ハロルドとモード 少年は虹を渡る

劇場公開日:

ハロルドとモード 少年は虹を渡る

解説

「さらば冬のかもめ」「シャンプー」「帰郷」といった名作で知られるハル・アシュビーの監督第2作。広大な邸宅に住み、ほしいものは何でも手に入る立場にありながら、死に取りつかれた自殺マニアの少年ハロルドは、ある時、80歳の老女モードと出会う。生きる喜びに満ちていたモードとハロルドはやがて互いに愛し合うようになるが……。ふたりの交流を通じて、愛すること、生きることの素晴らしさを描いた青春映画。日本でも上演された大ヒット舞台劇の映画化作品。1972年日本初公開。2010年「ZIGGY FILMS '70S '70年代アメリカ映画伝説」でリバイバル上映。

1971年製作/91分/アメリカ
原題または英題:Harold And Maude
配給:日本スカイウェイ、アダンソニア
劇場公開日:2010年7月17日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第29回 ゴールデングローブ賞(1972年)

ノミネート

最優秀主演男優賞(コメディ/ミュージカル) バッド・コート
最優秀主演女優賞(コメディ/ミュージカル) ルース・ゴードン
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(C)1971 Pramount Pictures Corporation

映画レビュー

4.0モードがハロルドに起こした「化学反応」が胸に痛い

2023年11月9日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ハロルドと「肝っ玉ばあちゃん」のモード。二人の出会いが、ハロルドの死生観を決定的に変革したことは、間違いないところだと思います。

学生の頃の蹉跌から、すっかり内向きになってしまっていたハロルドは、希死念慮に取り憑かれていたというよりは「死」というものを、どちらかというと興味本位、面白半分で捉え、重くは捉えていなかったように見受けられます。評論子には。

そうでなければ、他人の葬式を巡り歩いたり、マイカーとして霊柩車を乗り回したり、「せめてガールフレンドでも」と母
親が連れてきた女性の前で、手首を切り落とすようなパフォーマンスなんか、するわけがないと思うのです。

けっきょく、このことを憂いたモードがら、薬を飲んで自ら死を選びとることで、ハロルドに「死」の本当の意味=生きることの意味に気づかせた、ということになるように、評論子には思われます。
つまり、彼女自身が、文字どおり身を挺することで、いわば触媒となって、ハロルドの内側に「化学反応」を起こさせたと言えるのではないでしょうか。
そう考えると、親友としてハロルドを想うモードの心根が、ずしりと胸に痛い一本になると思います。評論子は。

老い先短い自分とは違って、ハロルドには、死を興味・関心の対象として捉えるのではなく、若者らしい生命感に満ちみちて生きて欲しいと、彼女は希(こいねが)っていたことは、疑いがありません。
それは、おそらくは死地(ホロスコート)から九死に一生を得てきたモードの本音だったことでしょう。

そして、その想いに気づき、その想いに応えたハロルドは、愛車の霊柩車をかっ飛ばしたあと、崖から落として粉微塵に壊してしまう。

それらの心根の純粋さというのか、温かさというのか、それらの想いに、胸がいっぱいになりそうな感慨が迫りました。

地元の市が主催する令和5年度男女共生セミナーで、女性納棺師のお話を聴く機会があり、「死を考えることで、より良く生きる」という考え方に触発されて来ましたが、本作も少年の死生観(の移り変わり)を描いた作品だったと記憶していたことから、初観から数年を経て、その講演を契機として、改めて観直すことにしたものでした。
観終わって、その「輝き」が少しもくすんでいないことも、嬉しく思いました。
何年間ぶりに再観しても、やはり、その素晴らしさはら、変わりはありませんでした、評論子には。

やはり、秀作であったと思います。

<映画のことば>
「死んでるのって楽しいと気づいたんだ。」
「分かるわ。そう思っている人って多い。でも、生きてるの。人生から逃げ腰になっているだけ。当たって砕けなさい。時には傷つくことも。でも、思いきりやるのよ。頑張って、相棒!懸命に生きるの。生き甲斐を求めて。じゃないと、面白味のない人間になる。」

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talkie

5.0ブッ飛ぶ面白さで大傑作!

2022年6月25日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

いやぁ~、こんなにブッ飛ぶ面白さで、笑えて心揺れる傑作だとは思わなかった!

「死んでいる」と自分の事を言う青年ハロルドが、ひとりで突飛な行動を起こす序盤パートも意外性あふれているが、生き生きとしたお婆さん=モードが登場してからは意外性に拍車がかかり、物凄い展開になっていく。

お婆さんのモードが「モラルに縛られて自分をごまかすな」と言うと、ハロルドは「生きてなかった。何度も死んでいた」と言うあたりも含めて、名言だらけの映画。

トンデモナイ展開が本作の魅力なので、詳しくは記載しないが、ハル・アシュビー監督の大傑作!

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たいちぃ

4.0【”モラルに縛られ、自分の人生を偽るな!命を粗末にするな!”自殺願望を持つ19歳の少年に、80歳のおばあちゃんが身をもって教えた生の大切さをコメディ要素を塗して描いた作品。】

2022年5月11日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

幸せ

ー 冒頭から、死に憑りつかれた19歳の少年ハロルドは、たびたび狂言自殺ー首を括ったり、首を切ったりする振りをするーを繰り返しては両親を驚かせていた。
  そんなある日、彼が出会ったのは自分と同じく見ず知らずの人の葬儀に出席する80歳のおばあちゃん、モード。
  毎日を謳歌するモードの姿に心動かされたハロルドは、やがて彼女に惹かれて行くが…。

◆感想

 ・今作は、ジャンル分けで言えば、コメディになるのであろう。
 モードの自由奔放過ぎる数々の行為。
 他人の車を勝手に乗り回し、街中を暴走。果ては取り締まりに来た白バイまで勝手に乗っていってしまう。

 ・街路樹が、排気ガスで死に掛けている姿を見て、モードはその木を森に戻す。猛スピードの車に乗せて。
 - ここは、重要なシーンであると思う。
   自由奔放なモードの腕には、且つてナチスドイツの強制収容所に入れられた際の番号が刻印されているのである。一瞬、映るだけであるが・・。
   それ故に”一度死んだモード”は、自由奔放に振舞いながら、自殺願望のあるハロルドに、”身を持って”生の大切さを伝えたのだろうと思う。-

<自殺願望を持ちながら、致死に至らない程度の行為で止めるハロルドは、真に死を求めているわけではない事が、彼の言葉から分かるシーンも印象的である。
 - 実験の際に”一度死んだと思った”彼の母親が警官の腕に倒れ込んだ姿を見た際に彼が感じた事。彼は母親の愛に飢えていたが、自分が死んだと思った母が自分を大切に思っている事に初めて気づいたのである。-
 死地を脱して、自由な人生を満喫したモードが、身を持って生の大切さをハロルドに伝えるシーンは印象的である。
 今作は、コメディ要素を塗しながら、生の大切さを描いた作品である。>

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NOBU

アナーキーでチャーミングなおばあちゃんが印象的な作品.こじんまりと...

2022年2月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

アナーキーでチャーミングなおばあちゃんが印象的な作品.こじんまりとした抗議活動としてあんな生き方も悪くない.80歳で薬を飲んで死ぬというのは悪くないものだなと思うようになってきたかもしれない.医学化されて病院の中で体を切り刻まれて死ぬことよりも

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ケ