リベンジ・マッチ : 映画評論・批評
2014年3月25日更新
2014年4月4日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー
往年の映画ファン垂涎の爆笑<レジェンド対決>
今世紀に入る頃から、ハリウッドではスターの高齢化にともない「スペース・カウボーイ」「最高の人生の見つけ方」「グラン・トリノ」「RED レッド」「ミッドナイト・ガイズ」等々、老人映画が花盛りだ。67歳のシルベスター・スタローンと70歳のロバート・デ・ニーロの2度目の競演作「リベンジ・マッチ」も、そんな時流に乗って企画された一作と言えるだろう。
舞台は2013年のペンシルバニア州ピッツバーグ。引退した伝説のボクサー、ヘンリー・“レイザー”・シャープ(スタローン)とビリー・“ザ・キッド”・マクドネン(デ・ニーロ)は、1983年にひとりの女性をめぐるトラブルによりタイトルマッチが中止となったため、雌雄を決すること無く30年間モヤモヤしながら生きてきた。そんなふたりに、リングの上で遺恨を晴らすチャンスが巡ってくる。
スタローン、デ・ニーロそれぞれの代表作であり、ボクシング映画の名作「ロッキー」と「レイジング・ブル」。そのロッキー・バルボアとジェイク・ラ・モッタが老人になり、リングで相まみえたらどうなるか。往年の映画ファンにはたまらない<レジェンド対決>だが、本作は主役ふたりが老人なので、当然のことながら本格的なボクシング映画にはなり得ず、ふたりの出演作のセルフパロディと老人映画のクリシェをメインに料理したスポーツ・コメディとなった。
正直、ストーリーは予定調和でありきたりな展開だし、ラストも簡単に予想がつく。いろいろなところがゆるい映画だ。にもかかわらず、この映画は楽しめる。その理由はスタローン、デ・ニーロの両ファンへの徹底したサービス精神だろう。生卵の一気飲みや精肉工場でのトレーニングといった「ロッキー」のパロディはもちろん、かつてのマフィア役を思わせる饒舌で血の気の多いデ・ニーロに、ファンは思わず頬を緩めてしまうはずだ。「腐っても鯛」といっては失礼だが、天下を獲ったふたりの存在感はさすがとしかいいようがない。
そんなわけで、この映画に「ロッキー」と「レイジング・ブル」のような感動と興奮を求めてはいけない。肩の力を抜いて楽しめるファンサービス満載の娯楽作である。
(編集部)