グスコーブドリの伝記
劇場公開日 2012年7月7日
解説
宮沢賢治が1932年に発表した童話を、「銀河鉄道の夜」(85)も手がけた杉井ギサブロー監督がアニメーション映画化。1920年代の冷害にみまわれた東北の森を舞台に、厳しい自然と向き合う青年の姿を描き出す。イーハトーブの森で両親と妹と幸せに暮らしていたグスコーブドリは、森を襲った冷害のため家族を失ってしまう。やがて青年に成長したグスコーブドリは火山局に勤めるようになるが、再び大きな冷害が発生。被害を防ぐためには誰かが犠牲になって火山局に残り、人工的に火山を噴火させなければならず、グスコーブドリがその役割を担う決意をする。
2012年製作/108分/G/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画
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2019年12月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
公開後も評価が低かった作品だが、私は宮沢健治の暗く、寒い冬を基に描いた数々の作品をアニメーションにすると、今作のような作品になるよなあ、と面白く鑑賞した作品。
多様な緑を配色し、グスコー・ブドリの世界を現した作品の風合、その中で、パープル色をグスコー・ブドリ、ネリ兄妹の顔色にしたセンスは素晴らしいと思った。
又、大仰な音楽を多用せず、静かに物語を進めていく空気感も良かったと思う。
グスコー・ブドリの抑制された低音ヴォイス(小栗旬さん)が受け入れられなかったのかなあ、私は良いと思ったけれど。
<何が今作の評価を低くしたかは、何となく分かる気がする。
それは、”宮沢健治の世界”を愛する人々それぞれの想いを映像で表現するのは難しすぎるからであろうと思った作品。>
<2012年7月9日 劇場にて鑑賞>
宮沢賢治映画としては最高傑作と言っていいともいます。脚色も賢治テイスト満載でしたし、大きなテーマ「生」と「死」が抽象的に描かれていてなかなか満足です。
2015年5月1日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
総合60点 ( ストーリー:55点|キャスト:65点|演出:65点|ビジュアル:85点|音楽:75点 )
葉の一枚一枚を描いた精細な描写の絵がまず目に入る。素朴な風景を温かく描く美的な感性が秀でている。その後は懐古的で幻想奇譚的な絵柄になって、「銀河鉄道の夜」を思わせるような情緒溢れる映像世界に引き込まれる。
物語を通して、当時の冷害に苦しんで一家離散もあった東北地方の社会情勢が透けて見える。不幸を経験して人々に助けられ、自己犠牲でみんなのために尽くしたいという主人公と宮沢賢治の主題が伝わる。
しかし物語は抽象的でわかり辛い。いきなり来た人さらいみたいなのは何なのか、家族はどうなっているのか、一人で火山に何が出来るのか、観ていて物語の展開に取り残される。物語の細かなところを観るのではなくて、大まかな物語の流れだけ掴めば、後は雰囲気と主人公の気持ちを感じ取るというのがこの作品なのだろう。確かに独特の幻想奇譚的な情緒と雰囲気はあるのだが、最初から空想科学小説だった「銀河鉄道の夜」とは異なり、このやり方と物語の親和性が必ずしも高くないようにも思う。
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