「砂の器」研究書籍の“決定版”が発売! 樋口尚文氏が野村芳太郎監督秘蔵資料を8年越しでまとめる
2025年2月19日 10:00

映画評論家、映画監督の樋口尚文氏の新著「砂の器 映画の魔性――監督 野村芳太郎と松本清張映画」(筑摩書房刊/予価2750円)が、3月10日から刊行されることがわかった。樋口氏はこれまでに、映画「砂の器」を検証した関連著作として「『砂の器』と『日本沈没』 70年代日本の超大作映画」(筑摩書房)と「『昭和』の子役 もうひとつの日本映画史」(国書刊行会)を刊行しているが、本書は野村芳太郎監督が遺した秘蔵資料を8年越しでまとめあげた、「砂の器」研究書籍としては唯一無二の決定版といえる。
1974年に封切られ、大ヒットを飾った「砂の器」は、半世紀を経た今なお国民的な人気を誇る名作として認知されているが、樋口氏は今作を通りいっぺんの「名作」ではないと本書で展開。製作・脚本の橋本忍、野村監督を中心とする名匠たちが極めてベンチャーな野心と創意をもって「映画の魔性」に取りつかれて実現した“挑戦作”にして“異色作”だとしている。
樋口氏は、野村監督が遺した「砂の器」の演出プラン、コンテ、演出メモに至る詳細な現場資料を精緻に分析。これまで全く触れられてこなかった作品の創造から公開までの過程(原作―脚本―演出―宣伝)を豊富な図版を引用しながらあぶり出していく。また、「砂の器」を長年にわたり研究し続けてきた樋口氏でしか実現し得なかった、同作関係者へのインタビューを後半の目玉として掲載。樋口氏が説得して改めて表舞台へ招いた本浦秀夫少年役の元俳優・春田和秀氏や、逝去直前の島田陽子さんへの貴重なインタビューも実現した。
また、音楽的な観点から劇中のピアノ協奏曲「宿命」を詳細に分析。楽譜復元を行った作曲家・和田薫氏へのインタビューから、撮影時に現場で演奏していた奏者を探し出しての取材まで、観客に人気の楽曲創造の秘密に初めて迫る。
本書は「砂の器」を製作した松竹、橋本プロダクションの企画協力のもとに実現。松竹は今年4月から野村監督生誕110年の2030年にかけて、野村監督を再発見するプロジェクトを始動する。特設サイトの開設、旧作の上映・配信などにも積極的に取り組んでいくという。
なお、本書の刊行記念として3月1~14日、池袋・新文芸坐で特集上映「監督・野村芳太郎が描く、作家・松本清張の世界」が行われる。「砂の器」はもとより、諸事情でソフト化されていない「迷走地図」など清張映画7本を上映。初日の1日には、樋口氏と春田氏のトーク&サイン会も予定されている(1日以外は土日の上映なし)。上映作品は「ゼロの焦点」「影の車」「砂の器」「鬼畜」「わるいやつら」「疑惑」「迷走地図」。
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