」から始まった「部屋」に「さようなら」して、2人の新たな道が拓けたようでホッとしました。
映画の中の話が実在したものに思えるくらい、母親とジャックの演技は、まさに「本物」。壮大なストーリーや派手なアクションはありませんが、心に残る一本だと思います。
立てつけが大きすぎる普通の母子物語
カナダ・トロントで7年間監禁されているジョイ(ブリー・ラーソン)。
監禁場所は犯人の裏庭にある納屋で、そこで犯人の子どもを産み、いま5歳になった。
子どもの名前はジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)。
犯人は週1回日曜日に監禁場所を訪れ、ジョイに肉体関係を持っていた。
入口のドアには内外からナンバーロックがされており、天窓がひとつあるきり。
行く末に希望がなかったジョイであるが、ジャックの5歳の誕生日を契機に、ジョイその納屋からの脱出を試みる・・・というハナシは、まぁ、ありきたりの監禁映画のような感じがしないでもない。
たしかに、監禁されたまた子供を産むという羽目になった映画は観たことはないんだけれど。
というわけで、前半、ジョイの知略でジャックが逃げ出すまでは、それほど面白くない。
演出的には、監禁場所の狭さを感じさせるカメラワークや、犯人がそこへやってくる際にジャックはさらに狭いクローゼットに押しやられるという描写はあるものの、これまでの映画と比べと面白いかと言えば面白くないといったレベル。
この映画が面白くなるのは、ジャックの逃走劇が一息ついて、ジョイとジャックが世間に曝されてから。
それまでの狭い監禁場所のエピソードでは、その狭さを活かしてふたりのクローズアップを中心に画面構成してきたが、この後段でも、そのクローズアップ中心はそれほど変化しない。
凡庸な映画だと、救出されたのちに「世界の狭さ/広さ」を意識して、救出されたのちは引いた画で構成するところだろうが、この映画では、ジョイとジャックに寄り添うがごとくクローズアップの画面がしばしば登場する。
ジョイにとっては旧懐の世界でその広がりはあるのかもしれないが、ジャックにとっては未知なる空間、劇中の言葉を借りれば「宇宙空間」にほかならない。
この映画の見どころは、多分にここいらあたりだろう。
監禁されたまま生まれてからの5年間を過ごしたジャックが目の当たりにする世界は、あのルーム以上に母親を苦しめている世界だとジャックが認識するわけである。
この苦しみから母親を救う。
映画は後半、庇護者と被庇護者の関係が入れ替わる。
ここがこの映画の肝要なのだと思う。
さすれば、これは「普通の」母と息子の物語。
それも、息子から観た物語。
おお、おぉ。
と感銘するところなんだけど、どうにも立てつけが大きすぎて、この「普通さ加減」を描くのには過剰な感じがして、どうにも落ち着きが悪い。
母親役のブリー・ラーソンも息子役のジェイコブ・トレンブレイも熱演なのだけれど、それゆえか、どうにも普通さ加減から遠のいていった感じがしてしまいました。
箱庭の中の小さな部屋。
食料やライフラインを支配し、鍵で自由を奪い、暴力で屈伏させることでしか女性と関わることができない無職のソシオパス。
犯人像はややステレオタイプ的だけれども、言葉や文化が異なっていても性犯罪者のイメージは世界で変わりないというのはちょっと驚いた。
歪んだ女性観、狂った倫理観、狭隘で閉じた世界観から産み出された、庭の片隅にある、あの天窓の付きの小部屋という病的で空疎な性犯罪者の世界。
誘拐され、監禁され、犯され、獣の子を身籠った少女にとってあの小部屋が世界の終わりだったはずだ。
けれども、生まれて来た子供にとっては小部屋こそが世界の始まりだった。
脱出を期に開かれてゆく少年の世界。
あまりの情報量の多さに、目映く正視できない様子を巧みなカメラワークと視覚効果で表現している。
救出後、世界の現実を突き付けられる。
いつの間にか母親となっていた少女に戸惑う被害者家族。
止まったままだった時間も失われた人生も、物凄い勢いで襲いかかってくる。
被害者なのに味方が誰もいないかの様な孤独感と絶望感。
この辺りが一番難しく重苦しいかもしれない。
誘拐監禁事件をモチーフにはしているけれど、世界の認識についてが本来のテーマなんだろうか?
だとしたら現代思想好きにはいい映画かもしれないけど、重苦しいテーマでジャック役の子役の名演が無ければ徹底的に胸を締め付けられるだけで映画館を後にしただろうと思う。
終盤にジャックが「この部屋縮んだ?」と問いかけるシーンは印象的。
もう部屋には戻らない。
好きな人と別れた。「もう少しお付き合いしたい」と気持ちは伝えたけれど、届かなかった。しつこくしても仕方がないので「アリガトウ」と笑顔で手を振ったが、残った好意のやりどころに困った。
違う感情を自分のなかに入れて、気持ちを切り替えようと、映画を見ることにした。たまたま上映していたのが、この映画であった。
主人公ジャックは、それまで暮らしていた世界が狭く、外ではいままでの常識が通用しないことを知る。彼はずっと制約されていたことに気付いていなかったのだ。外の世界は何もかも自由だ。
しかし、不便だったかつての居場所の方が居心地よく感じられる。そこには安心感があった。
別れる前のわたしも、気持ちはジャックによく似ていた。彼と付き合うということは、他の人と過ごす時間が相対的に減るということでもある。彼と共有できた常識は、ふたりだけの決めごとであった。
別れたわたしは、考えようによっては自由を手に入れたのだけど、欠点もあった彼の懐はまた、居心地のよい場所だった。
それをリセットして、新しい未来を生きる。それができなくて映画館にいるわたしはジャックと同期した。
わたしの中には、他にもたくさんの過去の欠片が蠢いている。愛されていたあの頃のわたしの記憶が、成長した違う自分になることを拒む。
未知を引き受けるというのは、それまでのアイデンティティを壊すことにつながる。不都合でも、過去の方が慣れ親しんでいて、好ましいのだ。
親子が退院するとき、医者は「子どもはプラスチックのように柔軟だから大丈夫ですよ」のようなことをいう。
そして、実際に、少しずつ、少しずつ新しい世界に慣れていく。
ラストで、彼はかつての「部屋」を見に実際に訪れる。そこには、想像していたような親密性は失われ、形骸だけが残っていた。
わたしたちが戻りたいのは、場所ではなく、過去の時間と空気なのである。それは、そのときの自分と、そのときの相手にしか作れない瞬間のものだったのである。
過去と同じ空気は、どこにも存在しえない、ということは、現在もまた偶然の奇跡であり、このレビューを書く一瞬一瞬でさえ2度とめぐり会えないものなのであった。
ああ、失われた時間を惜しむ。あなたとの会話、あなたと共有した空気、訪れた場所。
バイバイと言って決別しよう。もうとらわれない。わたしたちは現在を生きるのだ。
説得力がある
2部構成だったんだ!!
恐さを受け入れて乗り越えろ
久々の当たり作品
不思議な映画だった
ああ〜〜まず失敗したのは、先入観で見すぎた。下調べしすぎた〜〜。無駄に期待値上げてたし。
まあ、とにもかくにも第一に素晴らしいのは演技。ジャック役のジェイコブ君、アカデミー賞ブリーラーソン。最高に息が合ってたなあ。ジェイコブ君が本当に凄かった。泣き方、見上げ方、強請り方、監督大満足なんじゃないだろうか。ブリーラーソンの詰め寄る感じもリアルで、ストレスが目に見えた。
この映画はジャック目線で撮られていて、我々も彼になって見る。すると、前半部分であんなにも酷いと心の中で客観視して見ていたのにも関わらず、世界に飛び出た私の中のジャックは部屋に戻りたいと懇願するのだ。不思議な感覚だった。
あと、分かりやすい明確なハッピーエンドであってほしかったなとはおもった。残ったのは無気力感、脱力感。最後の2人の背中は、過去の記憶は決して消えないと語っているようにも見えた。
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