花様年華

ALLTIME BEST

劇場公開日:

花様年華

解説

「欲望の翼」「ブエノスアイレス」のウォン・カーウァイ監督がトニー・レオンとマギー・チャンを主演に迎え、それぞれ家庭を持つ男女の不倫の愛を描いた恋愛ドラマ。

1962年、香港。新聞編集者の男性チャウと商社で秘書として働く女性チャンは、同じ日に同じアパートに引っ越してきて隣人になる。やがて2人は互いのパートナーが不倫関係にあることに気づき、時間を共有するように。戸惑いながらも、強く惹かれ合っていくチャウとチャンだったが……。

設定の一部や世界観は「欲望の翼」から引き継がれており、さらに2004年製作の「2046」へとつながっていく。第53回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞とフランス映画高等技術委員会賞を受賞。日本では2001年に劇場公開。18年2月、カーウァイ監督の「欲望の翼」デジタルリマスター版の公開にあわせて、Bunkamuraル・シネマで特別上映。2022年には4Kレストア版が「WKW4K ウォン・カーウァイ4K」(22年8月19日~シネマート新宿、グランドシネマサンシャイン、シネマシティほか)で上映。

2000年製作/98分/G/香港
原題または英題:花様年華 In the Mood for Love
配給:アンプラグド
劇場公開日:2022年8月19日

その他の公開日:2001年3月31日(日本初公開)、2018年2月24日

原則として東京で一週間以上の上映が行われた場合に掲載しています。
※映画祭での上映や一部の特集、上映・特別上映、配給会社が主体ではない上映企画等で公開されたものなど掲載されない場合もあります。

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第53回 カンヌ国際映画祭(2000年)

受賞

コンペティション部門
男優賞 トニー・レオン
フランス映画高等技術委員会賞 クリストファー・ドイル リー・ピンビン ウィリアム・チャン

出品

コンペティション部門
出品作品 ウォン・カーウァイ
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映画レビュー

5.0愛をなかったことにしないために記憶し続ける

2024年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

知的

ウォン・カーウァイ監督作品。

オールタイムベスト作品です。
物語は面白く、撮り方はお洒落で、トニー・レオン(チャウ)はかっこよく、マギー・チャン(スー)のチャイナドレスは見惚れる。全てが好き。

そしてお互いの伴侶の不倫が発覚するまでのショットの素晴らしさよ。何一つ不足なく、無駄がない。

チャウとスーの伴侶はカメラの前には一切現れない不在の存在である。唯一存在が確認できるのは、声のみである。しかし伴侶たちはチャウとスーが現れるカメラのフレーム外で彼らを裏切り、逢瀬を重ねているのである。不倫も結婚生活には一切現れない不在の関係である。だからカメラのフレームとそこから外れる不在によって巧みに不倫を描いていると思うのである。

しかし彼らは不倫の事実に落胆するのではなく、彼らも不倫に向かっていくのである。秘密の共有。彼らの愛は滾っていくのである。

ここで「遊び」の概念を導入する。
不倫とは生活のために行うのではなく、むしろ生活の日常ゆえの平凡さからの逸脱という意味で「遊び」のためなのである。
チャウとスーも不倫が遊びであることに自覚的である。自らの生活を破綻させるほど深入りをしてはいけない。部屋の管理人が麻雀に耽るように、秘密の共有による背徳感に楽しみを感じられればいいのだ。

チャウは小説執筆の仕事も始め、部屋も借りる。そしてスーに仕事の手伝いを依頼する。二人は密室での不倫に移行していくのである。即座に性愛がよぎる。しかし彼らはあくまでもプラトニックな愛を維持していくのである。その愛は小説の執筆という創作活動によって営まれる。だが私はこちらの愛の方が性愛よりも罪深いと思うのである。創作する上では、二人の感性が一致していなければならない。そして小説として形あるものが生み出される。そしてその小説はなかったことにはされない。性愛よりも高次な愛の気がする。

そしてごっこ遊び。スーが夫の不倫を問いただすシチュエーションで。スーがその遊びに耐え切れず、涙を流してしまう瞬間、不倫という遊びが本気になってしまったと思うのである。本気の不倫。だが彼らが密室の不倫に移行した瞬間、すでに終わりに差し掛かっていたのかもしれない。部屋番号は「2046」で、彼らの愛が時限付きであることが示唆される。そしてスーが管理人に遊んでばかりいるのではと指摘された瞬間、彼女は遊びに本気になっていることを自覚するのである。スーが我に返ったからーその顔の表情を確認できたのが今回劇場でみて大きな発見なのだがー彼女は生活に回帰したのではないだろうか。

だが彼らはふたたびごっこ遊びをする。二人が二度と密会しないというシチュエーションで。その時、決心したにも関わらず本気の不倫が浮かび上がってくるのである。私はそれこそ真実の愛だと思っているのだが、それが確かにカメラの前に現れてくるのである。帰りたくないとスーが告げ、彼らのタクシーがどこに行ったのかは分からない。けれどまた一つ誰にも言えない秘密が生まれてしまったのである。

秘密の時間は終わりを迎え、離れ離れになった二人。チャウはシンガポールを経由しつつカンボジアに行き着く。彼は秘密をアンコールワットの地に封印する。

彼らの愛はなかったことにはされない。スーに子どもがいても、彼らの部屋が、当時の香港が、微かな痕跡だけを残して変わり果てても。この映画が記憶し続ける。私たちが記憶し続ける。

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まぬままおま

3.5どの場面を切り取っても画になる

2022年8月22日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

モダンクラッシック、ミッドセンチュリー、オリエンタル、シノワズリ、、、、
どの言葉が一番形容できているのだろうか。とにかくお洒落で、どの場面を切り取っても画になる。

ハイカラーでタイトなチャイニーズドレスとアップした髪が似合う超絶美女と、仕立ての良いシャツといい革靴が似合う美男。それらがキッチン共同で鍵のない長屋に住み、屋台で買ったチマキを音を立てて頬張る、、このギャップが不思議な魅力を醸し出している。

マギー・チャンがとんでもなく美しい。あのハイカラ―のドレス、どこで売っているのかしら。どのドレスもとても綺麗な柄とカット。 クールなだけでなく時折みせる可愛らしい顔のギャップがまたいい。

初見では、共同キッチンや大家含めた人が自由に出入りする中国特有の生活様式が理解できず人間関係が整理できなかった。(間取りも。)チャウとチャンという名前もややこしい し。(笑)ま、映画全体を理解するのに問題にはならなかったが。

ウォン・カーウァイ監督の映画ってこんなに洒落乙だったんだ。
他の作品もぜひ観てみたい。

コメントする 3件)
共感した! 8件)
momokichi

4.5男女の秘密の愛をロマンティックに描いた傑作

2022年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

トニー・レオンがくゆらせるタバコの煙、タイトなチャイナドレスに包まれたマギー・チャンの美しい肢体、そして梅林茂の「夢二のテーマ」が流れる、それだけで永遠にループして見ていられる夢のような映画。ウォン・カーウァイ監督と撮影監督クリストファー・ドイルの名コンビが生み出す映像は、それまでの香港映画、いやアジア映画のイメージを一新した。そのスタイリッシュな映像と世界観は、20年以上が経ってもなお新鮮であり、何度見ても新たな発見と感動がある。

本作は1962年の香港を舞台に、それぞれ家庭を持つ男女の秘密の愛を描いた恋愛ドラマだ。トニー演じるチャウは地元新聞社の編集者。マギー演じるチャンは商社で秘書として働いている。たまたま同じ日に同じアパートに引っ越してきて隣人になるが、やがて互いの伴侶が不倫関係にあることに気づき、傷ついた者同士の2人は一緒に時間を過ごすようになり、距離を縮めていく。

ドロドロの不倫劇が描かれそうな設定だが、カーウァイ監督は極力台詞を排し、映像と音楽の力によって、次第に惹かれ合っていく2人の関係、心情を表現する。屋台に夕飯を買いに来たチャンと、食べに来たチャウが階段ですれ違うというシーンだけで、2人の距離感を気だるくエロティックに描き出す。2人が近づいた時、その世界はスローモーションになり、時間の流れが遅くなる中、交錯しそうな互いの視線、クローズアップされた手元や足元だけで想像が掻き立てられる。そして、ドイルが原色を際立たせつつも、光と影、陰影を意識した画面の中で、チャンが纏うチャイナドレスの色や柄、スーツ姿のチャウの佇まいと彼がくゆらせるタバコの煙がそれぞれの感情を表す。

2人が密会するホテルの廊下は、まるでデビッド・リンチ監督の「ツイン・ピークス」に出てくる森のカーテンの向こう側の世界ようであり、2人だけの世界では、時間の流れが異なっているように見える。そして、ナット・キング・コールによる「キサス・キサス・キサス」などのラテン・ポップスや、60年代の香港を代表する歌手レベッカ・パン(本作にも出演している)が歌うインドネシアの名曲、さらには京劇の曲が流れるなど、無国籍なようでありながらメランコリックで、ロマンティックな不思議な世界観が醸し出される。

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和田隆

5.0ウォン・カーウァイのキャリアを代表する傑作!

2024年11月2日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

興奮

幸せ

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デッキブラシと飛行船