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フィリップ・ガレル監督の作品を私はベネチア映画祭で受賞した「ギターはもう聞こえない」しか観ていなかったので、この監督がどれ程素晴らしい演出家であり、有名か否かは、普段フランス映画を多数観ていない私には解らないが、本作に関して個人的な見解で言えば、こう言う映画は嫌いで、観てしまった事を後悔するタイプの映画なのだ。
モニカ・ベルッチ演じる女優アンジェルと婚姻関係にある画家のフレデリックの家に彼の友人である俳優のポールが付き合っている彼女エリザベートを伴って夏休みに訊ねて来ると言う男女4人の一夏の体験生活が物語の大きな流れの話しだ。
若く才能ある画家フレデリックは金持ちで、画家を生業としているその職業柄、日々の生活が時間的制約に縛られていない為か、芸術家であるためか、兎に角現実的な生活感に乏しく、プライドが超高いし、時間とお金を持て余しているのか、観ていてかなりのエゴイストタイプであるのだ。
普通の凡人でも、もし男が綺麗な女性と結婚出来たら、きっと幸せになれるだろうと私などは考えるのだが、それは凡人の浅はかなところなのだろうか?綺麗な女優=多くの男が彼女に言い寄って来る事を心配している為か、自分に自信が無い為か、理由は定かでは無いが、兎に角彼女に対して独占欲が強く、嫉妬深いのだ。
嫉妬深いキャラを時々愛情深い人間と描こうとする人がいるけれども、それは、単なるエゴであり、独占欲の塊でしか無いので、観ていて気持ちが悪いのだ。
観ていて自分が、気持ちが悪いと感じる映画は、たとえ音楽や、映像が綺麗で、編集が巧く、セリフが良くて出来ていたとしても、観る価値を私はその作品には見出す事が出来ないし、映画として美しいとしても、自分の人生には不要な映画なのだ。
しかも、この映画で言えば、このフレデリックは妻のアンジェルに愛想を尽かれ、浮気され逃げられてしまう、友人もそんな彼らの生活を見ていられなくなり彼の家から去り、結婚し、子供が生れ貧しいながらも幸せな家庭を築いて行く努力を続ける、
フレデリックは、偶然暫らくぶりで、ポールとエリザベートと再会した。
彼らのささやかな幸せを目の当たりにしたフレデリックは自分の人生に落胆し、離婚の苦しみと子供のいない、家庭の無い寂しい自分の人生を悲観視して、自殺をしてしまう。
気持は理解出来ない訳ではないのだが、そんなテーマの映画は、一人の個人的なプライベイトな問題を描いた作品としてしか価値が無いと私は考える。
人間にとっては生きる事は時には苦痛でしか無いのかもしれないが、それでも生きていかなければならないのだし、その辛い人生の状況で生きている人々の姿を描きだして、生きる命の希望を見出せる事が映画に出無くては、映画を観る価値など何故有ると言う事が出来るだろうか?モニカ・ベルッチは「マレーナ」に出ていた素晴らしい女優だが、フレデリック役のルイ・ガレルには不釣り合いな無い気がした。親子ほど年齢が離れている彼らを起用するなら、それなりに魅かれ合う何かを描かなくては不自然に終わる。