007 慰めの報酬 : 特集
スパイ・アクションといえば、やはりこれ。ジェームズ・ボンドが活躍するシリーズ最新作「007/慰めの報酬」がいよいよ日本公開となる。全米では、22作目にしてシリーズ最高の累計興行収入を記録した本作は、前作「カジノ・ロワイヤル」で新たなジェームズ・ボンド像を築き上げて絶賛されたダニエル・クレイグが再びボンドに扮し、前作以上のドラマとアクションで観客をスクリーンに惹きつけてくれる。そんな本作の見どころを解説。また、メガホンを取ったマーク・フォースター監督のインタビューも同時にお届けする。(文・構成:平田裕介)
「007/慰めの報酬」お正月のモヤモヤを吹き飛ばす真打ち登場!
■アクション、ドラマ、サスペンス…3拍子揃ったエンタテインメント大作
お正月映画といえば、超がつくほどの大作や話題作がドッカーンとブチ上げられるもの。ところが、昨年末に正月映画第1弾として公開されたのは、キアヌ・リーブス主演で50年代の傑作SFをリメイクした「地球が静止する日」、ディズニー/ピクサーの最新3DCGアニメーション「ウォーリー」、人気深夜TVドラマの最初にして最後の劇場版「特命係長 只野仁/最後の劇場版」など、「ちょいとばかり地味だな……」と思わざるをえないものばかり。正月映画全体の興行成績も昨年と横ばいといった感じで、どうもはじけきれていないモヤモヤっとした状態が続いている。
しかし、そんなモヤモヤを吹き飛ばしてくれそうな“アクション、ドラマ、サスペンス”の3拍子揃った作品が、09年明けの正月映画第2弾として放たれる! それが、「007/カジノ・ロワイヤル」に続いてダニエル・クレイグが“6代目ボンド”を演じる「007/慰めの報酬」だ。
■前作から続く物語は、かつてないアクションがてんこ盛り!
謎の男ル・シッフルが目論む、全世界のテロ組織への資金供給。それを阻止すべく、財務相から送られた美女ヴェスパー・リンド、CIAエージェントのフィリックス・レイターと共に激闘を繰り広げた、英情報局秘密情報部MI6所属の諜報員“007”ことジェームズ・ボンド。だが、愛し合う仲となったヴェスパーに裏切られたうえに死なれてしまい、彼女を操るミスター・ホワイトをはじめとする黒幕の存在が浮かび上がる……。
今回はそんな衝撃的幕切れだった前作の1時間後(!)から物語がスタート、ホワイトの背後を追うボンドがさらなる巨悪と世界を震撼させる陰謀に対峙する。
シリーズ初の続編であるのに加え、何といっても目を見張るのが“地・水・風・火”の地球4大要素をモチーフにしたアクションの数々。断崖絶壁の曲がりくねった道を激走するカーチェイス、イタリアはシエナの古い街並みを屋根伝いに跳躍&疾走する人間追撃戦は「地」、パナマ湾で何隻ものボートが猛スピードで入り乱れる水上での大混戦は「水」、オンボロ輸送機で戦闘機と武装ヘリに挑むメキシコ上空での空中戦は「空」。そして砂漠に建つホテルが爆発炎上するなかで肉弾戦が展開するクライマックスは「火」と、撮影時には顔面に8針を縫うほどのケガを負ったというボンド=クレイグの痛みが伝わってくるような肉体重視のものから、さまざまなマシンとシチュエーションを駆使した大掛かりなものまで、あのジェイソン・ボーンが青二才に思えてしまうような怒涛の見せ場が連続で、さすがジェームズ・ボンド。
また、監督を「チョコレート」「君のためなら千回でも」のマーク・フォースター、脚本を「クラッシュ」「告発のとき」のポール・ハギスというドラマの名手が担当。これが功を奏し、亡きヴェスパーの復讐という自己の感情と世界の均衡を守る諜報員の職務の間で揺れ動く、スーパーヒーローではない人間としてのボンドの心理的葛藤、それを通しての成長をリアルに描き出している点も目が離せない。
激しい怒りと悲しみに駆られたボンドに、復讐は“慰め”をもたらすのか? その行方を劇場で見守りたい!