GONIN サーガ : 特集
あの伝説、「GONIN」が再び! リアルタイム世代もそうじゃない若者も、
この“バイオレンス・アクション”に巻き込まれれば世界が変わる!
スタイリッシュな描写とバイオレンス・アクションが人気を博した石井隆監督作「GONIN」(95)から19年を経て、待望のシリーズ最新作「GONIN サーガ」が完成した。「GONIN」の登場人物の遺児たちを主人公に、再び現金強奪を描く伝説の最新章──リアルタイムで見た者も、知らなかったという若い世代も、語り継がれてきた傑作の魂を受け継ぐ本作に注目せよ。
■タランティーノはじめ、多くの海外映画人から注目された《日本映画界屈指の傑作》
伝説の映画「GONIN」を知っているか?
1995年、ある1本の映画が誕生した。70年代の「仁義なき戦い」シリーズ、80年代の「その男、凶暴につき」というバイオレンス・アクションの系譜を受け継ぎつつも、00年代以降の「アウトレイジ」につながる大きなターニング・ポイントとなった作品──それが、「GONIN」だ。佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、椎名桔平、竹中直人らが出演し、暴力団の金庫から現金強奪を企てた5人の男たちの壮絶な運命を描く傑作バイオレンス・アクション。実に長きにわたり続編が求め続けられてきた伝説的作品に、ついに待望のシリーズ最新作が登場する。
クエンティン・タランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」に感銘を受けた竹中直人が、盟友・石井隆監督に「男たちの映画を撮ろうよ」と持ちかけたことが発端の「GONIN」だが、そのタランティーノ本人が今度は逆に「GONIN」に夢中になったというのは有名な話。石井監督をお気に入りの監督のひとりとして挙げていることも知られている。さらにスティーブン・ソダーバーグ監督は、同作のリメイクを熱望したとか。だがそれはかなわず、その構想は別の作品のリメイク案とつながり、「オーシャンズ11」となったのだという。
激しくも美しいバイオレス。これほどスタイリッシュに“暴力”を描き、多くの観客を魅了した映画はかつてなかったと言っていい。銃声とともに薬きょうが飛び、色と質感がリアルな血のりが飛び散る描写は、メガホンをとった石井隆の特徴的な作風。むせ返るような血の匂いや、肉体の生々しさを感じさせつつ“死”を描写するというこだわりは、以降の日本映画に大きな影響を与え続けていると言っても過言ではないのだ。
5人の男たちを演じたのは、佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、椎名桔平、竹中直人。そして、現金を強奪した彼らを追い、ひとりひとり抹殺していくヒットマン役にはビートたけし。このそうそうたる顔ぶれを今改めて見ると、驚かずにはいられないはずだ。当時30~40代であり、ギラギラとした魅力と存在感を放っていた彼ら。今や日本映画を背負って立つ名優となったこの男たちが集結した意味でも、「GONIN」は伝説的かつ奇跡的な作品だったのだ。
「GONIN」がどれほど日本映画に影響を与え、そして映画ファンに語り継がれているかは、数々の映画ランキングや、映画ファンが挙げる好きな作品リストに入ってくることでも明らかだ。バイオレンス・アクションや犯罪映画、ヤクザもののランキングに挙がるのはもちろん、数多くの作品を送り出してきた石井監督のベスト作の1本としても必ず語られ、俳優ビートたけしの存在感を引き出した傑作としても名高い。まさに日本におけるバイオレンス・アクションのエポック・メイキング作品だ。
「GONIN」で描かれた5人の男たちによる五誠会系大越組襲撃事件から19年。襲撃事件で殺された大越組の若頭・久松の遺児・勇人(東出昌大)は、母を支えながら真っ当な人生を歩み、勇人の幼なじみで大越組長の遺児・大輔(桐谷健太)は、組再興の夢を抱きながら、勢力を拡大した五誠会の3代目・誠司(安藤政信)のボディガードを務めていた。そんなある日、19年前の事件を追う富田と名乗るルポライター(柄本佑)が勇人の母のもとに現れたことから、事件関係者たちの運命の歯車が大きくきしみはじめる……。
■【GONINリアルタイム世代】が本作を見るのは、もはや“宿命”
ガタガタ言わず、9・26の抗争に巻き込まれる準備を整えろ!
「『GONIN』をリアルタイムで見た」という世代なら、最新作「GONIN サーガ」についてしつこく語ることは必要ないだろう。それほどまでに、強烈な映画体験を見る者に与えたのが「GONIN」という作品だったからだ。「GONIN サーガ」はまさにタイトルに相応しく、95年に生まれた“伝説(サーガ)”を受け継ぐ待望の作品。それを目撃することは、もはや“宿命”だ。
「GONIN」から19年、石井監督によれば、その間にさまざまな続編のストーリーが生まれていたというが、最後に監督が選び取ったのは、同作で無念の死を遂げた者たちの遺児たちの物語だった。それは、「GONIN」で監督がやり残したこと、描き切れなかったことに落とし前を付けるという決意でもある。親への思いを背負いつつ、再び現金強奪に挑むことになる主人公たちの新たなる生きざまから目を離してはならない。
衝撃を与えたバイオレンス・アクションは、もちろん「GONIN サーガ」でも健在。いや、健在どころか、さらなる進化を遂げて、我々の目の前に登場するのは確実だ。鮮烈な血しぶきや、こだわりにこだわった銃声や薬きょうが床に落ちる音が、臨場感をあおり立てる。そして、竹中直人が今作では主人公たちを追い詰めるヒットマン役として登場。狂気に満ちた表情でサブマシンガンを乱射するさまは、バイオレンスそのものだ。
─書体、雨……貫かれる「石井隆スタイル」
19年経っても変わらない、かたくなに守り続けられる「石井隆スタイル」を堪能せずにはいられない。縦書き斜体のクレジット、ずぶ濡れになる雨のシーンが、石井映画独特の色気をかもし出す。
─ちあきなおみ、森田童子の歌が響く
現代の物語でありながらも、どこかノスタルジーを演出するのが、劇中で流れる歌の数々。前作でも登場のちあきなおみの「紅い花」に加え、森田童子の「ラストワルツ」が流れる。
─オリジナルキャスト・根津甚八が11年ぶりに銀幕復帰
リアルタイム世代にとっての嬉しいサプライズは、俳優引退を表明していた根津甚八が本作に限っての復帰を果たしたこと。「GONIN」唯一の生き残り・氷頭として、物語のカギを握る。
■【GONIN知らない世代】の若者たちも、本作を見ない理由はない!
若手実力派集結、若き心に響く青春群像、「アウトレイジ」好きを魅了する世界観!
「『GONIN』を知らない」という若者たちにとっても、「GONIN サーガ」は見る価値のある映画だ。なぜなら、これほどまでにバイオレンスをスタイリッシュかつ濃厚に描く作品は、他にないと言っても過言ではないから。いま初めて「GONIN」の世界に触れる者にとっては、この「GONIN サーガ」が、伝説的な作品となるのは間違いないだろう。
「アオハライド」の東出昌大、「黄金を抱いて翔べ」の桐谷健太、「さくらん」の土屋アンナ、「ピース オブ ケイク」の柄本佑、「スマグラー おまえの未来を運べ」の安藤政信と、映画、テレビ、CMに活躍する今が旬の若手俳優陣が結集しているのが見逃せない。さらに彼ら全員が、これまでのイメージを覆す、心に闇を抱えるハードでダークな役柄に体当たりで挑んでいるのだ。若き才能の新たな一面が、鬼才監督のもとで開花するさまに注目だ。
「空気を読む」という言葉が象徴するように、誰とも違う強い個性を持ちながらも、周囲に同調することを強いられているのが現代の若者たち。そんな観客にとっては、主人公たちがルールをぶち壊し、自らの意志と力、そして命懸けで運命を変えていこうとする生きざまがまぶしく見えるはずだ。逃れられない宿命を前にしたとき、そして愛する者を失ったとき、自分ならどうするかと、登場人物たちの姿と照らし合わさずにはいられない。
「GONIN サーガ」には、映画ファンを引き付ける数々の要素が詰め込まれている。非道な暴力団との抗争は「アウトレイジ」、組織に潜り込んだ者の正体がバレるかどうかというスリルは「ディパーテッド」、そして大きな“ヤマ”に挑む仲間たちの姿は「オーシャンズ11」をほうふつとさせる。バイオレンス・アクションに満ち、そしてなにより、運命に挑む者たちが鮮烈な色気を放っている本作は、まさに必見の1本なのだ。
■「GONIN」を傑作と呼ぶライター、評論家、映画監督の3人が
「GONIN」そして「サーガ」の魅力を 語る!
映画ライター、評論家、映画監督という、日頃さまざまな形で「映画」に関わるプロフェッショナルであり、「GONIN」を傑作と呼ぶ3人に、「GONIN」そして「GONIN サーガ」について語ってもらった。新たなる伝説の誕生を前に、彼らはいったい何を感じたのか?