「この世界の片隅に」が全米で公開 ニューヨーカーたちの反応は?
2017年8月15日 10:00

[映画.com ニュース] 昨年から日本中を沸かせている片渕須直監督作「この世界の片隅に」が8月11日(現地時間)、ついに全米公開を迎えた。
宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」がアカデミー賞長編アニメ―ション賞を受賞したように、アメリカでは日本のアニメは、スタジオジブリ作品を中心に注目度が高い。「ドラゴンボール」など日本でお馴染(なじ)みのテレビアニメはアメリカでも根強い人気を誇り、最近では、Netflixに「進撃の巨人」や「亜人」などがラインナップ。アメリカでの日本製アニメの需要の高さを物語っている。さらに今年4月には、新海誠監督のメガヒット作「君の名は。」が公開され話題を呼んだ。「この世界の片隅に」はこの一連の流れを受け、満を持してスクリーンに登場する。
ニューヨークでは、7月23日に北米最大の日本映画祭「JAPAN CUTS ジャパン・カッツ!」のクロージング作品として上映された。鑑賞の機会を待ち望んでいたニューヨーカーたちによって、チケットはソールドアウト。同映画祭プログラマーのジョエル・ネビル・アンダーソン氏は「戦時下に生きる女性の生活の細やかな描写によって、どんな文化で生まれ育った人であっても、あの歴史的悲劇を新しい視点で体験することができる」と選考の決め手を語っていた。

「この世界の片隅に」は大都市を中心に、英語字幕版と英語吹き替え版合わせて全米65館からスタートを切る。今後、各都市に拡大する予定だ。公開館数は、「君の名は。」の311館と比べると少ないが、批評は軒並み高評価で、ロサンゼルス・タイムズ紙は「映画の世界感や細部の描写に引きつけられる」と記し、NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)は「映画の持つ柔らかさや品が、悲惨な状況をより引き立てている」と称賛している。さまざまな批評家のレビューをオンライン上に一堂に集めたRotten Tomatoesでは、97%が好意的で、同じ第二次世界大戦を描いた、現在ヒット中のクリストファー・ノーランの新作「ダンケルク」の93%を凌いでいる(8月14日時点)。
では、一般のアメリカ人観客たちの反応はどうだろう。公開初日に劇場を訪れた30代の女性は「生活のディテールが素晴らしかった。一方で、詳しく説明されないことも多く、すずの性格のように、作品自体もぼんやりして不思議だった」という反応。40代女性は「あまり物語に強みはなかったけれど、手描きの画が見事」と、はっきりしたものを好むアメリカ人には特殊な作品に映ったようだが、作品のビジュアル面は日本と共通して評価が高い。

また、太平洋戦争時を描いた作品ということで、戦争に関する意見も聞こえた。20代女性は「結局あれが真実なんだと思う。ごく普通の人たちは誰が敵なのかなんてほとんど関係ないはず」と、映画で描かれる人々の戦争に対する姿勢への共感を寄せた。そして40代男性は「特にここ2週間くらいの世界情勢を見ても、とてもタイムリーな作品。今の政治や経済に対するメッセージのよう。戦時中の生活や戦争の後に何が起こるのかを学ぶために、学校で子どもたちにぜひ見せて欲しい」と、世の中の現状と重ねた意見もあった。
映画公開日当日の客層は、20~30代が中心。「スパイダーマン ホームカミング」や「ワンダーウーマン」などの夏休みの超大作映画がひしめく中での公開で、集客はまずまず。ところが、エンドクレジットが始まればすぐに劇場を出てしまう人の多いアメリカで、ほぼ全員の観客が最後まで席を立たず、映画の余韻に浸っていたのが印象的だった。
アメリカにも「この世界の片隅に」に魅了されている人たちがいるのはまぎれもない事実。果たしてじわじわと公開館数を増やしていくか否か。日本で社会現象になった映画は、これからこの国でどんな展開をしていくのだろう。(岡本太陽)
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