フランスとイギリスの合作映画だが、当時の背景が非常によく作られていて見事だった。
そもそもあるものと、当時あったものの融合が見事だった。
お金を掛けなければ作れないものと、そもそもあるものとが一体化している。
さて、
この物語の表現方法は少し変わっている。
主人公ブライオニーによって最後に明かされるのが、現実と小説の差だった。
それが物語に挿入されることで、頭に「?」が起きる。
それが彼女が姉のセシーリアを訪問したこととエンドロール直前のシーンだ。
つぐない
それは決して消えることのなかったブライオニーの慚愧の念
これは、13歳の女子のあるあるかもしれない。
彼女はロビーが好きだった。
川に飛び込んでロビーが助けてくれるかどうかを試すようなことをする。
ロビーはまだ少々若すぎたのだろう。
ブライオニーの行為に対して本気で怒った。
ブライオニーは、その行為が逆効果だったことにひどく不満だっただろう。
その後に見た庭でのロビーとセシーリアのやり取りを、ブライオニーには何が起きたのか理解できなかったが、セシーリアがひどく怒っていたように見えた。
加えて図書室で見てしまった二人の行為。
きっとブライオニーには単純なるショックだけがあって、見たものを決して解釈しようとしない思考やその他の思考が葛藤のように拮抗したままだったに違いない。
そしてあの事件だ。
まず双子がいなくなったことでみんな総出で探し始めた。
ブライオニーは草むらにいる人を発見、男はすぐに逃げたが、うずくまっていたのがローラだった。
彼女は「手で顔をふさがれた」といったことで、男にレイプされたと信じた。
その男は「ロビー」だったと証言した。
証言はゆるぎないもので、ブライオニーは頑なに「見た」と主張したことで、ロビーは逮捕された。
5年の刑期
それは物語のずっと後で明かされる。
彼の逮捕の直後に戦争が始まった。
戦争は実際の出来事だが、象徴でもある。
それは、あの事件によって平穏だった家が解散状態に陥ったことを象徴している。
双子を発見し連れ戻したロビーが、その前にローラをレイプしたなど考えようもないが、彼女の証言によって刑罰が確定した。
見た。
このような少女の言動は、日常でもよくあるような気がするし、個人的な記憶にもある。
すべてを破壊した言葉
彼女の証言はロビーに対してだけ効力があったのではなく、彼の母、両親、そしてセシーリア、その他使用人等々、すべての関係者に働いてしまった。
特にローラと後の結婚相手になったポールは、この事件に介入などできず、沈黙を守るしかなかった。
彼らは愛し合っていたのだ。
双子がいなくなったどさくさにまぎれた密会だったのだ。
ローラの結婚式
何故かブライオニーがそこにいたが、それも彼女の小説だろう。
どうしてもセシーリアに謝罪したかった。
ロビーに謝罪したかった。
でも、行けなかった。
なぜなら、現実ではロビーが戦死し、その後すぐにセシーリアも防空壕が水で責められ死亡したからだ。
自叙伝ではなく真実を小説にしたのは、破壊してしまった二人の幸せを物語の中で叶えてあげたいと思ったから。
アルツハイマーを発症した現在老女になったブライオニー
21作目の小説は、書かなければならなかったものだった。
書くことが、彼女にとっての「つくない」なのだろう。
正直に書くこと。
正直な心
自分の思いを正直に言えることは、極稀のように思う。
人は概ね違うことを言葉にしているように思う。
それは自分の気持ちについてだ。
ブライオニーのように言うのも非常に稀だ。
そして言っていいことと悪いことの良し悪しは、すぐにわかってくる。
ブライオニーは確信犯だった。
それが招いた破壊までは予想していなかった。
起きてしまったことを撤回もしなかった。
それは当時のブライオニーの偏った強い思いがあったからだろう。
しかし、
私は悪くないという思考が、徐々に大きな過ちだったと18歳になって初めて痛感したが、時すでに遅しだった。
それ以後は、懺悔の日々だったのだろう。
老女になり、21作目でようやく書き切ることができた「つぐない」は、表面上セシーリアとロビーに捧げたものだが、おそらくその根底にあるのは、ブライオニー自身への赦しなのかもしれない。