影の車

劇場公開日:

解説

松本清張の同名原作を清張文学の映画化では定評のある橋本忍と野村芳太郎のコンビが日常性の奥に潜む恐怖を描いた作品。撮影は野村監督と名コンビぶりを発揮してきた川又昂が担当。また、この作品では従来、映画では不可能とされていたカラーの分解処理〔多層分解〕が試みられている。

1970年製作/98分/日本
原題:The Shadow Within
配給:松竹

ストーリー

浜島幸雄はある日、幼馴染の小磯泰子の呼びかけにふりかえった。この偶然こそ、平凡な男の生涯を根底からゆさぶる運命の声であった。浜島は旅行案内所に勤続十二年の係長で妻の啓子は万事に社交好きで陽気である。毎日が会社と団地の往復、生活も仕事も単調で味気ない浜島は、泰子に会って同じバスに乗っただけで軽い興奮があった。二度目に泰子に会った時、すすめられるままに泰子の家を訪ねた。四年前に夫に死なれた泰子は六歳の健一と二人暮し。保険の集金と勧誘でつつましい生活だ。健一は父親がないためか、孤独癖のある無口な子供だった。夢多き思春期の共通の追憶に話がはずみ、浜島の泰子への傾斜は急ピッチであった。やがて、狭い泰子の家では、健一の眼が浜島には苦手な存在になった。だが、自然の成り行きで二人は結ばれた。初夜のように白無垢の長襦袢で浜島を迎えた泰子がいじらしかった。浜島は健一を手なづけようと、心をくだいたが、その都度失敗した。浜島にも幼い日に夫を失った母と伯父との間に立たされた忘れ得ぬ記憶があったから健一の反感が必要以上に応えた。そして、健一が自分を殺そうとしている突飛な幻想に悩まされはじめた。一度は妻と別れて泰子と結婚しようと決心しながら、健一のことを考えるとまた泰子を諦らめようかと思い迷った。空閨を癒やされた泰子は啓子への後ろめたさも、浜島を見る健一の白い目にも心を向けず、ひたすら愛欲の歓びに溺れた。紅葉のころ、浜島苦心のドライブ旅行も小さな健一の本能的な男性にはね返されてしまった。浜島は再び幻影の虜になった。宿命というには、余りにも似かよった浜島自身の幼年期の体験。あの時のように俺は健一に殺される。泰子は浜島のノイローゼを満ちたりた笑いで一蹴した。しかし、おそるべき運命の符合は、悪魔のいたずらか、結末が逆になった。浜島が健一の首をしめてしまったのだ。浜島は六歳の子供である健一が鉈をふりかざして、浜島に迫った殺意を信じている。たとえ世間のすべての人が否定しようとも、かつて六歳の浜島が自覚した殺意の衝動、憎悪の瞬間を事実として告白し、一生叫びつづけなければならないのだ。

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スタッフ・キャスト

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オソレゾーン

映画レビュー

5.0一級品の映画

2022年2月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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hjktkuj

2.5岩下志麻、素敵ー。 当時二十九歳!

2021年3月14日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

怖い

加藤剛、三十二歳!

でも。子供の前ではないなー。

家行き過ぎ。子供が殺意をいだくの、わかる。

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昔から映画好き

3.5真面目な会社員が妻との会話がギクシャクの為、未亡人の幼馴染と不倫する映画

2020年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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KEO

3.5松本清張×橋本忍の、サスペンス不倫劇

2020年9月13日
iPhoneアプリから投稿

美しき子連れの未亡人の岩下志麻と、平凡なサラリーマン加藤剛の不倫劇、それを不穏な子供が見ているのか見ていないのかで滅茶苦茶な疑心暗鬼になる話。

6つの子供がそんな危ないことを考えるのか、それとも疑心暗鬼の妄想なのかが焦点なのだが、さすが松本清張、ただの不倫劇には終わらない。

子供からしたら、突然変なおっさんがやってきて、夜な夜なお母さんのもとに訪問してきたら、憎たらしくもなるだろうという話。

とにかく岩下志麻の艶っぽさたるや、本当に凄まじい。今はこういう魔性的な魅力の女優はいないし、唯一無二の「女優」だと感じる作品だ。

作品のタイトルは「影の車」だが、短編集の小説のタイトルをそのままつけてるので、作品とは全く結びつかない。
この作品本来の小説原題は「潜在光景」、そのタイトルを知って観ると、作品の奥深さをより味わえるだろう。

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やべっち
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