桐島、部活やめるってよ

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劇場公開日:

桐島、部活やめるってよ

解説

早稲田大学在学中に小説家デビューし、第22回小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウの同名小説を、「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の吉田大八監督が映画化した青春群像劇。田舎町の県立高校で映画部に所属する前田涼也は、クラスの中では静かで目立たない、最下層に位置する存在。監督作品がコンクールで表彰されても、クラスメイトには相手にしてもらえなかった。そんなある日、バレー部のキャプテンを務める桐島が突然部活を辞めたことをきっかけに、各部やクラスの人間関係に徐々に歪みが広がりはじめ、それまで存在していた校内のヒエラルキーが崩壊していく。主人公・前田役に神木隆之介が扮するほか、前田があこがれるバトミントン部のカスミを「告白」の橋本愛、前田同様に目立たない存在の吹奏楽部員・亜矢を大後寿々花が演じる。第36回日本アカデミー賞で最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀編集賞の3部門を受賞した。

2012年製作/103分/G/日本
配給:ショウゲート
劇場公開日:2012年8月11日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第36回 日本アカデミー賞(2013年)

受賞

優秀作品賞  
優秀監督賞 吉田大八

ノミネート

優秀脚本賞 喜安浩平 吉田大八
新人俳優賞 橋本愛
新人俳優賞 東出昌大
話題賞 作品部門/俳優部門  
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(C)2012「桐島」映画部 (C)朝井リョウ/集英社

映画レビュー

4.5持つもの・持たざるもの。

2024年2月23日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
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共感した! 2件)
すっかん

4.0片想いから、醒めるとき(塚本監督の「鉄男」が効いてます!)

2012年8月14日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

観終わってもなお、(予想通り)謎は残る。ホラーではないので、桐島は出てこない。桐島とは、一体どんな人物?ということをさておいても。
バドミントン部のエースは、なぜチャラけた帰宅部と付き合っているのか。野球部に籍を置きつつ帰宅部とつるむ彼は、なぜ性格悪のケバい彼女と付き合っているのか。…いや、実は彼らは付き合っていないのかもしれない。交際はチャラ男とケバ子の思い込みに過ぎず、エースは「面倒だから」、(野球部)は踏み出せないから、だらだらと相手に合わせているだけ、なのかもしれない。
そこまで考え、はたと気づいた。彼らは皆、片想い=思い込みの壮大なループの中にいる。自分の望みはおおむね満たされている、特段の不満はない、…はず。そんな一見整った世界が、桐島の不在で歪み、崩れ始めた。
「自分は所詮、この程度」「私は、アイツらとは違う」「自分には、やるべきことがある」…。「〜にきまっている」「〜しなければならない」は、日々の迷いを減らしてくれるが、思考停止に繋がり、自分の行動範囲を狭めてしまう。(毎日着るものに悩まなくていい制服が、気楽ながら煩わしいのと似ている。)当たり前と思っていたあれこれは、本当にその通りなのか? 見たいものだけを見ていないか? 幻想が崩れ、傷を負うのを恐れず、今に疑問を持ち、見ないふりをやめることが、「一歩踏み出す」ことにつながる。…とはいえ、繰り返される日常の中でそこに辿り着くのは、なかなか容易ではない。
塚本晋也監督の「鉄男」の使い方が効いている。映画部の彼は、モール内のシネコンで思いがけない出会いをする。二人が観ていたのが「鉄男」、というだけでもニヤリだが、敢えてあのシーンを切り取るとは! そんな彼が傾倒するゾンビ映画が、白人社会のマイノリティー差別(迫害)を暗喩していたことは、いまや自明のこと。ゾンビや近未来SFの自主映画制作が、作り手の想いを映し出す点は、「虹の女神」を思い起こさせる。にしても、本作中映画のハイライトは凄みがある。ここに辿り着いてよかった、という気にさせてくれた。一方、前半で延々と繰り返される「金曜日」のリフレーミングは、少々くどい。群像劇を盛り上げるため必要とわかっていても、焦らすのを通り越し、物語が必要以上にもたつく気がした。切り取り方を工夫すれば、一、二回は減らせたのではないか、と今でも思う。
殺伐とした物語に、前に踏み出し続ける野球部部長の佇まいと、踏み出しかけた映画部の遠慮がちな笑顔が、一筋の風を吹き込んでくれる。カッコ悪いことは、かっこいい。文字にすると、とたんに野暮になるけれど。

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共感した! 7件)
cma

4.0「あの頃」がここに

2024年9月29日
スマートフォンから投稿

学生時代特有の閉塞感、焦燥。
説明セリフなんてなくとも感じさせる自信がある素晴らしい映画だ。

大人にこそ見てほしい

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共感した! 0件)
ノ

5.0【群像劇の皮を被ったナイフ】

2024年8月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

知的

難しい

この映画を見て、鑑賞者が「わかる」と言ったり「わからない」と言ったり。そんな短絡的な尺度で語っていい物ではない。
そんな尺度でこの映画を評価するのは、映画の題材の一つである『持っている奴、持っていない奴』のような、スクールカースト的な分け方になってしまう。
僕は胸を張ってこの映画は「よく分からない」と言おう。
僕の事を「凡庸な感性だ」と言われようが、煮え切らぬようなラストを虚栄心を持ち寄って「わかる」等と言いたくはない。

↑ここまでは本編とは関係の無い感想↑

いや〜、とても痺れました。と言うか、刺さって痛かったです。登場人物の青青しさにグサグサと刺されまくった感覚です。
よくこのような題材の映画には、「リアリティのある」みたいな感想を付けられがちですが、ここまでリアリティのある学園映画見たことありませんよ!
分かりやすい虐めは起こらないし、かと言って目立たない子達に目立つ子達が優しくする訳でもない。一人凄い嫌な奴がいる訳でもなく、主人公が惨い嫌がらせを受ける事も無い。
一人一人自分の畑を耕しながら、他人の畑の進捗をチラチラと睨み合っているような、とてもリアリティのある学校ヒューマンドラマだったと思います。

そして、映画全体について言えば、完成度の高い映画だったと思います。作中でも名前が出て来ましたが、この映画は『タランティーノ監督』の作品に少し影響を受けているのかな?と想像しました。
序盤から中盤にかけて、登場人物の個性や心情、一人一人の関係性を丁寧に描き上げ、それを無かったかのようにラストでハチャメチャに犯しまくる。
そんな傍若無人的な燃え上がる本作のラストシーンは、思わず口に手を当ててしまうくらい、熱狂、感動致しました。

そして、最後は菊池が桐島に繋がらない電話をかけ、耳に携帯を当てながら野球部が躍動するグラウンドを眺める。という、何とも意味ありげな終わり方をしましたが、僕の凡庸な感性ではどうにも納得する正解を導けなかったです。
が、そのまま突っ伏すのでは無く、有識者の方々の考察や意見に目を通させて頂いたところ、一つの個人的な正解を妄想できたような気がします。

桐島は映画に登場しないのでは無く、そもそもキリシマなんて人間は居ないのだと。

非常にメタ的な思考になってしまいますが、もしかしたらキリシマはこの映画にとって、一つの「イメージ像」に過ぎないのでは無いでしょうか。
部活、恋愛、これからの人生に魂を震わせる彼ら、多くの学生達が必死に追い求め続けるキリシマ。
彼らの中でのフワッとした、何らかの雲のような光であるキリシマ。全員が全員、見た事の無いキリシマを目指し続ける。
本作を鑑賞中、「桐島ってめっちゃ人気なんだな〜」等と呑気に考えていましたが、もしかしたら、我々鑑賞者も学生の頃に抱えていた鬱屈とした感情を、何かで綺麗さっぱり流し落としたい。と考えていたはずです。
それを叶えてくれるのがキリシマ。皆の神の様な存在。

まぁ自分でもパッとしないと感じる答えではありますが、僕が想像しえる範疇ではこれが限界です。

映画のメタ的な存在であるキリシマは、学生時代の皆さんの心の中にも居たのではないでしょうか。

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芥