アルゴのレビュー・感想・評価
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抑えた演技が素敵
ザ・タウンを観て以来、ベン・アフレックが好きになり楽しみにしていた今作。
彼に関しては男女関係のゴシップがかなり多いだけの印象があったのですが、こんなに素敵な俳優さんだったんですね。
実話を基にした昨今の映画の中では『裏切りのサーカス』に匹敵するような良作だと思います。
嘘のような実話の事件をただ淡々と描き、それなのにキャラクターの心情も感じ取れる創り方だったので、劇中一度も飽きることなく観る事が出来ました。
ベン・アフレックを始め、皆とても抑えた演技をしているなーという印象を受けます。
それなのにとてもハラハラさせられます。
120分という尺で時代背景含め全て描ききるのは到底無理な話ですが、物足りなさは一切なかったです。
イランという国の喧騒や雰囲気も垣間見れました。
本編意外で印象に残ったのは息つく間のない流れの中で、アラン・アーキンとジョン・グッドマンのお二方にはとても和んだ事です。
日本でいう下町のおっちゃんの感じがとても出ていました…笑
ベン・アフレックの次回作も楽しみです。
映るが撃たない
何かの映画の予告で見て。しかし劇場版は見逃した。
これだけ銃が画面に映るのにこれだけ銃を撃たない映画を初めて見た。
それでいてこの緊迫感。
空港カウンターのシーンはテンポの良さと緊張感を常に保っていた。
史実なので助かるのはわかってる筈なのに民兵が飛行機を撃ってしまうのではないかと怖々と見ていた。そしてわかってる筈なのに領空を出た所で私もホッとした。
ベン・アフレックの頼れる男感が半端ない。
やはりカンパニー・メンで見せたような役は似合わないのだ。
あくまで頼れる男。
今回は表情もほぼ笑顔なし。
声出して笑うのは救出後だけ。
後は息子と電話で話すときや飛行機内で人質と握手するときに口角を少し上げるのみ。
今回の役は格好よかった。
エンドロールで当時の実際の写真と今回の映画で撮ったシーンを並べて映す。
驚くほど似せて撮っていることに驚く。
画面の質感も70年代っぽい粗い画面で雰囲気を良く出していると思った。
そしてあのクレーンで人を吊るすのも実際の映像を基にしたんだと見せられて、今回の救出が一歩間違えれば戦争の引き金になっていたのだと改めて重要性に気付かされる。
私個人としてはイラクへ逃亡した優しいサヘルの幸せを祈るのみである。
何気に買った本に引き込まれて一気に読んでしまった、様な映画
SF、アクションものの様な派手さは無いが、見る側を引き込むよく出来たストーリー展開。素直に面白いと思いました。他との比較で評価は4.5としてますが5でもいい。
アメリカすげーだろ?っていう
※鑑賞手段は試写会ではなく、飛行機の中で鑑賞。
非常にハラハラドキドキでよかった。成功するのかとか、心の動きとか、主人公の頭の良さなんかも見どころだと思う。
ただ、ものすごくアメリカ人が好きそうな映画。イランでのアメリカ大使館人質事件は実際にあった話だけれど、脚色しすぎてないかしら?と疑ってしまうくらい綺麗に出来上がっている。カナダ大使館のご夫婦や、家政婦さんのところももう少し掘り下げてほしかった。
中間で少しけだるくなった。もう少し全体的にメリハリがあればいい。
ベン・アフレックさん!今まで、ごめんなさい!
ベン・アフレックさん!ごめんなさい!
もう、あなたの事は、大根役者だとか、エロいスッチーがいるプライベートジェットに乗ってたとか、お騒がせセレブでラジー賞も取ったとか、昔はいろいろバカにしましたが、もうしません!『アルゴ』は素晴らしい映画でした!今後は、偉大な監督として称えます!!
実話に基づく映画と言う話だが、ある程度の脚色はしているだろう。事実とは違う部分もあるだろう。だが、彼がこの映画で描きたかった事は明白だ。
CIAが映画の撮影だと称して、人質を救出するという、奇想天外な実話を基に、映画が人の命を救ったと言う事に焦点を合わせている。徹底したリサーチで当時を再現し、緊張感を高めた演出は、映画としての質を高めている。バレたら殺される。コレは映画の大切な要素、演技だ。常に、映画では、俳優は命をかけて演技しているのである。かくして、彼らの大芝居が始まった。
映画クライマックスで、一番乗り気じゃなかった大使館員が、映画の説明をし出すのがいい。緊張感が増すシーンだ。ストーリーボードを見た兵士たちが、まだ見ぬ映画に想いを馳せて、ふざけ合ってるシーンでひと時、心が和む。映画によって敵も味方もなく、心を通わせた瞬間である。彼が描きたかった事は、政治的な思想などではなく、映画によって平和的な解決を生む可能性についてを、訴えたかったのだ。
そして、今回、アカデミー作品賞を受賞した。彼のひたむきな映画愛が評価されたのだ。だが、発表の仕方が悪かった。ホワイトハウスからの生中継で、大統領夫人が読み上げた。コレが政治的意図と解釈され、イランの反感を買った。
イランの主張は、事実と異なる事を指摘している。イラン政府は、この映画『アルゴ』に対抗して、正しい史実を描いた映画の製作を発表した。映画での報復。イスラム教の教えの一つである目には目を、歯には歯を、映画には映画をと言う、基本理念に忠実だ。こう言う戦争なら歓迎である。ベンは、映画が平和的な問題解決になる事を説き、解決にはまだ遠いが、図らずも、平和的な報復を受ける事になった。だがそれは、彼にとって、とても素敵な出来事だと思う。
アメリカ映画なので普通はアメリカの人を応援するけど、この映画ではなんとなくイランの人を応援したくなりました。
米国のアカデミー賞は、昔は信用していたけれど、今はほとんど信用していない。
結局、仲間内の利害関係や、誰が好きか嫌いかレベルの人気投票の結果出てくるもので、純粋に選ぶものではないような気がする。
でも本作は面白かった。こういう社会派のエンタメ系の作品は大好きです。
映画後半の脱出劇は、ハラハラドキドキで、緊張感がすごかった。
本作を見ていたら、パニック映画の「ブラック・ホーク・ダウン」(ソマリアで、米軍の攻撃用ヘリが、敵地のど真ん中で墜落する話)を思いだした。
「ブラック・ホーク・ダウン」では米軍を応援していたけれど、本作はなんとなくイランの人を応援したくなった。
時代が違うけれど、イランの人はえらいと思う。
肝が据わっている。
北朝鮮や中国が米国に対抗しているのは、現体制を守りたいからだけれども、当時のイランの人は違うような気がする。
組織化されたテロリストが、自分の主張、あるいは金のためにやっているわけでもなく、純粋に米国を憎んでいる感じがする。
でなければ、デモの延長で、米国大使館を乗っ取れる訳がない。
他の国ならいざ知らず、米国大使館。
時代が違うので、当時のソ連とのパワーバランスとかいろいろあるだろうけど、普通だったら海兵隊の特殊部隊とか、ネイビーシールズとかが出てきて、皆殺しにされるところ。
悪くすれば、米国が国ごと攻め込んできて侵略される。
米国に常に土下座で、「何卒よろしくお願いします。」と言うしかない国の国民にとっては、よくやったとしか言いようがない。
日本でも、入ったことはないけれど、アメリカ大使館は最も警戒の厳しいところで、周りに日本の警察官が大量にいるし、不法侵入でもしようものなら、問答無用で瞬殺されそうな雰囲気がある。
右翼や左翼の人が、アメリカ大使館の前で抗議しているのも、見たことがない。
ちなみに中国大使館は、なぜか入ったことがあるけど、意外なくらいフレンドリーでびっくりしました。
「アメリカとCIAは世界最大のテロリストだ。」という本作のイランの人のセリフは名言だと思う。
「しくじれば、我々は死ぬんだぞ」「彼も死ぬわ」
映画「アルゴ」(ARGO)(ベン・アフレック監督)から。
イランの革命で、アメリカ大使館から脱出したアメリカ人が
カナダ大使の自宅で身を潜め、出国の機会を狙っているが、
見つかれば当然殺される、そんな現状の中で決行された、
人質救出作戦である。
当初、いろいろな案が提案されるがどれも現実的ではなく、
残ったのは、カナダの映画撮影スタッフに扮して出国する計画。
作品のタイトル「ARGO」も、ニセ脚本の1つ。
他にも「我らの家」「監視」「よき人生」「鎮魂歌」など。
「ARGO」とは、辞書によると「ギリシャ神話」の一部、
「アルゴー船」のことを指すようだ。
(JasonがArgonautsを率いてこの船で遠征し、
金の羊毛(Golden Fleece)を獲得した)とある。
何か、この事件解決を匂わせるような単語だなぁ。
(完全な読み違いの可能性もあるけれど・・(汗))
選んだ一言は、助けに来た主人公が、人質たちに呟く。
「この作戦を絶対成功させる、僕を信じて欲しい」と。
しかし、失敗の可能性が高く、死の恐怖が襲う。
「しくじれば、我々は死ぬんだぞ」と消極的な意見もわかる。
それを納得させたのは「彼も死ぬわ」という女性の台詞。
彼は、自分の命を捨ててまで、私たちを救いにきてくれた。
本気になって「他人の命」を守ろうとしてくれているのよ、
私たちこそ、彼の勇気に感謝し、信じましょう、
そんな気持ちが伝わってきた。
これが実話だというのだから妙に説得力がある台詞である。
P.S.
クリントン大統領がアルゴ作戦の機密扱いを解除
期待して正解だった!
作品賞おめでとうございます
いや、ベンアフレックはすんばらしい。
ARGO、最初は期待ほどではないかなと思ったけれど、どんどんスケールに合ったスクリーンタッチになっていった。穽陥を突こうというARGO作戦の緊迫の決行を緩急で繋ぐ、つまり静謐さを持って描くことで臨場感を増している。ベンの監督の手腕に拍手だ。
だからこそ、監督賞にノミネートすらされなかったのが残念です。
アカデミー賞授賞式での司会、セスマクファーレンのジョーク
「あまりに秘密裏に制作が進められたために監督の名前がわからなかった」
というのには失笑
いろいろなレビューを読ませてもらいましたが、難しい。当然イランが悪、アメリカが善といった描き方になってしまうでしょうね。脚本は凄く面白いんですが。モティーフ自体が映画にするには最高のものだとは思うんですが。中立で描くのが難しい。
それに関して思ったことなんですが、偏見のあるような、ごく一般にこうだ、と決めつけられたように演じられる中東兵をもっとリアリスティックに演じさせれば傾米の風潮を少しは消せたのではないかなと。
まあ、なににせよ
ARGO,fuck yourself!
俳優としてだけでなく監督としても魅了してくれるのは素晴らしい
秀逸な作品 映画のような実話とはこのこと
こんな想像もできない作戦を人命と巨額の資金をかけ、実際に決行したとはなんとも、すごいの一言 当時の本人らは到底自分にはわからない不安と緊張と恐怖の毎日を過ごして、こんなふざけた救出作戦を持ちかけられさらに動揺と不安感が増しただろう 6人の命を託されましてや自分の命も賭けて、丸腰で突拍子もない安全も確定されていない作戦を頼りに敵地に乗り込む 想像しても想像もできない思いで過ごしたことだと思う この事実を映画化したことは国家間の親交や、当事者たちの名誉のためにも素晴らしい
若干の着色や映画的表現はあるだろうが、すごく事実に忠実に作りこまれているのが良く分かる それでも飽きさせない作品に仕上がっているのは素晴らしく秀逸な作品だと思う
ソダーバーグ好きなんだろうな
良いシナリオだっただけに進行にもたつきがあったのが残念。
ソダーバーグ的なアプローチが多数あり、好きなんだろうなぁって思ったが、いっそのこと招き入れたら良かったのに。
史実に忠実に作るかエンターテイメントよりに作るか迷ったとこだろうが、
史実に忠実に作るを優先した映画だと思う。
レッドフォードのスパイゲームのようなスリリング感かつどんでん返し的な演出が個人的にはもうちょっとあったら良かったのになぁて思ってしまいました。
撮影は良かったです。
秀作ですね。
アカデミー賞おめでとうございます。 ベン・アフレック監督
予告編を見て、これは!と思って最新作で見ました。
1月のアルジェリア人質事件もあってとても興味がありました。
デモを起こした一般市民が暴徒化してアメリカ大使館に人が雪崩れこむところから話が展開していきます。
特典映像で脱出した6人とCIAのトニーと人質救出作戦に関わった人の当時の話を聞く事ができて、作品の面白さが倍増しました。
劇中の場面と、当時の写真の画がシンクロしていたのも面白いです。
他のコメントを読んで同意なのが、どうしてもアメリカが善でイランが悪という偏った描き方なのが残念です。
もう少し、中立的な立場で描く事ができればリアルに出来上がったのではと思います。
やっぱり、脚色が大袈裟すぎるとやっぱりフィクションだなぁと萎える所がありました。
優れた映画作品
事実に基づくドラマであるだけでなく、他の方も書かれているとおり、映画人へのオマージュでもあるという面白い作品。
サスペンスとしてもよくできていて、オスカーを獲得したのも頷ける素晴らしい作品でした。
ただし、イラン兵の描き方などにステレオタイプ的な部分もあって、本作品の受賞にイスラム世界から抗議の声が上がったのも理解できます。
その点は、政治的&宗教的な観点を離れて楽しむ映画だと割り切ったほうがよさそうです。
ARGO fuck yourself!
実話ベースで外連味は無く確りした、アカデミー賞好みな作品というと穿ち過ぎか。緊迫感の緩急で繋ぐ手腕はお見事。ただやっぱり地味なため中弛みで、途中やや眠くなる人も居るかも知れない。僕の事だ。
本当にあった話なんですね
見たかったが私の街では上映されなかった。アカデミー賞受賞で上映される事になり見てきました。確かに始まりの画面からお金を使っていないのかB級映画の様に見えました。ところが、段々に物語に引き込まれていき、最後は計画中止になりそうなところをベン演じるCIAのエイージエントが初志貫徹でホワイトハウスを動かし、危機を乗り切りながら脱出させる場面は手に汗をにぎる勢いで素晴らしかった。本当にあった事件だが諸事情から数年後に明らかにされた事に驚きを感じた。アメリカはそういう国なのですね。とにかくこの映画を製作した人たちに拍手を贈りたい。
アルゴ クソ食らえ
祝!本年度アカデミー賞作品賞受賞!
昨年10月の公開時は僕の住んでる町では上映されなかったのだが、有り難いリバイバル上映でようやく見る事が出来た。間もなくレンタルもされるが、そんな事は関係ない。劇場で見たかったのである。
イランのアメリカ大使館員を国外へ脱出させるCIAの奇想天外な作戦。
映画に打って付けのユニークな話だが、これが史実なのは周知の事実。
まさに、事実は小説より奇なり、だ。
確かにこの映画は面白い!別にアカデミー賞を受賞したから言ってる訳ではなく、純粋にそう思えた。
冒頭からグイグイ引き込み、緊張感は失速する事なく、最高のカタルシスへ。特に終盤の空港におけるハラハラドキドキは映画を見る醍醐味に溢れる。
当時のイランの時代背景は複雑だが、冒頭で簡潔に説明し、後はすんなり作品世界に入って行ける。
CIAの活躍はアメリカの正義だけを訴えているのかと思うと、作戦の背景にはアメリカとカナダの協力があり、また、イランの治安の悪化はアメリカの罪である事も忘れずに描き、アメリカの独り善がりの正義ではない点にも好感。
所々挿入される映画ネタやハリウッドへの皮肉や風刺にニヤリ。毒舌映画プロデューサー役のアラン・アーキンと「猿の惑星」で知られる特殊メイクの第一人者ジョン・チェンバース役のジョン・グッドマンのやり取りは、張り詰めた緊張感を一瞬和らげ、メリハリを利かせる。
そして、人命を救う作戦が映画である事が、何より素晴らしい映画讃歌。
エンターテイメント性、社会派メッセージ、映画愛…それらを見事にまとめ上げたベン・アフレック監督の手腕は“賞”に値する。
受賞式で司会のセス・マクファーレンも言っていたが、作戦が極秘だったからアカデミー会員は監督名を知らなかっただけなのだろう、きっと(笑)
面白さは近年のアカデミー賞作品賞受賞作の中では最上。
何はともあれ、アカデミー賞おめでとう、ベン!
次は是非、作品賞・監督賞をW受賞を!
地獄の真ん中で課せられた一世一代のドッキリ大作戦
先週の『ゼロ・ダーク・サーティ』に続き、アメリカとアラブとの厄介なトラブル収拾に右往左往する災難を描いた実話を観賞する流れとなったが、印象も世界観も面白さも全て真逆の迫力に終始、呑み込まれていった。
ソ連のアフガン侵攻問題と共に、アラブ諸国に反米感情を根付かせる根本を生んだ事件のため、やり取りが常に痛々しい。
当時のニュース資料を素材に綿密に再現した映像美のざらついた質感が、服装、時代性etc.全てにおいて、ギャップを感じさせず、展開にリアリズムを一致させる。
そして、緊張の波が押し寄せてくるにもかかわらず、つい笑いそうになってしまう油断こそ今作最大の魅力を形成している。
それは、アメリカ職員という身分を隠すべく、ロケハン中のカナダのB級SF映画製作スタッフやとデッチ上げるという奇想天外なプランに尽きると思う。
欺き通すために用意周到かつ、破れかぶれに仕組まれた計画に映画を選ぶ価値観は、如何にもアメリカらしく、身分や国籍なぞお構いなしに皮肉たっぷりな毒で丸め込む開き直り精神もアメリカらしさが光る。
殺気めいた空気が充満している中、スケールの大きいドッキリ感覚で進むトンデモない格差が、窮地に追い込まれた人間の業を浮き彫りにし、牽引力のエンジンと化すのだ。
事前の情報で作戦が成功したのを承知なのに、常に先の読めない緊迫感に襲われたのは、周りのありとあらゆるイラン国民が敵か味方なのかはおろか、何を考えているのかサッパリ解らないからやと思う。
人種に対する偏見以外の何物でもない不気味なオーラは、イラン・イラク戦争、湾岸戦争etc.衝突する度に誇大化し、9・11で大爆発を生じる。
崩壊し複雑化を辿る影を象徴したのが、『ゼロ・ダーク・サーティ』
その闇の原点に位置するのが今作
2本を照らし合わせて観ると、アメリカを取り巻く渦の深さを伺い知る事ができると思う。
では最後に短歌を一首
『星の灰 フィルムを巻いて 二枚舌 ロケに追われし 客の帰路かな』
by全竜
工作員はギラギラしていない
実際にあった人質解放劇。結果はわかっているのに、息の詰まるような緊迫感、面白かったです。
全部が当時の記録映像のような、時代感のある映像がいい。
華やかな世界にそっと混ぜこまれた極秘作戦、そこまでやるか?のハリウッドとの繋がりにワクワクします。
立案者トニー・メンデス、最初はちょっと違うなんて思ってたけど納得。工作員は気配を隠しギラギラしてないもの、終始冷静で温厚に演じるベン・アフレックが良かったです。
リミットまでのカウントダウンのように描かれる、過激派集団の米国人探査活動。予告編の細かい縦線の書類の意味がよくわかった、情報に迫ってゆく過程にも二転三転する脱出劇にもドキドキでした。
時代を忠実に再現した佳作。「ミュンヘン」と合わせてどうぞ
飛行機の機内で見ました。アカデミー賞関係で話題になってる作品なので、期待しつつ。
映画全体の雰囲気としては、以前スピルバーグが撮った「ミュンヘン」に近く、70年代、革命後のイランで起こったアメリカ大使館人質事件と、それに対するCIAの動きをていねいに描いています。リアルタイムで認識していた事件ではないので、事件の背景もよく知りませんでしたが、一通りの解説がしっかりされているので、時代背景がわからなくてもちゃんと理解できます。しかし、まさかこんな作戦が実行されていたとは驚きました。
映画の雰囲気も70年代の実写そのままといった雰囲気で作られており、非常におもしろかったです。最後の逃亡劇は本当にハラハラで、あそこまでではないにしても、相当な緊張感だったことは想定できます。主役のベン・アフレックの役柄もよく、娯楽作としても十分楽しめると思います。
ただ、個人的には「ミュンヘン」のほうが好きだったなあということもあり、やや辛めの点数としました。
70年代B級映画風味の傑作
やっと観れた。何とも70年代のB級映画の匂いをぷんぷんさせる映画だった。実際に70年代に作られてるなら知る人ぞ知る傑作、というところになるんだろうけども、実際お金を賭けて時代を再現し、結果、大ヒットという訳ではなく、そのような結果になったみたいなので、なんだか個人趣味のエンターテイメントみたいで凄い。
実際、もっといろんなものを盛り込もうと思えばできそうだけど、見事脱出しか描いてない。予告編で観るよりも、実に単純なつくりで、でも、あれだけハラハラしたのは最近あまりなかったな。しかしまあ、こういう映画がベン・アフレックでなかったらどのような公開のされ方だったんだろう、という意味でも、現代の映画らしい映画は俳優からしか生み出せない気がする。がんばれ。
ベンアフレックが良い
イランは、紀元前から誇り高いオリエントの大帝国だった。
1979年のイスラム革命によって 宗教上の指導者、ホメイニ師が国の最高権力を握り、イスラム共和国を樹立、真のイランの誇りを取り戻した。
それまでのバフラビ政権は、米国の傀儡政権だった。
イランは、石油ではOPEC第2位の石油産出国、天然ガスもロシアに続いて世界第2位の埋蔵量を持つ。英国も米国も、イランという宝の山を確保しようと イランに介入し続けてきた。この1979年イラン革命で、イラン政府は、米国のパペットだった逃亡中のバフラビ皇帝の身柄引渡しを要求したが、当時のカーター米大統領は拒否、イランに対して在米資産を接収し、国交断絶、経済制裁を実施した。その結果、怒ったイラン国民と新政府によって、反米をスローガンに大規模な反米デモストレーションが各地で起きた。怒り暴徒化した市民は、テヘランのアメリカ大使館を占拠して、52人のアメリカ人の外交官を人質にとる。
このとき、ドサクサの中で6人の職員が大使館を脱出し、カナダ大使公邸に逃げ込み保護される。
映画「アルゴ」は、ここから始まる。この出来事について米国側に正義はない。イラン政権による米国大使館占拠は、米国の利益のためにイランという国を蹂躙してきた米国の国策による結果のひとつにすぎない。そして犠牲者はいつも国からきり捨てられた 無力で一介の市民だ。
ストーリーは
カナダ大使公邸の地下に匿われた6人のアメリカ人大使館職員は、高まる反米の社会状況の中で、外に出る事も、封鎖された空港から脱出する事もできない。すべてのアメリカ人は、スパイとみなされている。イラン革命の象徴のように、街頭には処刑されたアメリカ人が、クレーンで吊るされている。空港ではアメリカで教育を受けたイラン人がチェックをして アメリカンアクセントをもつ外国人はすべて捕らえられている。
CIA工作本部技術部のトニー メンデスは、6人の大使館職員をカナダ大使公邸から脱出させるための策を考える。「アルゴ」という架空のSF映画を撮影することにして、映画監督としてイランに入国、首尾良く6人と合流し、全員を、イランから脱出させた。CIAの秘密工作だったので、事実は公表されずにいたという。これを映画化したも
ベン アフレックが監督、主演している。
この映画では、ベン アフレック以外に目立った役者は居ない。美男美女も出て来ない。名前を出しても 誰が誰かわからないから、出演キャストは省く。
ベン アフレックは40歳。バークレー生まれで、ハーバート大学卒の母親をもちリベラルな家庭で育つ。8歳の時から近所に同年のマット デーモンが住んで居て、今に至るまでずっと親友。ふたりで共同で映画制作会社ライブ ネットを設立して映画の脚本、製作を手がけている。社会活動もリベラリストとして活発に行っている。
「グッドウィルハンテイング旅立ち」は、この二人で脚本から製作、主演まで共同製作したものだが、アカデミー脚本賞、助演男優勝、ゴールデン グローブをもらっている。当時、無名だったマット デーモンは、天才的な頭脳を持った掃除夫、ベン アフレックは 彼を見出す心理学者を好演している。とても印象深い映画だ。
2001年「パールハーバー」では、ベン アフレックは恋人を寝取られる純真な青年を演じ、2009年では「消されたヘッドライン」で、たちの悪い国会議員を主演している。
でも、この「アルゴ」が、ベン アフレックの主演作のなかで一番良い。口数が少なく、ボサーとしているようで無造作に見えるが CIA工作員として緻密に計算された動きで確実を手に入れる。カナダ大使公邸の地下で陽の光を浴びることがでいないまま数ヶ月くすぶっている。その6人が6様に絶望感に覆われ不安と不信でいらだっている時 ばらばらになった6人の気持ちをひとつにまとめる度量がある。彼が少ない言葉で6人から全幅の信頼を獲得する経過は、まるで心理劇をみているようだ。迫力がある。
米国人を見つけて、公衆の前で断罪 処刑しろと 目の色をかえて米国人狩りをする群集の只中を通過するシーンや 空港でのパスポートのチェックなど、恐怖で心臓が口から飛び出てきそうなハラハラドキドキのシーンがたくさんある。
結果として、イラン革命を評価するかどうかに関係なく 映画としてCIAに救出された6人に共感できる秀作に出来上がっている。
ベン アフレックは こんないハンサムだったのか。彼の出演作を沢山見てきているが 間の抜けた顔とは感じていても、一度も良い顔だと思ったことが無かったが、今回、前髪をボサボサに下げて、ヒゲも口の周りに伸び放題にしてみると、画面で大写しになった顔をどこから見てもハンサムなのに、びっくりした。この時代、1970年代は思い返してみると みな長髪、ひげ面が主流だったんだな。いま見ると 人によっては、むさ苦しいだけだが ベン アフレックの長髪、ひげ面は高感度100%。今後もこれで行って貰いたい。
イラン国民の悲願だった米国傀儡政権が打倒されたあとも、イランは 米国を中心とする国際社会から、経済制裁や核疑惑を受け、厳しい道を歩んでいる。2005年から保守派のマフムド アクマデイネジャードが大統領になって、強権を主導しているが、米国はイラン政権を揺るがす反政府運動を裏で組織して内政干渉を繰り返している。
イランの核開発について、イランが核兵器を持っていないことは、米国CIAの調査でも IAEAの調査でも明確になっているが、政治の駆け引きのために、明確にせず核兵器を持っているような扱いをして、イランの核が国際社会の安全を脅かしているような米国主導の宣伝ばかりが繰り返されてきた。
しかし、米国の経済不況と国内の失業者など深刻な問題で国際社会への影響力が少なくなるに連れて、今後はこれまでとは違った状況になってくる。イラクは力を蓄えて、今後はイスラム国家の指導的役割を与えられ、オピニオンリーダーとしてイスラム社会を拡大していくだろう。そして美しいペルシャ語を語る人々が、紀元前から営んできた過去の栄光を取り戻していくことだろう。
いろんな事を考えさせる、良い映画だ。
全214件中、161~180件目を表示