ネタバレ! クリックして本文を読む
原作未読です。
秘密とか、容疑者Xの献身とか、白夜行とか、
その程度しか知らないので東野圭吾作品について語る資格は持ちません。
殺人犯の兄とその弟を描いた名作ヒューマンドラマという程度の予備知識で観始めました。
目を見張るような展開があるのかなと思っていましたが
最後までベタなストーリーで拍子抜けしました。
まあ、サスペンスとかミステリーじゃないから驚かせる必要はないんだけれど。
◆主人公について
お笑いを志した理由が描かれていないので、最後のシーンへの感動が薄れます。
これだけだと、最後のシーンありきで作った設定ですよね?
原作では描かれているのでしょうか?
なぜ殺人犯の弟という酷な宿命を背負い、『世間』に抗いながら生きることを強いられた主人公が、
その『世間』に晒されるのが明白なお笑い芸人の道を志したのでしょうか?
相当な反骨心がなければ無理ですよね?
そういう描写ありました?
そんなハングリーな人間であれば、ネットで晒されたくらいで相方の為と身を引くでしょうか?
中学生の頃から支えてくれた、同じ苦難を共にする覚悟がある親友のはずなのに。。
親友の方は地元の友達と縁切ってるようには思えないし、
元同級生がお笑い芸人やってて、その相方が「あいつだ」ってなったらそりゃ晒されるよ。
身バレ対策とか、その覚悟とかなかったん?
親友も親友で、夢より女を取るって主人公の安っぽい嘘をそんなあっさり受け入れます?
嘘とわかりながら、主人公の固い決意を尊重して身を引くような描写があれば納得できるのですが。
あと、本題と逸れるのでどうでもいいことですが
漫才シーンはがんばってるけど、ネタが面白くないので売れかけた理由がわかりません。
◆ヒロインについて
沢尻エリカが主人公に好意を抱くキッカケはバスの中での一目ぼれでOK?
帽子かぶって俯いてる表情わからん暗そうな男を?
最初から最後までベタ惚れすぎません?
他にも彼女がコテコテの関西弁を使いまくる出自など、キャラとしてバックボーンがよくわかりません。
原作が関西人設定なら関西出身の女優を使った方がいいし
そもそも、特に言及がないなら原作改変して標準語で演じればいいと思います。
沢尻エリカ本人はとても美しく魅力的な俳優で、関西弁の演技もがんばっていると思います。
しかし、これが『極妻』なら受け入れられるのですが、この作品ではノイズです。
主演女優・沢尻エリカが関西弁を用いる必要性が全く理解できません。
現代の関西人はテレビなどを通して、いわゆる標準語に強く影響された環境で育っています。混ざっているのです。
関東圏で暮らす20代前半?の関西出身女性なら尚更影響を受けるでしょう。
周りと協調(迎合)せず、一言一句関西弁を操るのに強烈な違和感を覚えます。
めちゃくちゃ浪速っ子のポリシーとかある人でしょうか?
地味女子から一転、約3分で一気にあか抜けて再登場したのも劇中の時間経過がわかりにくく唐突すぎます。(山田孝之はずっと童顔だし)
彼女が自分の生い立ちカミングアウトから、
手紙の重要性をしつこいくらいに説いて(キーアイテムなんやから何回も言わんでもわかるがな)主人公の「これからは俺がお前を守るから」って流れも、
一見、感動的なシーンなんですが
これまで一貫して男女としては距離感を保っていたのに
急に詰めてきてプロポーズまでしちゃうのはいくら何でも行き過ぎでは?
◆お嬢様について
世間知らずのお嬢様と、自由恋愛に理解の無い大企業重役パパ、キザでイヤミな婚約者
そして事件に巻き込まれて意識不明のまま涙のフェードアウト。
なんだこのテンプレかませ犬トリオは。
ここまでテンプレなら「こんな金いらない!」ってテンプレ通りに突き返して欲しかったのだが・・・
クビになっても再就職に困らず、芸人としてもあっさり軌道に乗り、都内?のマンションで暮らせる優秀な主人公が
プライドを大きく傷つけられたにも関わらず、100万少々受け取った意図は何?
そもそも、沢尻エリカを人間不信から深く知ろうともせず、一方的に拒絶したわりに
吹石一恵の存在をあっさり受け入れた理由がわかりません。
主人公のお笑いへの姿勢に共感を示したから?
前述の理由により、お笑い芸人としての覚悟がみられず、ただ「ダサい振る舞いをしたくない」主人公へのなれ合いしか感じません。
単なる顔の好みでしょうか?
吹石一恵はもちろん美人だが、再会後のエリカ様のギャップにイチコロにならないのはなぜなんだぜ?
まあ、描かれていない時間経過の中で心境の変化があったのでしょうけど。
◆その他
田中要次エピはちょっと良かったけど、なんかあっさりフェードアウトしてしまいました。
ケーズデンキ会長の登場はとってつけたような設定で
タイアップしてるのに無実の者を容赦なく左遷する会社のイメージをフォローする役回りにしか思えません。
上流階級繋がりで吹石一恵再登場の布石かと思ってしまった。
「差別のない場所を探すんじゃない、君はここで生きていくんだ」のセリフで
主人公が安住の地で家族を持つという決意する促す意味があるのかと思ったら
自分を信じてくれる妻の言葉も聞かず「(子供が差別受けるから)引っ越そう」というセリフがあっさり出てきてしまうので
ああ、やっぱり会長が出てくる意味はないんだなあと納得してしまいました。
とりあえずここらへんで挫折と感動ポイント作っておこうみたいな意図がしっかり見えるのです。
◆兄について
それまで弟を思う後悔の描写ばかりで
人を殺めた事そのものへの罪の意識に苦しむ描写が少なかったお兄さんですが
ラストの表情にはグッとくるものがありました。
個人的に、このわずかなシーンだけがこの映画の唯一の救いです。
しかし、せっかくのシーンがまさか小田和正に台無しにされるとは・・・
これって演出過剰といえないでしょうか?
単体ではすごく心に沁みる超名曲なのに、なんて余計な使い方をするのだろうと残念でなりません。
玉山鉄二の演技だけでええやん。
被せずにエンドロールからでええやん。
◆まとめ
とにかく、説明不足に尽きると思います。
驚きはないのに『?』はいっぱいあります。
せめてお笑い芸人の志望動機くらい説明があれば、一本筋が通ったかもしれません。
いちいち描かなくてもわかるだろと怒られそうですが、自分の理解力の限界を感じました。
きっと原作ではこれらの疑問の答えが丁寧に書かれているのではないでしょうか。
しかし、申し訳ないですが原作を読みたいという気も起らない映画でした。