GONIN

劇場公開日:1995年9月23日

解説

バブル崩壊で世間からはみ出してしまった五人の男たちが仕組んだ強盗計画の顛末をスタイリッシュな映像で描くバイオレンス・アクション。監督・脚本は今回は名美と村木の愛の物語を離れた「夜がまた来る」の石井隆。撮影は石井とのコンビが冴える佐々木原保志。五人に紛するのは、「プ」の佐藤浩市、「RAMPO」の本木雅弘、「ゴト師株式会社スペシャル」の根津甚八、「EAST MEETS WEST」の竹中直人、「新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争」の椎名桔平。LD化の際再編集され119分の<特別版>が製作された。また2007年には121分の<REAL EDITION>が製作されている。

1995年製作/109分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1995年9月23日

あらすじ

かつてはヤングエグゼクティブとして雑誌に紹介されたこともあったディスコのオーナー・万代は、バブル崩壊で多額の借金を背負い、暴力団大越組の借金の取り立てに苦しんでいた。ある夜、万代は新宿のバッティングセンターで、サラリーマン風の男・萩原に執拗にからまれ、反対に殴りつけると、萩原は呆気なく倒れて泣き出した。リストラで会社を解雇された萩原は、職を求めて夜の街をさすらっていたのだ。怪我をした萩原を車に乗せて店に帰った万代を待っていたのは、大越組組員による嫌がらせだった。調子に乗って暴れる組員を、美貌の青年・三屋がナイフで刺した。三屋はホモ男を恐喝して刑務所に入ったことがあり、それが万代の密告によるものと思い込み付け狙っていたのだ。三屋の誤解をとき、万代は一緒に仕事をしないかと持ちかける。万代は、大越組の金庫に眠っている大金強奪を計画し、仲間を探している最中だった。万代に憎しみとともに憧れも抱いていた三屋はそれを承諾する。翌日、万代は借金の返済を延ばしてくれるよう、大越組に頼みに行った。そこへ組員の金髪の青年・ジミーが、女の借金のことで文句を言いにきて幹部と大もめになってしまう。ジミーは、タイ人の売春婦ナミィーのヒモだった。その夜、ジミーを探しに行ったバーで、万代は用心棒をしている刑務所帰りの元刑事・氷頭に出会う。氷頭は万代が現金強奪を計画した時から、仲間にしようと思っていた男だった。事務所の内部に詳しいジミーも仲間に引き込んで、打ち合わせを行っているところへ萩原が現れ、なかば強引に仲間入りし、計画は五人で遂行される。決して思い通りには運ばなかったものの、まんまと大金を手に入れた五人。だが大越組は、大金と一緒にナミィーのパスポートが盗まれていたことに気づき、ナミィーと一緒にタイ逃亡を企てていたジミーを拉致、拷問する。すぐに、主犯が万代らしいことを突き止めた大越らは、万代のディスコを襲撃するなど報復を開始。総長が雇った殺し屋の京谷と柴田も、精神に異常をきたし自らの手で一家を惨殺してしまった荻原や、氷頭の別れた妻子を次々に始末していくのであった。いよいよ自分たちの身に危機が迫っていることを知った万代と三屋は、万代の故郷・飯田へ身を隠そうとするが、京谷たちに逃亡途中で発見され、万代が殺されてしまう。万代との間に愛が芽生え始めていた三屋は、氷頭と捨て身の覚悟で大越組を襲撃。氷頭は命を落とすが、京谷以外皆殺しに成功する。こうして三屋は、金と万代の遺骨を持って再び飯田へと長距離バスで向かうが、警察に捕まったと思われていた京谷が現れ、バスの車中で相討ち。命を落とすのだった。

全文を読む(ネタバレを含む場合あり)

スタッフ・キャスト

全てのスタッフ・キャストを見る

関連ニュース

関連ニュースをもっと読む

フォトギャラリー

映画レビュー

4.0オープニングだけで割と満足できる映画

2025年6月19日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

興奮

ドキドキ

包み隠さずそのまんまな「男たちの挽歌」(86年)のオマージュから始まる本作ですが、「男たちの挽歌」が観る者の心を熱く奮い立たせる作品であるのに対して、本作は観る者の心を冷たく震えさせるのです。

ブルセラ、援交、オヤジ狩り…コギャルにチーマー、サリン事件…ノーパンしゃぶしゃぶ汚職事件!と、当時は電車で数時間かければ東京へ日帰りできる距離の田舎に住んでいた私ですが、深夜の情報番組などでそれらのルポを見ては、東京とは怖ろしい所だとビビり散らかしていたのです。渋谷になど行こうものなら秒で身包み剥がされポアされると思っていたのでよほどの事がない限り行きませんでした。
しかし田舎には田舎で半歩時代遅れのヤンキーがそこかしこにおり、靴流通センターで買ったダンロップの運動靴を履いているのはダサい事なのでは?と薄々感じはじめても、AirMaxやポンプフューリーなどのハイテクスニーカーを履いてウッカリ目を付けられようものならどんなヤキを入れられるか分かったものではないので、コンバースオールスターかナイキのナイロンコルテッツを愛用していた私。というかそもそもスニーカーに数万円なんて到底出せなかったのですが、それでもAirMaxを履いて学校にくる子は居た訳で、そんな子のAirMaxは盗難にあったりAirの部分に穴を開けられパンクしていたりと…、まだまだ世間知らずな鼻たれではあったものの酷く人心が荒んでいるのを肌身で感じていたあの頃……。

本作がAirMax狩りを描いた映画という訳では全然ないのですが、私が上記のような物事を通して感じていたピリついて暗澹たる空気が漂っていた平成初期の日本。そのくせ音楽やビデオゲーム業界、プロレス・格闘技興行は隆盛を極めていましたが、その景気の良さにもどこかヤケクソ気味の虚勢の臭いがしたあの時代……。
映画はタイムカプセルの様な物だとよく言いますが、この作品にはそんなあの頃の日本の雰囲気が真空保存されているのです。

巨額の借金を背負い暴力団事務所から現金強奪を企てるディスコ店オーナーの佐藤浩市。佐藤浩市を強請ろうと近づいてくる妖艶な本木雅弘。リストラされた事を家族に打ち明けられぬまま街をさまよう元サラリーマンの竹中直人。金髪パンチドランカーの椎名桔平。自身の汚職で妻子含め全てを失い、ボッタくりスナックの用心棒に身をやつす元刑事の根津甚八―。
根津甚八は惜しくも平成28年(2016年)に亡くなられてしまいましたが、今もなお活躍を続ける俳優たちの30年前の姿が確認できるのも本作の見所なのです。
暴力団組長の永島敏行に若頭の鶴見辰吾などはそれまで演じてきた役のイメージとはかけ離れた役を演じている訳ですが、そのハマり具合は怖いくらいです。特に『首でも吊るか?あ?足引っ張ってやっぞ…?』と佐藤浩市を恫喝する鶴見辰吾の静かな迫力は、これがかつて山田太一脚本の名作ドラマ「早春スケッチブック」(83年)で大学受験を間近に控えた気弱で繊細な少年を演じていたあの子なのか?と、その変貌ぶりと時の流れの残酷さに涙が出るのです。
そして現金強奪を成功させた佐藤浩市たちを追う殺し屋の ビートたけし と 木村一八。特にビートたけしは映画公開の前年である平成6年(1994年)に、あの原付事故を起こした後で、片方の目にはガーゼが貼り付けられたままなのです。そしてそれが演じる役の異常性と不気味さを際立たせる小道具として十二分に機能しています。他にも本当にチョイ役ですが室田日出男、不破万作、栗山千明などを確認できる本作。

物語の筋立て自体はありがちで単純であり、登場人物たちに映画本編で描かれていること以前にどの様な経緯があったのかなどは断片的な情報でなんとなく察する程度にしか描かれていません。そのくせ殺し屋の ビートたけし の過去だけはトンでもないシチュエーションで朗々と語られるのですが、まぁ普通の人はあまり感情移入できないであろう登場人物たちによる陰惨な物語を淡々と眺めさせられる映画です。
そんな観客との間に冷たい距離を置く作品であるにもかかわらず、この映画の登場人物たちは観る者に強烈な印象を残すのです。
この人物はこういう性格ですというような事を言葉で語らない分、多少記号的でわかり易く誇張された感じではあるのですが、それを演じる役者たちは実に様になって格好良く、その存在感には説得力と迫力があります。これ程冷たく陰惨な物語なのに、何故か格好いい雰囲気のある映画なのですが、それはやはり演者の力量と魅力、そしてそれを遺憾なく引き出した監督の手腕に因るところが大きのだと思うのです。

そして本作のメインテーマがまた秀逸で、このメインテーマをバックに始まるオープニングがこれまたいいのです。この良さは2回目以降の鑑賞で本領を発揮すると思うのですが、この曲にのってキャストが次々クレジットさていくだけで私の心の中では歓声が湧き起こります。オープニングでキャストがクレジットされるだけでほぼ絶頂を迎えてしまう作品は、私の場合は他にNHK版の向田邦子脚本ドラマ「阿修羅のごとく」(79~80)があるのですが、この両作品のオープニングで流れる楽曲は改めて並べてみるとなんとなく似ていますね。まぁそれはともかく、オープニングのクレジットだけで割と満足できてしまうのも当然作品の良さがあってこそ。

何を分かり切った事を…と思う方も多いとは思うのですが、日本にもいい役者が沢山いるなぁと映画の雰囲気とはかけ離れて、ほのぼのとそんな感想を抱いてしまう。そんな映画なのです。

コメントする 1件)
共感した! 7件)
モアイ

1.0もっくん美しい。竹中さんの怪演w/椎名さん金髪が見所

2024年5月5日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:TV地上波

悲しい

怖い

日本のヤクザものあんますきじゃないので。竹中さんのシーンはゾッとする。あ、一瞬の栗山千明 子役

コメントする (0件)
共感した! 0件)
たらちゃん

4.5最高のバイオレンス映画

2024年4月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

タランティーノやロバートロドリゲス、デ・パルマ、スコセッシ等と並ぶ日本のバイオレンス映画の名監督の傑作。30年ぐらい前の作品だが、関係なく面白い。
石井隆監督はもう少し世界で知られてもいい監督だったと思う。
それも運なのかもしれない。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
ルイ

3.5なんかすごいメンバーなんだけど・・・

2024年3月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

怖い

興奮

セリフがよく聞き取れないシーンが多くて内容がよく分からなかったものの演者がそれぞれ凄すぎて雰囲気だけで持ってかれちゃう。佐藤浩市、本木雅弘、根津甚八、竹中直人、椎名桔平の豪華メンバーにたけしひとりで持って言っちゃう凄さ。改めて俳優の凄さを見せつけられた。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
mark108hello

「GONIN」シリーズ関連作品