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「ALL YOU NEED IS KILL」とループものの価値【氷川竜介の「アニメに歴史あり」】

2026年1月7日 16:00

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画像1(C)桜坂洋/集英社・ALL YOU NEED IS KILL 製作委員会

映画.comが運営するアニメ情報サイト「アニメハック」(https://anime.eiga.com/)では、アニメに関するコラムを複数掲載しています。コラム群のなかから、1月9日公開の劇場アニメ「ALL YOU NEED IS KILL」をテーマにアニメ・特撮研究家の氷川竜介さんが書いたコラムをご紹介します。(アニメハック編集部)


2026年1月9日から新作アニメ映画「ALL YOU NEED IS KILL」が公開される。原作は桜坂洋のライトノベル「All You Need Is Kill」(集英社刊)、監督は「えんとつ町のプペル」美術監督を手がけた秋本賢一郎。強いデフォルメの入った村上泉デザインによるキャラクターや、独特のカラフルな美術のビジュアルは手描き的なテイストが強いが、フル3DCGで描かれている。STUDIO4℃らしい先鋭的なセンスに染まったビジュアルの作品だ。

物語はいわゆる「ループもの」だ。地球外生命体の襲来にさらされ、その繁殖を食い止めるために駆り出された少年少女たち。その一員である18歳の少女リタは、侵略を開始して暴れ始めた雑兵タイプの生命体に殺されてしまうが、死んだとたんその日の朝に戻ってしまった。そして何度も何度も記憶は保持したまま「タイムループ」を繰り返すことになる……。

やがて戦うことを決意したリタは、繰りかえしの中でいろんな戦法を試し、なんとかループを脱しようと悪戦苦闘する。誰にもその苦しみを共有できず、終わりが見えなくて絶望したとき、同じ1日を繰り返す少年ケイジが現れた。戦いのバリエーションに対し、パワードスーツ本来の工事用の器具を駆使し、ジャンプしたりスポーツ的な作戦を編み上げるなど、3D空間を活かしたアクションが成長ストーリーと気持ちよく同期している。

原作の発表年は04年で、すでに14年にはトム・クルーズ主演でアメリカの実写映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」(原題「Edge of Tomorrow」)として映像化され、日本のライトノベル発として話題を呼んだ。殺しても死なないような役を多く演じているトム・クルーズが、ナニゲに何度も死んでしまうという描写がメタなギャグとなってチャーミングな映画だった。

アニメ版「ALL YOU NEED IS KILL」は、その実写映画とも原作とも異なるアレンジを施すことによって、独自の魅力をそなえていて好感度が高い。最大の変更は主人公を男性のキリヤ・ケイジから女性のリタ・ヴラタスキにしたことだ。彼女の視点中心とし、ループに囚われた者の孤独や苦悩を描いたことで、共感度が増した。戦いを繰り返すことになるシチュエーションも、「戦争」からハイティーンの奉仕活動的なものに変えられている。その結果、殺傷力をもつ武装の駆使ではなく、手持ちの工具や作業用スーツの改良と頭脳を駆使した作戦の錬磨が見せ場となって、思わず応援したくなる気持ちがかきたてられる。

本作自体が映像化を繰り返したことで、なぜ「ループもの」が好んで作られるのかが気になり始めた。「何らかの設定に基づき、同じ時間軸の中で微妙に違う行動を繰り返すが、特権的な人物だけが記憶を保持して繰りかえしに気づいている」という仕立てを「ループもの」と定義して思い出してみると、以下のようなタイトルがたちまち並ぶ。

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」(84)、「時をかける少女(アニメ版)」(06)、「ゼーガペイン」(06)、「ひぐらしのなく頃に」(06)、「四畳半神話大系」(10)、「魔法少女まどか☆マギカ」(11)、「STEINS;GATE」(11)、「Re:ゼロから始める異世界生活」(16)、「サマータイムレンダ」(22)、「グノーシア」(25)。

列記すると、コンシューマーゲーム機が普及途上の「うる星2」から流行まで間が空いていることから、「ゲーム世代との親和性」が傾向としてすぐ浮かぶ。アニメの原作として、選択によって分岐があって正解のゴールになかなかたどり着けない「アドベンチャー系ゲーム」が幾つか含まれているから、なおのことだ。

ここでゲームそれ自体が、本質的に「やり直しのループ」を内包していることも気になり始める。コンピュータゲーム以前に、将棋、囲碁、チェス、麻雀、ビリヤード、カードゲームなど、そもそもゲームは「新たに始めて繰り返すこと」を大前提にしている。誰を相手にするのか、どんな戦略をとるのかで「一回性のプレイ」がそこに生じる。ゲームオーバーになればもう一度やり直す点で、「ゲームの価値」の根幹に「ループ性」が仕組まれているのである。

これはコンピュータゲーム以後も同じである。キャラクターを操作して難関を突破する「スーパーマリオブラザーズ」タイプのアクション系ゲームでは、「ミスをすればキャラクターが死ぬ」という構造に大きな問題が内包されている。現実世界の人生は一度きりなのに対し、画面内の虚構であるとは言え、「いくらでもやり直しがきく」というシステムは、倫理的に問題があるかもしれないのだ。

先述の作品群で、逆に「何度もやり直すこと」がメリットではなくおおむね「苦行」に位置づけられているのは、その倫理問題ゆえだろう。そして見逃せないのは、映画、テレビシリーズなど映像で構築されている以上、「特権性のある主人公と観客の時間は着実に前に進む」という事実である。

この分析に関しては、「時をかける少女」の事例が分かりやすい。「やり直し」をエンジョイしていた主人公・真琴は、やがてそこに大きな罠が仕込まれていたことに気づく。彼女が良い目を見た分、そのダークサイドもあり得るのだ。それが自分の恋愛感情の否定に繋がるに至って、人生は「前に向かって行動するしかない」ということが、真琴の前に突きつけられる。

これは「人生の真実」のある部分を言い当てているのではないか。実際、前掲の作品の多くは、似たようなメッセージ性を内包している。今回の「ALL YOU NEED IS KILL」もまた、その系譜に位置づけられる作品に思えてきた。

実際に始まった映画は、着々と時を重ねて終わりに向かうしかないのだから、当たり前のことに思えるかもしれない。だが、この「当たり前」を人は容易に忘れてしまう。たとえば実人生では「やり直し」が出来ないのに、「ああすれば良かった」と過去を振り向いてばかりで、前に進めないということが起きたりする。その態度に再考をうながすという点で、「人生の真実」の提示には大きな意味がある。

ALL YOU NEED IS KILL」は、主人公のリタが「やり直し」が「時の牢獄」だと気づいたとき、その特性すら利用して学習を繰りかえす、情熱的な姿勢が大きなみどころである。キャラクターデザインも、そのためにデフォルメされたものではないか。そして前向きに情熱を牢獄突破に向けるリタたちの成長ストーリーから、やがて目が離せなくなる。パートナーを得たとき、脱出の努力はどのように発展していくのか。そこは劇場でのお楽しみだ。映画が始まったら閉じこめられて止められないスクリーンの中で、主人公たちとともに「時間のマジック」を、ぜひ体験していただきたい。


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