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「殺し屋のプロット」あらすじ・概要・評論まとめ ~失われていく記憶の中で実行される“完全犯罪の世界”でレジェンド俳優初共演~【おすすめの注目映画】

2025年12月4日 06:30

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「殺し屋のプロット」
「殺し屋のプロット」
(C)2023 HIDDEN HILL LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

近日公開または上映中の最新作の中から映画.com編集部が選りすぐった作品を、毎週3作品ご紹介!

本記事では、「殺し屋のプロット」(2025年12月5日公開)の概要とあらすじ、評論をお届けします。


【「殺し屋のプロット」あらすじ・概要】
画像2(C)2023 HIDDEN HILL LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

マイケル・キートンが監督・主演・製作を務め、記憶を失いつつある老ヒットマンが完全犯罪に挑む姿を描いた犯罪ノワール。

2つの博士号を持ち、元陸軍偵察部隊の将校という異色の経歴を持つ殺し屋ジョン・ノックス。ある日、急速に記憶を失う病により、数週間以内にすべてを忘れてしまうという宣告を受けた彼は、殺し屋稼業に終止符を打つ決意を固める。ところがその矢先、長年絶縁状態だった息子のマイルズが現れる。マイルズは娘をレイプした男を殺したことを告白し、その殺人の罪を隠してほしいと涙ながらに懇願してくる。ノックスは息子のため、刻一刻と記憶を失う中で、人生最後の完全犯罪に挑む。

主人公ノックス役をキートンが演じるほか、ノックスの盟友ゼイヴィア役を名優アル・パチーノ、元妻のルビー役を「ポロック 2人だけのアトリエ」でアカデミー賞を受賞したマーシャ・ゲイ・ハーデン、息子のマイルズ役を「X-MEN」シリーズのジェームズ・マースデンがそれぞれ演じる。


【「殺し屋のプロット」評論】
画像3(C)2023 HIDDEN HILL LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
●失われていく記憶の中で実行される“完全犯罪の世界”でレジェンド俳優初共演(筆者:和田隆

ティム・バートン監督と組んだ「ビートルジュース」や「バットマン」をはじめ、クエンティン・タランティーノ監督の「ジャッキー・ブラウン」、さらに「カーズ」や「トイ・ストーリー3」ではボイスキャストとして、その独特な存在感でハリウッド映画の第一線で活躍し、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」では、ゴールデングローブ賞映画部門の主演男優賞(コメディ/ミュージカル)を受賞するなど、俳優として高く評価されてきたマイケル・キートン。本作は彼のキャリアの集大成として、監督・主演・製作を務めた犯罪ノワールである。

ロサンゼルスの街を舞台に、記憶を失いつつある老ヒットマンが完全犯罪に挑む姿を描く。キートン自身が老ヒットマンのジョン・ノックスを演じている。哲学書を愛読し、犯罪にも独自の美学を貫いてきたが、記憶を数週間で急速に失う病に侵されるという運命を突き付けられたノックスの悲哀を、キートン独特の情感の滲み出る眼差しや仕草で観る者の心に深く染み渡らせる。

画像4(C)2023 HIDDEN HILL LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

しかも本作には、すでに伝説の俳優となっているアル・パチーノがキートンと初共演しているというだけでも、映画ファンにとって必見の作品と言える。除隊したノックスを殺し屋にスカウトし、彼の“最期の仕事”に協力するゼイヴィアを、傑作「ゴッドファーザー」シリーズなどでアカデミー賞に9度ノミネートされ、「セント・オブ・ウーマン 夢の香り」で同賞を受賞したパチーノが演じている。ノックスとの長い関係の歴史と去りゆく友への想いを、その佇まいや息遣い、目の表情だけで表現し、パチーノが画面に登場しただけで、裏の世界で生きてきた2人の関係性に緊張感と説得力を与える。

他にもノックスの元妻に「ポロック 2人だけのアトリエ」でアカデミー賞を受賞したマーシャ・ゲイ・ハーデン、疎遠になっていたノックスの息子に「X-MEN」シリーズのジェームズ・マースデン、ノックスと長年ひと時を過ごしてきた売春婦に「COLD WAR あの歌、2つの心」のヨアンナ・クーリクらがキャスティングされており、俳優監督らしい配役で物語の陰影を深める。

画像5(C)2023 HIDDEN HILL LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

だが本作は、そんな彼らの演技をじっくりと堪能できる作品とともに、実は映像表現にも独特なこだわりを見せている。まるで記憶を失っていくノックスの状況を見る者にも追体験させるかのように、カメラのフレームは瞼を閉じるようにフェードアウトしたり、シーンやカットが飛んだりする。そうしているうちに、今見ているのは劇中の現実なのか、ノックスの記憶や頭の中で曖昧になっていく世界なのかわからなくなってくるという仕掛けだ。記憶を失う直前の、明晰な頭脳と膨大な知識を駆使して計画したノックスの“完全犯罪”は果たして完遂するのか、最後まで目が離せない。

執筆者紹介

和田隆 (わだ・たかし)

1974年生まれ。映画業界紙の記者、編集長などを経て取締役に就任。キネマ旬報などに寄稿。2014年より映画.comで国内映画ランキング、新規事業などを担当。映画もプロデュース。


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