【「ノック 終末の訪問者」評論】重圧となる黙示録の真偽。密室で冴えるシャマランのサスペンス術
2023年4月9日 09:00

「観客はそれがヒッチコックの映画だから、何かが起こるまで30分でも40分でも待つ。無名なキミの作品なんか、始まって何も起こらなかったら誰もが席を立つぞ!」
これはブライアン・デ・パルマ監督の初期長編「悪魔のシスター」(1972)のために威嚇的なテーマ曲を書いたバーナード・ハーマンが、静かなスコアが欲しいと監督に求められたときに放った言葉だ。M・ナイト・シャマランは間違いなく、この前述したアルフレッド・ヒッチコックの位置にいる。彼の映画だから何かがある、と誰もが無条件で身構える。本作はそんな心理に強度の揺さぶりをかける、異様な設定のスリラーだ。
世界滅亡という予見を掲げ、事態を防ぐには家族の誰かを犠牲にしろと迫る謎の訪問者たち。あまりにも信じ難い要求に、アンドリュー(ジョナサン・グロフ)一家は抵抗を試みる。だが部屋のテレビでは、各地が災害に襲われる模様を報じ、そのたびに説得しきれぬ訪問者は一人一人と死を遂げ、一家の信念に迷いを生じさせていく……。
はたして訪問者の主張は真実で、正当なものなのか? 通常の感覚であれば、連中が終末を唱えて人心を惑わす、いわゆるドゥームズディ・カルトの一派ではないかと疑念が先立つ。そこをシャマランは、自作がスーパーナチュラルな事象を描いて当然という前提をフル機能させ、真偽不明のタイムリミットな状況を、密室において100分近く緊張感を途切らせず捉えるのだ。ドラマが閉塞一辺倒に陥らぬよう、究極の選択を迫られた同性カップルのバックボーンを過去回想で示し、訪問者の目的が彼らに遠因するものなのか、そしてこのトラブルにどう回答を出す存在なのかを広く観察していく。
「シックス・センス」(1999)から「ヴィレッジ」(2004)へと至るシャマランのフィルモグラフィを一次最盛期とするならば、「ヴィジット」(2015)からおととしの「オールド」(2021)に至るまでを二次最盛期と断じていいだろう。そこでは一次期のような、凝ったプロットや衝撃の結末といった要素に頼らずとも、経年によって磨かれた演出力がサスペンスフルな独自世界を構築している。本作もクライマックスに世界滅亡の実態は明かされていくが、もはやそれが重要でないくらい、途中のプロセスで観る者を引き込んでいく。そう、誤解を恐れずに言うなら、今や彼は名実ともにヒッチコックの嫡流だ。
キャスティングも絶妙にふるっており、訪問者一味も疑いを覚えるには小市民的で善人じみ、抵抗するには屈強なリーダーがいる。そんなデイヴ・バウティスタ演じる体育教師は、出自と背景を考えるだけでストーリーをミステリアスに撹乱させていくのだ。
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