キム・ギドク
韓国・慶尚北道奉化郡出身の映画監督、脚本家、プロデューサー。
1990年、絵画を学ぶために渡仏。当時公開されていた映画「羊たちの沈黙」や「ポンヌフの恋人」(ともに91)に感銘を受け、絵画ではなく映画の世界を志すようになる。帰国後、脚本の執筆に没頭し、93年に「画家と死刑囚」で映像作家教育院第3回創作大賞を受賞。96年に「鰐 ワニ」で映画監督デビューする。
日本でも公開された「魚と寝る女」(00)と「受取人不明」(01)がベネチア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、ヨーロッパを中心に評価が高まる。その後、「サマリア」(04)で第54回ベルリン国際映画祭の銀熊賞、「うつせみ」(04)で第61回ベネチア国際映画祭の銀獅子賞を受賞。映画界から離れていた3年間の隠遁生活を撮ったセルフドキュメンタリー「アリラン」(11)も第64回カンヌ国際映画祭のある視点部門で最優秀作品賞を受賞し、世界三大映画祭すべてで受賞を果たした。その翌年には、「嘆きのピエタ」(12)が第69回ベネチア国際映画祭で韓国映画初となる金獅子賞を受賞している。
その後も「メビウス」(13)や「THE NET 網に囚われた男」(16)、「STOP」(17)など社会派作品を制作するが、18年、自作に出演した女優に性的暴行を加えていたことなどが明らかになり、これまでの栄誉も薄れる。韓国の映画界を事実上追放となり、活動の拠点をロシアへと移すも、20年12月11日、新型コロナウイルス感染による合併症のため訪問先のラトビアで死去。59歳だった。