【「笑いのカイブツ」評論】岡山天音の純粋で激しい魂の叫びが観る者の心に突き刺さる“カイブツ”級の映画
2024年1月6日 13:30

まさに“カイブツ”である。「伝説のハガキ職人」と呼ばれた実在するツチヤタカユキ氏を演じられるのは、役者・岡山天音しかいなかったではないか。単なる奇人か、稀代の天才か―。笑いに取り憑かれた男ツチヤを、岡山がその役に憑かれたように演じ、痛いほどに純粋で激しい生き様と魂の叫びが観る者の心に突き刺さってくる。
本作は、Webメディア「cakes(ケイクス)」の連載で圧倒的な支持を集め、書籍化されたツチヤ氏による同名小説を映画化した人間ドラマ。テレビ番組「着信御礼! ケータイ大喜利」で最高位「レジェンド」の称号を獲得した後、ラジオ番組や雑誌へのネタ投稿で圧倒的な採用回数を誇ったツチヤ氏。意を決して大阪から上京するも、何をするにも不器用で“人間関係不得意”のため挫折。笑いへの情熱や努力だけでは上手くいかない現実の中で傷だらけになりながら、自分の道を猛進するその熱量に人々が突き動かされていく―。
岡山はこれまで出演してきた映画で様々な役を演じ、バイプレイヤーとして独自の存在感を放つこともできる役者だ。主演作である「ポエトリーエンジェル」(2017)や「神さまの轍 check point of the life」(2018)、「王様になれ」(2019)、「踊ってミタ」(2020)といった作品では、言い訳ばかりして人生から逃げていたり、世の中を斜めに見ているような臆病者、思うように生きられず、崖っぷちながらも、そこから自分を変えてがむしゃらに生きようとするような青年役を、おかしみや愛しさをもって演じ、若手の中でも稀有な才能を見せてきた。
本作の岡山の演技は、そんなこれまでの役のひとつの到達点であり、そしてその殻を突き破って“カイブツ役者”の狂気が主演作で開花したと言える演技をスクリーンに叩きつけている。岡山が「原作者であり、僕が演じた役でもあるツチヤタカユキの渦は苛烈で、引き裂かれそうになる日々でした。なんとか生き延びて今日にいます」と述べているように、役を突き詰め、役に追い込まれて演じたことが伺える。
そんな岡山の情熱に応えるように、仲野太賀と菅田将暉が競演し、それぞれが火花を散らすようなシーンを焼き付けている。さらに松本穂香、片岡礼子、前原滉、板橋駿谷ら演技派たちが脇を固め、彼らが岡山とみせるアンサンブルがリアリティを与えている。自分に嘘をつけず、“やるだけやって、燃え尽きたらそれまでじゃ”という生き様は、何者かになりたかったすべての人の心を震わすに違いない。
本作を監督したのは、これまで井筒和幸、中島哲也、廣木隆一、崔洋一、西川美和といった監督たちの作品の助監督として経験を積んできた滝本憲吾。監督としてドキュメンタリーやCM、PV、テレビドラマを手掛けているので、本作は長編商業映画デビュー作ではあるが、振り切っていながら繊細な演出力が冴えている。強力なスタッフ陣も集結し、「破壊なくして創造なし」と滝本監督が述べているように、唯一無二の“カイブツ”級の映画を生み出した。
(C)2023「笑いのカイブツ」製作委員会
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