タイトルロゴのバックに流れる、無国籍風味な民族音楽が、まずよかったです。物語冒頭の、これまた無国籍風味のビジュアルもよかったです。ブレランみたいな。
心配なのは柴咲コウが演ずるW主役のどろろ。原作ではまだ幼い子供のはずでしょ?性別も明言されていなかったんでしょ?
なのに、なんで柴咲さんが?という思いが強くて。決して悪い女優さんとは思わないんですが。本作にあたっては、ミスキャストじゃなかろうか?の懸念が大きくて。
まぁ、映画を見る目のないことで定評のある私です。きっとそこ思いは鑑賞していくにつれ、解消されていくことでしょう。
CG、ワイヤーアクション共に、今日の目で見ても十分に及第点でした。
魔物との戦いを、見せ場だけ残して端折って描いた素早いテンポがよかったです。どろろと心を通い合わせていく過程も過不足なく描いていたし。
お荷物になりがちなどろろの活躍もきちんとあったので、ふたりのバディ感の演出が光っていたように思いました。
柴咲さん、いいじゃない。しっかりと百鬼丸の相棒・どろろに見えました。「懸念が大きい」とか言ってごめんなさい。アクションも、かなりがんばっていらっしゃったし。瞳に涙を溜める演技が迫真でした。(柴咲さんのここが好き)
妻夫木さんも、二枚目俳優にも関わらず、おどろおどろしい雰囲気を存分に醸し出していらっしゃいました。
中井さんは正直…魔物感がもうひとつ足りなかったかなぁ。
麿赤兒テイストの俳優さんの方がよかったように思えました。50~60代で、麿さんテイストをお持ちの俳優さんって、まるで思いつかないのですが。
魔物との戦いを誤魔化しの効かない白昼のシーンで多く撮っていたのですが、ここは誤魔化しがどうのこうのではなくて、不気味な夜のシーンで見てみたかったです。メキシカンなギターの劇伴と、乾いた荒野の絵が相まって、どうにも“ウエスタン調”に感じてしまったんですよ。もっと“おどろおどろしく、暗く湿った感じの“ホラー風味”で絵で見たかったかな?それとも、やはり無国籍感を出したくての、あえての創りだったのかな。
混沌とした街等の大掛かりなセットも大変効いていると思いました。何か他の作品との共用?と思うほどお金かかっているのが一目瞭然でしたので。総製作費20億円らしいので、かなりがんばった作品だと思いました。
醍醐の城のデザインを見て『未来忍者・慶雲機忍外伝』を秒で思い出しました。そう言えば『未来忍者…』や『ゼイラム』も無国籍な世界観の物語でしたし。
スタッフがどこかで接点あるのかな?と思って調べてみましたが、主要なところでは見つけられませんでした。
あるいは、塩田監督が雨宮監督作品にインスパイアされたご経験があるのかな?とまで思いました。
爽やかで泣けるラストの締めがよかったです。てか、百鬼丸、おてぃんてぃんは取り戻してたんだ!(笑)
続編の企画もあったのに、実現に至らなかったのは、大変残念に思いました。魔物も残り24体いるようですから。
せめて、前・後編くらいで創ってほしかったです。今さら言ってもしょうがないんですが。
そしてまた苦言を呈するエンディングテーマソングのタイアップ問題。
Mr.Childrenには何の恨みもないんだけれど。
せっかく無国籍な非日常の世界を堪能した後だというのに、一気に現実に引き戻されて興醒めしました。
色々と“大人の事情”のしがらみがあるんだろうなぁ。
ここに人間椅子あたりを持ってくる勇気と英断を邦画界に期待したいんだけれど。
「無情のスキャット」なんて、まさに本作にドンピシャだと思うんだけれど。なんでもかんでも売れセンを適当に当てはめんとアカンのんかなぁ。