コラム:編集長コラム 映画は当たってナンボ - 第31回
2009年1月19日更新
第31回:賞レース銘柄が続々登場、映画ファン待望のシーズン到来
映画業界で言うところの「正月第2弾」シーズンが始まった。例年、12月に封切られる正月映画は、いわゆるイベントムービーが多く、内容よりも派手さ重視のラインナップとなる。長い連休で市場も大きいので、ファミリー向けのベタな作品や、ビッグスターを使ったアクション映画でドカンとはったり効かせて稼ぐ興行だ。
実際、ふだんあまり映画を見ない観客ほど、こうした派手な映画に吸い込まれ、劇場は賑わう。
これが、正月が明けて1月も2週目となると、映画市場も急に萎んでしまう。まず、ファミリーが映画館からいなくなる。正月に緩んだ財布のヒモは締め直され、子供たちは試験や受験に向けて、そうそう遊んでもいられなくなる。
そんな折、海の向こうでは賞レースがたけなわを迎える。12月のナショナル・ボード・オブ・レビュー賞の発表に始まり、2月23日(日本時間)のアカデミー賞まで、2008年のベスト・オブ・ベストを選ぶ映画賞が続々と発表されるのだ。
こうした賞レースの受賞作・ノミネート作のほとんどが、日本では1月から4月ぐらいにかけて公開される。オンタイムで賞レースを戦っている作品は、メディアで連日取り上げられるので、放っておいても映画ファンの注目が集まる。つまり、興行のポテンシャルがどんどん高まっているわけなので、そのタイミングで公開すれば、もっとも効率的に集客できるというわけだ。昨年の「ノーカントリー」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」しかりである。
映画ファンにとってのハイシーズンの到来だ。ファミリー映画は退場し、クオリティ面で権威づけの完了した作品がずらりと並ぶ。
では、今シーズンこれまでの賞レースを賑わせてきた作品群を、公開順に並べてみよう。
「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」 サム・メンデス監督 1月24日
「ダークナイト」 クリストファー・ノーラン監督 1月24日(再公開)
「マンマ・ミーア!」 フィリダ・ロイド監督 1月30日
「ベンジャミン・バトン/数奇な人生」 デビッド・フィンチャー監督 2月7日
「チェンジリング」 クリント・イーストウッド監督 2月20日
「フロスト×ニクソン」 ロン・ハワード監督 3月
「ダウト/あるカトリック学校で」 ジョン・パトリック・シャンリィ監督 3月
「レイチェルの結婚」 ジョナサン・デミ監督 4月
「スラムドッグ$ミリオネア」 ダニー・ボイル監督 4月
「バーン・アフター・リーディング」 ジョエル&イーサン・コーエン監督 4月24日
「ミルク」 ガス・バン・サント監督 GW
「それでも恋するバルセロナ」 ウッディ・アレン監督 6月
「ザ・レスラー」 ダーレン・アロノフスキー監督 初夏
「愛を読むひと」 スティーブン・ダルドリー監督 初夏
まさに垂涎のラインナップである。監督の名前を眺めているだけで、わくわくしてくる。これから夏に向けて、1カ月に最低2本は、折り紙付きの作品が見られるということだ。しかも今年は昨年よりもバラエティ豊富で豪華。是非、時間を見つけて映画館に足を運んでいただきたい。(eiga.com編集長・駒井尚文)
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駒井尚文(こまいなおふみ)。1962年青森県生まれ。東京外国語大学ロシヤ語学科中退。映画宣伝マンを経て、97年にガイエ(旧デジタルプラス)を設立。以後映画関連のWebサイトを製作したり、映画情報を発信したりが生業となる。98年に映画.comを立ち上げ、後に法人化。現在まで編集長を務める。
Twitter:@komainaofumi