アウトレイジ

ALLTIME BEST

劇場公開日:2010年6月12日

アウトレイジ

解説・あらすじ

「その男、凶暴につき」「ソナチネ」「HANA-BI」といった暴力映画で知られる北野武監督が原点回帰し、ヤクザ同士の熾烈な権力闘争を描いた第15作。関東最大の暴力団山王会の若頭・加藤は直参の池元組組長・池元に、池元と付き合いのある村瀬組を締めるよう苦言を呈する。そこで池元は配下の大友組組長・大友に、その役目を任せるが……。大友にビートたけし、加藤に三浦友和のほか、椎名桔平、加瀬亮、國村隼、石橋蓮司、小日向文世、北村総一朗ら豪華キャストが集結。

2010年製作/109分/R15+/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画、オフィス北野
劇場公開日:2010年6月12日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第63回 カンヌ国際映画祭(2010年)

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コンペティション部門
出品作品 北野武
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(C)2010「アウトレイジ」製作委員会

映画レビュー

4.5 全員、悪人。全員、無様。

2012年9月7日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

怖い

興奮

「おまえ、親の言うことがきけないのかっ」
いいトシしたオヤジが、これまたいいトシしたオヤジを怒鳴り付ける。こんなセリフを今どき力強く言い切れるのは、世の中広しといえども…彼らの世界だけ、かもしれない。
こんなセリフを筆頭に、彼らはとにかくカッコが悪い。かつてのやくざ映画は、組織の中で生きる哀しみや、逆境の中でもスジを貫くカッコイイ生きざまを描き、観客の支持を得てきたはずだ。それなのに、本作に登場する輩は、誰ひとりとしてカッコよくない。個人的に肩入れしながら観ていたオオトモ(ビートたけし)の腹心・ミズノ(椎名桔平)も、逃げる直前、わざわざイレズミを見せ付けるように女を抱き始めた時点で興ざめ。冷酷な金庫番・イトウ(加瀬亮)でさえ、ラストでプールサイドに佇む姿は、どうも間が抜けている。上を蹴落として昇り詰めた末に、ジャージ姿で踏ん反り返る若頭カトウ(三浦義和)は言わずもがな。さんざん痛い思いをするダメ組長ムラセ(石橋蓮司)も、さんざんがっつく組長イケモト(國村隼)も、全然かっこよくない。しかも、ことごとく報われない。自分はこの映画の住人じゃなくて、よかった…と思うことしきりだった。
…しかし。登場人物にまったく共感できないにもかかわらず、こんなに引き付けられた映画は久しぶりだった。観終わったときは、心底ぐったりした。安易な共感は、映画に不要だ。そんなことを、あらため
に不要だ。そんなことを、あらためて発見した。
…と、ふと考える。映画に共感が不要なら、私はこの映画になぜ引き付けられるのか?
共感できないと言いながらも、私は何度となくクスリと笑い、何て痛そうなんだと顔をしかめた。…それって、ある意味、共感ってヤツなのか?
…そこで、あらためて。遠い存在に思える人が、ふと近しい存在に思える。(身近と思っていた存在の、未知の側面を垣間見るような、逆も然り。)そんな感覚を、私は映画に求めているのかも知れない。
久々に、大発見の映画に当たった。

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cma

4.0 豪華キャストにバカヤロで終わらせる今年屈指の1本

2010年11月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

幸せ

ネタバレ! クリックして本文を読む
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しんざん

4.0 今一度、観直すべき逸品

2021年9月20日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

北野武監督にとって、15作目となる「アウトレイジ」。
「その男、凶暴につき」「ソナチネ」「HANA-BI」といったバイオレンス映画に定評があり、筆者も「HANA-BI」は大好きだが、やはり「アウトレイジ」は今一度しっかりと観直すべき作品である。
三浦友和や加瀬亮をヤクザ役に起用とする映画人は、これまでいそうでいなかった。
キャスティングの妙、テンポの良い脚本も含め、大人が楽しめるバイオレンス映画という珍しい立ち位置を確立することに成功した希有な作品。個人的に、続編よりもこれがお気に入り。

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大塚史貴

4.5 【90.8】アウトレイジ 映画レビュー

2025年9月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

作品の完成度
北野監督が描くバイオレンスの集大成。登場人物の誰もが理不尽な暴力に身を投じ、その連鎖が止めどなく続く。徹底した残酷描写と、ヤクザ社会の虚無的な本質を炙り出す演出が秀逸。台詞の多くは罵倒と恫喝で構成され、感情の起伏を最小限に抑えた演出が、登場人物たちの非人間性を際立たせる。物語の結末は、権力欲に憑りつかれた男たちの末路を冷徹に描き出し、観客に深い虚無感を残す。単なる娯楽としての暴力描写に留まらず、社会の暗部を深くえぐり取る芸術性を持つ作品。
監督・演出・編集
監督は北野武。ヤクザの抗争という古典的な題材を、現代的な視点で再構築。暴力シーンは抑制されたカット割りで、その残酷さを際立たせる。特に、歯医者での拷問シーンや、ビリヤード場での惨殺シーンは、観客の生理的な嫌悪感を煽りつつ、目を背けられないほどの吸引力を持つ。台詞回しは、北野映画の特徴である「間」を多用し、登場人物の緊迫した心理状態を表現。編集は綿密に計算されており、緩急のついたリズムで物語が進行。緊迫したシーンの直後に、ヤクザたちの日常を淡々と描くことで、暴力の常態化を強調。北野監督の演出手腕が遺憾なく発揮された、圧倒的な完成度。
キャスティング・役者の演技
• ビートたけし(大友)
ヤクザ組織「大友組」の組長。冷徹で威圧的なヤクザの顔と、時に人間的な感情を覗かせる複雑な役柄。台詞のほとんどが罵倒語だが、その一言一言に重みがあり、凄みをきかせた演技が光る。特に、裏切りによって地位を失い、絶望的な状況に追い込まれていく様は圧巻。表情の変化を最小限に抑えつつ、目の奥に宿る狂気や哀しみを表現する演技は、監督としての顔とは異なる、役者としての彼の真骨頂。
• 三浦友和(加藤)
「山王会」の若頭。表向きは温厚で理知的な人物だが、裏では狡猾な策略家。常に冷静沈着な表情を保ちながら、目的のためには手段を選ばない冷酷さを巧みに演じ分ける。三浦の持つ清潔なイメージが、役柄の持つ二面性をより際立たせ、観客に強い印象を残す。特に、大友を陥れるための周到な計画を実行していくシーンは、彼の演技力の高さを物語る。
• 加瀬亮(石原)
大友組の若頭。知的で寡黙な男だが、大友に忠実な側面と、己の利益を追求する側面を持つ。冷静沈着な佇まいと、時折見せる内なる狂気が混在する演技は、この作品の緊張感を高める上で重要な役割を果たす。特に、大友組の内部抗争が激化するにつれて、彼の人間性が剥き出しになっていく様は、観客の感情を揺さぶる。
• 椎名桔平(水野)
池元組の若頭。裏切りと策略を繰り返すヤクザ社会において、常に自分の立ち位置を計算し、生き残ろうと画策する男。軽薄で口達者な側面と、権力欲に突き動かされる危うさを同時に表現。椎名桔平の持つシャープなイメージが、役柄の持つ狡猾さを際立たせる。物語のキーマンとして、その存在感は圧倒的。
• 國村隼(池元)
山王会傘下の組「池元組」の組長。組織の板挟みとなり、右往左往する哀れな男。威厳と臆病さ、その両方を持ち合わせた人間的なヤクザ像を熱演。特に、上層部からの圧力に怯え、部下である大友に八つ当たりする姿は、ヤクザ社会の理不尽さを象徴している。
脚本・ストーリー
北野武監督によるオリジナル脚本。ヤクザ組織の内部抗争を冷徹なリアリズムで描く。登場人物の誰もが自己の欲望のために動き、裏切りが連鎖していく。勧善懲悪の物語ではなく、誰も救われない結末が、この世界の虚無感を際立たせる。物語は常に不穏な空気に満ちており、観客は登場人物たちの末路を固唾をのんで見守ることになる。過剰な説明を排除し、観客に想像の余地を与える脚本スタイルも、北野映画の特徴。
映像・美術衣装
全編を通して、無機質で冷たいトーンの映像美が支配的。ヤクザ事務所や飲み屋、車内といった閉鎖的な空間が多く、登場人物たちの抑圧された心理状態を表現。美術セットは無駄を排し、リアリティを追求。ヤクザたちの衣装は、スーツや和服など、その地位やキャラクター性を反映したものが多く、視覚的にも楽しめる。特に、高層ビルから見下ろす街並みのショットは、ヤクザ社会の頂点と底辺を対比させ、物語のテーマを象徴的に示唆。
音楽
主題歌は特になし。音楽は全編を通して最小限に抑えられており、台詞や効果音、沈黙が物語を彩る。久石譲が手掛けた、ミニマルで不穏な楽曲が、映像と相まって緊張感を高める。特に、ラストシーンで流れる静かなピアノ曲は、物語の虚無感を際立たせ、観客に深い余韻を残す。
受賞歴
第63回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品。北野武監督の過去作品同様、国際的な評価を獲得。
作品
監督 北野武 127×0.715 90.8
編集
主演 ビートたけしS9×3
助演 椎名桔平 S10
脚本・ストーリー 北野武 A9×7
撮影・映像 柳島克己 S10
美術・衣装 美術
磯田典宏
衣装デザイン
黒澤和子 A9
音楽 鈴木慶一 B8

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honey

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