エレニの帰郷
劇場公開日 2014年1月25日
解説
カンヌ映画祭パルムドール受賞作の「永遠と一日」(1998)をはじめ、「旅芸人の記憶」(75)、「アレクサンダー大王」(80)、「シテール島への船出」(83)、「ユリシーズの瞳」(95)など数々の名作を残したギリシャの巨匠テオ・アンゲロプロスの遺作。「エレニの旅」(2004)から始まった20世紀を題材とした3部作の第2部で、男女3人の半世紀にわたる愛の叙事詩。93年、ギリシャにルーツを持つアメリカの映画監督が、母エレニと彼女を思い続けた男ヤコブ、そしてエレニが愛したスピロスの男女3人の映画を制作していた。53年、トシケントで再会したエレニとスピロスはソ連当局に捕らえられ、再び離れ離れになってしまうが、その時エレニはスピロスとの子どもを宿していた。エレニはシベリアの牢獄に抑留されるが、そこへ彼女に思いを寄せるヤコブも送られてくる。監督のアンゲロプロスは3部作の3作目を撮影中の12年に事故で他界。3部作は未完となっている。
2008年製作/127分/PG12/ギリシャ・ドイツ・カナダ・ロシア合作
原題:Trilogia II: I skoni tou hronou
配給:東映
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2021年11月29日
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鑑賞方法:VOD
現在と過去を交互に描きながらエレニを含めた三人の過酷な運命と今を生きる子と孫の三世代を奇妙にも思える時間軸の唐突な変動に戸惑いながら、登場人物それぞれの感情が哀しくも最後は幸せに満ちてゆく。
時代背景やセリフでの説明を極力排した演出描写、エレニとヤコブ、スピロスの関係性と今を生きながら破綻している家族三人の物語を、静かに優しく時に不親切ながら難しくも魅入ってしまう感覚に。
孫であるエレニの部屋の壁全面に貼られた無数の映画や役者にミュージシャンなどの切り抜きやポスターがセンス良過ぎで、それだけでテンションも上がる。
恥ずかしながらテオ・アンゲロプロスを知らずに今まで、全作品を観てみたいと好きな映画監督がまた増えてしまった喜びはありながらも、若松孝二と同じように逝ってしまった驚きと無念さが残念でならない。
2021年5月21日
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鑑賞方法:DVD/BD
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20世紀の終わり。21世紀前夜。時は古いものを置き去りにし、何もなかったかのように新時代へと移り変わろうとしている。激動の20世紀を生き抜いた世代は老人になっていた。世界大戦、ホロコースト、スターリン時代、ベトナム戦争、ウォーターゲート事件、ベルリンの壁崩壊。国境から国境を駆け抜けた若き日々の思い出。情熱を傾けたコミュニズムへの夢と希望。しかしユートピアは迷妄となった。イデオロギー時代の終焉。心は行き場所を失ってしまう。時の埃だけが積もっていく。行き場所を失った心は最終的に根源へと向かう。心の故郷である愛へと。第三の道。第三の翼を広げる。20世紀最後の大晦日、久々に家族が揃う。希望と絶望が入り混じった世紀末の年越し。ラジオからは「歓喜の歌」が聴こえる。迎えた21世紀。一時代が終わりを告げたように思えた。しかし、時間と空間だけは相変わらず何事もなかったかのようにそこに鎮座している。例えそれは、人類が滅びようとも、地球が滅びようとも、永遠に鎮座し続けるのだろう。冒頭の「何も終わっていない。終わるものはない。」という言葉が頭をよぎる。老人と少女は手を繋ぎ今一度希望の未来へ向って羽ばたく。無音のエンドロールを迎える。
惜しくもアンゲロプロス監督の遺作となってしまった20世紀3部作第2部の本作。前作「エレニの旅」が監督の親世代が生きた20世紀前半の時代が描かれているのに対して、本作は監督自身が生きた20世紀後半の時代が描かれている。アンゲロプロス監督の親の世代、監督自身の世代、そして監督の子供の世代。3世代の家族の絆が奇跡を魅せる。監督が目の前で目撃してきた時代が世界が総括的に描かれている作品だと感じた。晩年の作品だがワンシーンはおろかワンカット内で往古来今を行き来するアンゲロプロス節も健在。何処からどう観ても生粋のアンゲロプロス作品で、その確固たる作家性が相変わらず素晴らしかった。ブルーノ・ガンツとウォレム・デフォーといった名優達の研ぎ澄まされた名演技も鳥肌モノ。今まで観たアンゲロプロス作品は全て傑作だと感じたが、本作も当たり前のように傑作だった。このような素晴らしい精神的映像体験をたくさん残してくれたことに感謝しかない。
2015年2月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
ブルーノガンツ、ミシェルピコリ、ウィレムデフォー、イレーヌジャコブ。イレーヌジャコブが好きじゃないからか、ファーストカットからなんだがちょっと違和感が。前作が圧倒的すぎたっていう話もあるが。孫のエレニの部屋のポスターが良い感じ。羊たちの沈黙、ジムモリソン、ザッパ、ゲバラ、ルーリード。
2014年8月17日
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鑑賞方法:映画館
「エレニの旅」に続くアンゲロプロス監督の第二弾。
三部作構想だった撮影の最中に事故で急逝しこれが遺作となる。
男女三人の愛の行方と、政治背景・歴史的事実が複雑に絡み合い
過去と現在を行き来するという難解な内容は、乗り切れないと
最後まで観るのが辛くなってくる。好きな人には壮大な叙情詩。
それにしてもW・デフォーがI・ジャコブの息子役とは恐れ入った。
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