【「プリシラ」評論】人間の孤独や疎外感という苦いテーマが深い余韻を残す甘美なシンデレラストーリー
2024年4月7日 09:00

「キング・オブ・ロックンロール」と称されるエルビス・プレスリーの人生を描き、第95回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞ほか計8部門にノミネートされたバズ・ラーマン監督、オースティン・バトラー主演の「エルヴィス」(2022)の鮮烈な印象がまだ記憶に新しい。そんな中、エルビスの元妻プリシラの視点で、スーパースターと少女との恋と波乱の日々をソフィア・コッポラ監督が描いてみせたのが最新作「プリシラ」である。
「ロスト・イン・トランスレーション」「マリー・アントワネット」などの作品で数々の映画賞に輝き、ファッション・アイコンとしてもガーリーカルチャーをけん引し続けるコッポラ監督は、プリシラが1985年に発表した回想録「私のエルヴィス」をもとに、世界が憧れるスーパースターと14歳で出会い恋に落ちた少女の夢のような日々と孤独を繊細に美しく見つめる。「エルビスの世界に飛びこみ、紆余曲折を経てやっと自身の人生を見つけたプリシラの心情」を表現したかったとコッポラ監督は述べており、プリシラとその後の世代にとって、女性であることがどのような意味を持つのかを物語る。
そのため、世界を虜にしたエルビスのパフォーマンスシーンは驚くほど少ない。あくまでもその人物像はプリシラから見たものなので、2人でいる時にしか見せない姿や心情であり、我々がこれまで見てきた映画やテレビ、ドキュメンタリーでは目にしたことのない、傷つきやすく弱いエルビスがそこにいる。「Saltburn」「キスから始まるものがたり」のジェイコブ・エロルディが演じ、オースティン・バトラーが演じたエルビスとは違った魅力を放つ。現在のプリシラ(78歳)と個人的に対話を重ね、彼女の視点に寄り添うと決めたコッポラ監督にしか描けない、プリシラとエルビス2人だけの世界をまるで覗き見ているような感覚に陥る。
そして、その14歳から20代後半の大人の女性へと変化を遂げるプリシラの感情と姿を、「パシフィック・リム アップライジング」のケイリー・スピーニーが繊細に演じ分けて体現。第80回ベネチア国際映画祭で最優秀女優賞受賞も納得の演技で観る者を魅了する。冒頭、西ドイツの米軍基地内のダイナーのカウンターで勉強している、ポニーテールのプリシラに後ろからカメラがゆっくりと近づいていく。声をかけられて振り向いた時の表情にはまだあどけなさが残っているが、そのシーンは「パリ、テキサス」(1984)のナスターシャ・キンスキーが振り向くシーンと重なって見えるほど美しい。
シャネル、ヴァレンティノによる華やかな衣装が彩り、当時を再現した美しく精巧な美術、そしてロックバンド「フェニックス」による音楽が1960年から70年代の雰囲気を伝える。甘美なシンデレラストーリーでありながら、コッポラ監督の真骨頂とも言える人間の孤独や疎外感といった苦いテーマが深い余韻を残す。よくある伝記映画ではなく、プリシラの変化と決断の回想が、時代を超えて、幅広い世代が共感する映画となって誕生した。
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