風の谷のナウシカ

ALLTIME BEST

劇場公開日:1984年3月11日

解説・あらすじ

アニメ誌「アニメージュ」に連載されていた宮崎駿の同名漫画を、宮崎自身が監督・脚本を務めてアニメ映画化した冒険ファンタジー。

「火の七日間」と呼ばれる大戦争で高度な文明社会が滅んでから1000年後。人類は巨大な蟲(むし)たちや毒を放出する菌類に覆われた「腐海」に脅かされながら生きていた。そんな世界の片隅にある小国「風の国」に、少女ナウシカが暮らしていた。族長の娘である彼女は、「メーヴェ」と呼ばれる乗り物にのって空を駆け、人々が恐れる巨大な王蟲(オーム)とも心を通わせる不思議な力をもっていた。その優しさで風の谷の人々に慕われ、平和な日々を過ごしていたナウシカだったが、やがてトルメキアと土鬼(ドルク)という大国同士の争いに巻き込まれていく。

宮崎監督の「ルパン三世 カリオストロの城」でヒロインのクラリス役を務めた島本須美がナウシカの声を担当。宮崎監督とさまざまな作品でタッグを組んできた高畑勲がプロデューサーを務めた。制作は、宮崎・高畑と同じ東映動画出身で後にスタジオジブリにも参加する原徹が設立したアニメーションスタジオのトップクラフト。本作の成功によって宮崎監督の次作「天空の城のラピュタ」の制作とスタジオジブリの設立へとつながっていった一作。宮崎監督が手がけたアニメ「名探偵ホームズ 青い紅玉(ルビー)の巻/海底の財宝の巻」が同時上映された。

1984年製作/116分/日本
配給:東映
劇場公開日:1984年3月11日

スタッフ・声優・キャスト

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(C)1984 Studio Ghibli・H

映画レビュー

5.0 息を呑む風の描写

2023年6月19日
スマートフォンから投稿

興奮

知的

幸せ

壮大な音楽と、風を切って飛んでいる様が自分も風を切っているように感じた作品。
宮崎駿監督作品の中で、映画としては初めて映画館に小学生の頃、観に行きました。

飛ぶ表現、腐海の描写、この風の谷の世界観を彩どる音楽、どれを取っても描く事の限界が無いような、非常に美しい作品で、心に深く刻まれた映画です。

当時は子供ながらに人間の創造力と環境の事も考えさせられました。
そして何より、宮崎駿作品のヒロインらしさそのものの、ナウシカの天真爛漫さに爽やかな風の様な、それでいて、アクションもイケる勇敢な姿に自分まで強くなった気持ちになったり😊

今見るとユパ様の大きな愛でナウシカを見守る様子や、他のおっちゃん達の働き者な様子に心を打たれる。。。

クシャナ殿下の部下のクロトワも、な〜んか腹黒くていい味出してる。キャラがそれぞれ立ってて脱帽。

感動という言葉の意味を体感した、初めての映画作品であった。

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ホビット

5.0 宮崎駿監督のターニングポイントとなった伝説的な作品! (評価は庵野秀明監督らのオーディオコメンタリーも込みで)

2020年4月20日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

これまで何度か見た作品ではありましたが、初めてDVDのオーディオコメンタリーも含めて見てみました。
物語りの設定は、産業文明が崩壊した1000年後で、(腐海の中では)大気中に毒があり、登場人物らはマスクをしていたりもするので、ちょうど今の時代と共通点もありそうです。
本作は宮崎駿監督が自分の名前だけで自立した初めての映画で、スタジオジブリの初作品とされています(厳密には、「風の谷のナウシカ」だけはジブリ前身のトップクラフトですが)。
当時は財政的にも厳しかったようで、宮崎駿監督が脚本や絵コンテ、レイアウトだけでなく、原画、さらには、動画さえも直して描いたりしていたようです。
オープニングとエンディングはさっぱりしていて、オープニングで原画スタッフまで出す映画は、私の記憶ではこれが初めてかもしれません。(それくらいスタッフが少なかった、とも言えると思います)
見どころとしては、「エヴァンゲリオン」で有名な庵野秀明監督が、駆け出しの時にラスト近くの巨神兵のシーンを描いているところと、金田伊功という「現在の多くのアニメーション作品のアクションシーンに多大な影響を与えたアニメーター」が描いたシーンでしょうか。
アニメーションの効果的な動きで重要なものに「パース」(遠近法を使った画面構成)というものがあって、この「パース」を使うことで、キャラクターなどに、より迫力のある動きをさせることができます。宮崎アニメでは、「天空の城ラピュタ」、「となりのトトロ」、「魔女の宅急便」、「紅の豚」、「もののけ姫」に至るまで、金田伊功氏の原画が宮崎駿監督作品のクオリティーを大きく支えていた面もありました。
例えば「風の谷のナウシカ」では、アスベルの登場シーンが象徴的でしょうか。
アスベルは、いわゆる「ヒーロー」的な立ち位置ですが、最初の登場シーンは「殺人鬼」にしか見えません。これは、「パース」を使った作画手法に加えて、目を設定とは程遠いほど違うように見せている上手さがあります。このように味がありシャープでダイナミックな映像を当時から確立していて、原画スタッフではトップでクレジットされています。
さて、私の中で「風の谷のナウシカ」は、何か他の宮崎駿作品とは違う、とずっと思っていたのですが、今回、DVDのオーディオコメンタリーを合わせて見て初めて気付いたのは、ヒロインのナウシカは、庵野秀明監督曰く「宮崎駿監督のダークサイドを背負った人物像」なのだそうです。
確かにこれ以降の宮崎アニメのヒロインは、人を殺したりはしないですよね。
とは言え、自然との共生を目指し、優しく強い正義感を持っているのでナウシカの人気は非常に高いわけですね。
ラストシーンも当初は別のパターンだったりしたようですが、私はこの最終版で良かったと思います。
現代のアニメーション映画の最先端を担う「エヴァンゲリオン」等にも影響を与えたといえる本作は、宮崎駿監督のみならず「日本のアニメーション映画のターニングポイント」になった作品と言えるでしょう。

なお、オーディオコメンタリーでは、演出助手だった片山一良氏が進行する感じで庵野秀明監督が、ワンカットごとに素直に褒めたり、宮崎駿監督のことをけなしたりと、なかなか愛に溢れた面白い出来になっていました(笑)。
いずれにしても、CGが使えない時代で、ここまで手書きで勝負できるって凄いことだと思います!

コメントする 2件)
共感した! 22件)
細野真宏

4.5 【98.67】風の谷のナウシカ 映画レビュー

2025年11月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

🏰作品の完成度
宮崎駿監督の長編劇場用作品第二作である『風の谷のナウシカ』(1984年)は、単なるアニメーションの枠を超え、戦後日本映画史における一つの極点として評価されるべき傑作である。原作漫画の壮大な物語世界を、劇場映画としての約116分という尺の中に凝縮する手腕は、驚嘆すべき構成力と卓越した取捨選択の妙に裏打ちされている。物語は、腐海と呼ばれる有毒な森と、巨大な蟲(むし)が支配する荒廃した世界を舞台に、人間同士の対立と自然との共存という、重厚なテーマを掲げる。特に、物語後半の、トルメキア・ペジテ両国の争いと王蟲の大暴走がもたらす悲劇、そしてナウシカの自己犠牲と奇跡的な再生に至る展開は、観客の感情を揺さぶり、カタルシスをもたらす。
作画技術は、当時の東映動画やテレコム・アニメーションフィルムで培われた、セルアニメーションの到達点を示すものであり、メーヴェで空を翔けるナウシカの躍動感、荒々しい戦闘描写、そして腐海の持つ不気味な生命感の表現は、公開から時を経てもその鮮度を失わない。この作品が、後にスタジオジブリへと繋がる、作家主義的な長編アニメーション映画製作の礎を築いたという点で、その歴史的意義は計り知れない。テーマの深遠さ、映像の迫力、そしてヒロインの魅力が見事に融合した、紛れもない「完成された」映画体験を提供する作品である。
🎬監督・演出・編集
宮崎駿監督の演出は、類稀なる空間認識能力と運動描写への偏執的なまでのこだわりによって特徴づけられる。風の谷の人々の暮らしや、腐海の生態系の描写に見られる細部への徹底したリアリズムは、観客をその架空の世界へと引き込む強靭な説得力を持つ。特に、メーヴェでの飛行シーンは、風を感じさせるカメラワークと、滑らかな作画により、アニメーションにおける飛行表現の模範を確立したと言える。編集は、物語の緩急を巧みにつけ、情報量の多い世界観を短時間で提示しながらも、飽きさせないリズムを生み出している。クライマックスの緊張感と、ナウシカが聖なる存在として昇華される瞬間への感情的な昂ぶりへの移行は、見事なテンポと構成の賜物である。
👥キャスティング・役者の演技
声優陣のキャスティングは、主要登場人物の内面に潜む複雑な感情の機微を見事に捉えている。
• 島本須美(ナウシカ): 主演。風の谷の族長の娘であり、腐海を愛し、蟲と心を通わせる類稀なヒロイン。島本の声は、ナウシカの持つ清らかで透き通った優しさと、時に激しい感情を爆発させる強靭な意志を、見事なまでに両立させている。特に、愛する父を殺され、激情に駆られてトルメキア兵を斬り殺すシーンの魂を削るような叫びと、王蟲の群れに身を投じる際の慈愛に満ちた静かな決意との対比は、声の演技の限界を押し広げている。彼女の演技なくして、ナウシカというキャラクターが持つ普遍的な魅力は、これほどまでに確立されなかったであろう。その功績は計り知れない。
• 納谷悟朗(ユパ・ミラルダ): 助演。ナウシカの師であり、剣の達人。腐海を旅する放浪の剣士としての孤高の精神と、ナウシカに対する深い愛情と信頼を、納谷の重厚で深みのある声質が完璧に表現している。その声には、長年の旅で培われた哲学的とも言える達観が滲み出ており、物語の道徳的な柱として機能している。
• 松田洋治(アスベル): 助演。ペジテ市の少年で、ナウシカと行動を共にする。当初は復讐心に燃える硬質な少年の印象が強いが、ナウシカとの交流を通じて心優しき共存の道へと目覚めていく心情の変化を、松田は瑞々しくも力強い声で的確に演じ分けている。若き日の危うさと純粋さが、物語に奥行きを与えている。
• 榊原良子(クシャナ): 助演。トルメキアの若き皇女。冷徹な軍人としての威厳と苛烈さの裏に、父と国に翻弄される孤独を抱える複雑な女性像を、榊原の低く響く知的な声が体現している。その声には、抗いがたいカリスマ性と、悲劇的な宿命を背負った女性の痛切な感情が込められており、ナウシカの対極に位置する存在として、物語の緊張感を高めている。
• 京田尚子(大ババ): 助演。風の谷の長老。物語の知恵と歴史の継承者として、京田の貫禄と温かみのある声は、観客に古代からの教えの重みを伝えている。クレジット上は最後の方に登場するが、物語における精神的な支柱としての存在感は絶大である。
📜脚本・ストーリー
原作漫画から物語の一部分を抽出しつつ、劇場作品として完結させるための卓越した再構築がなされている。終末的世界観の中で、ナウシカが単なる平和主義者ではなく、理想と現実の狭間で苦悩し、行動する「行動するヒロイン」として描かれている点が重要である。「戦争と環境破壊」というテーマは、制作当時から現在に至るまで普遍的な警鐘として響き続ける。腐海の謎、王蟲の生態、そして巨神兵の存在といったSF的なギミックを盛り込みながらも、物語の核は生命の尊厳と異種とのコミュニケーションに置かれており、そのメッセージ性の強さは揺るぎない。
🎨映像・美術衣装
美術監督の中村光毅による荒涼とした大地と異様な生命感に満ちた腐海の対比は、この作品の視覚的なアイデンティティを決定づけている。腐海の描写は、現実の菌類や昆虫をデフォルメしつつ、緻密な生態系として描き出されており、想像力の豊かさに圧倒される。メカニックデザインも秀逸で、メーヴェのシンプルながら機能的な美しさ、トルメキアのコルベットやバカガラスといった兵器の無骨な迫力は、物語の世界観にリアリティを与えている。ナウシカの衣装は、その動きを妨げない機能美と、風の谷の文化を感じさせる象徴的なデザインであり、ヒロインの清廉さを際立たせている。
🎼音楽
久石譲による音楽は、本作が彼のキャリアにおける記念碑的な作品となった。シンセサイザーを大胆に取り入れたスペーシーで壮大なサウンドは、荒廃した世界のスケール感と叙情性を見事に表現している。「風の伝説」に代表されるテーマ曲の雄大さは、ナウシカの行動力と希望を象徴し、クライマックスの「ナウシカ・レクイエム」は、悲劇性と奇跡の瞬間を荘厳に彩る。
• 主題歌: 『風の谷のナウシカ』
• アーティスト: 安田成美
🏆受賞歴
本作は、公開当時、国内外の主要な映画賞において高い評価を獲得している。
• 第39回 毎日映画コンクールにおいて、大藤信郎賞を受賞。
• キネマ旬報の1984年度読者選出日本映画第1位に選出。
• 第2回 アニメフェスティバルにおいて日本アニメ大賞 最優秀作品賞を受賞。
• 日本SF大会において星雲賞 メディア部門を受賞。
これらの受賞は、本作が技術的革新性と芸術的価値の両面で、当時の日本のアニメーション界に新たな地平を切り開いた事実を雄弁に物語っている。

✅総合スコア結果
作品[NAUSICAÄ OF THE VALLEY OF THE WIND]
主演
評価対象: 島本須美
適用評価点: S (10)
助演
評価対象: 納谷悟朗, 松田洋治, 榊原良子, 京田尚子
適用評価点: A (9)
脚本・ストーリー
評価対象: 宮崎駿
適用評価点: S (10)
撮影・映像
評価対象: 高橋宏固, 白神斎
適用評価点: A (9)
美術・衣装
評価対象: 中村光毅
適用評価点: S (10)
音楽
評価対象: 久石譲
適用評価点: S (10)
編集(減点)
評価対象: 鈴木常吉, 瀬山武司
適用評価点: -0
監督(最終評価)
評価対象: 宮崎駿
総合スコア:[ 98.67 ]

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honey

4.0 色褪せない輝き

2025年10月22日
PCから投稿
鑑賞方法:その他、TV地上波

いまさらレビューもないほど、評価は確定していると思うけど。あくまでも個人的な感想と思い出を。

公開当時は、就職したてで、毎日職場に向かうバスの中で映画館の看板をボーッと見ていた。その中に、『ナウシカ』があり、「あ、映画になったんだ…」ぐらいの感想だった。

やがてレンタルビデオ全盛の時代になり、当時は貸しビデオ屋さんがグレーの商売だったこともあり、正規のルートじゃないところでトトロも、ナウシカも見た。

アニメ映画のトレンドはSFアドベンチャー路線で、ナウシカはちょっと違う流れ。しかも少女が主人公とあって、なんとものめり込めないものがあった。

ところが今になって思えば、これがすべて大正解の選択で、原作のマンガ連載時からそろそろ40年の時を経て、いまだに色あせない。テーマも、キャラクターも、フィルムも。そして音楽も。

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うそつきかもめ