2月9日更新
短編小説集を読むような、楽しい恋愛群像劇 バレンタインデー

- バレンタインデーに夢中なのは、チョコレート会社に踊らされている日本の女の子だけかと思っていたが、この映画を見る限りアメリカ人もかなり熱い。小学生から70代のおじいさんまで、誰もかもがバレンタインデーに愛を確認しようと躍起になるのだ。その愛のエピソードを人気スターのリレーで見せて、短編小説集を読むような楽しい映画になった。素顔のままの可愛いさが出た。ちょっとやりすぎてしまった。もやりすぎだが、... >>続きを読む
本能に忠実すぎる大人たちの性懲りもない愛の彷徨 恋するベーカリー

- 邦題に惑わされ、初老のキキが恋に揺れる“リアル魔女宅”的ロマンスを夢想していると、まさかの淫らさに驚かされる。実際、日本ではR15+指定。原題「It's Complicated=込み入った/理解しにくい」の通り、屈託なきラブコメには程遠い。恋愛に年齢不問という自己啓発的メッセージを読み取るのは自由でも、むしろ性懲りもない大人たちを溜め息まじりに笑いとばす方が健全だろう。 3人の子を育て... >>続きを読む
サッカーを用いてメキシコという国家の有り様を語った技ありの一作 ルドandクルシ

- サッカー好きの貧しい異父兄弟が、スカウトに見出されて成功への階段を駆け上がり、やがて、転がり落ちて行く物語自体はスポーツドラマのルーティンだが、「ルドandクルシ」の舞台はサッカー王国、メキシコ。劇中の随所に、この国ならではのサッカーを人生に準えた含蓄のある名文句が散りばめられているから、メモっておいて損はないと思う。 名文句はすべて、物語の語り部である怪しげなスカウトの言葉として紹介... >>続きを読む
2月2日更新
至るところに二重性が。嘘とキャメラの危うい関係 抱擁のかけら

- ここにもダブル、あそこにもダブル。「抱擁のかけら」には、至るところに二重性が仕掛けられている。登場人物が名前や職業をふたつ持っているだけではない。映画のなかにはもう1本の映画が仕込まれ、ひとつの人間関係はかならず別の関係を内包している。 なのに、滑り出しはシンプルだ。嫉妬と復讐に彩られたフィルム・ノワール。思わずそんな錯覚を口走ってしまいそうになるが、錯覚はすぐに突き崩される。代わって... >>続きを読む
友情ではなく、シンパシーによって築かれた絆 フローズン・リバー

- 貧困にあえぐ白人の女が、息子たちのために違法なビジネスに手を染める。彼女の相棒となるのが、引き離された子供のために必死に金を貯めている先住民の女だ。ところがこういった設定でありながら、母性愛とか女の友情といったところに安易に転んでいかないのがいい。 2人は車という密室で長時間共に過ごそうとも、アクシデントを一緒に乗り越えようとも、どこまでも平行に伸びた線路のように交わらない。だが互いに... >>続きを読む
登場人物たちのアクションが、ひたすら私たちの心に触れる イエローキッド

- おそらくこの映画を見たほとんどの人が、重いしこりのような戸惑いを胸に抱くだろう。一体ここでは何が起こったのか? 主人公は何をしたかったのか? 主人公どころかこの映画の登場人物たちそれぞれは何故何のために生きているのか? ストーリーを要約してしまえば、ボクシング漫画を書き続ける漫画家と、かつてその漫画家が描いた漫画に影響されてボクサーを目指す若者の、現実と妄想と漫画の世界とが交錯する物語... >>続きを読む
1月26日更新
「ハートの達人」によって高められた和解と赦しの物語 インビクタス/負けざる者たち

- 長い獄中生活を送った男が娑婆に出てくる。こんな場面が出てくる映画を、われわれは昔から知っている。東映映画ならば、抗争の準備がなされる。マカロニウェスタンならば、非情な殺戮劇がはじまる。一部のイーストウッド映画もそうだ。牢獄に限らず、「過去」から逃げてきた男がある地点で反転し、孤独な復讐に転じる。場合によっては「幽霊の復讐」という形さえ取る。「アウトロー」「ペイルライダー」「許されざる者」……... >>続きを読む
シアーシャ・ローナンの視線の先がスペクタクルだ! ラブリーボーン

- 冬のトウモロコシ畑で殺された14歳の少女が語り手となって、天国から残された家族たちや真犯人の行く末を見守る。原題は「愛すべき骨たち」。猟奇殺人の犠牲者たちへの鎮魂歌的なストーリーなのだが、「羊たちの沈黙」や「セブン」といったダークスリラーとは一線を画したダークファンタジーであり、作品らしく、「明るさ」に満ちていて不思議な後味の良さがある。 女子高生たちが加害者となった「乙女の祈り」とは... >>続きを読む

