「追悼 ジャン=リュック・ゴダール映画祭」4月28日開催 「小さな兵隊」「はなればなれに」など9作品

2023年3月28日 18:00


9作品をラインナップ!
9作品をラインナップ!

2022年9月13日に死去した、ジャン=リュック・ゴダール監督の特集上映「追悼 ジャン=リュック・ゴダール映画祭」が、4月28日から開催される。このほど上映作品ラインナップ、スケジュール、メインビジュアル、予告編(https://youtu.be/-AsYxHvMnm0)が公開された。

上映作品は、1960年代と80年代を中心に、「小さな兵隊」(60)、「カラビニエ」(63)、「はなればなれに」(64)、「ウイークエンド」(67)、「パッション」(82)、「カルメンという名の女」(83)、「ゴダールのマリア」(85)、「ゴダールの探偵」(85)、「ゴダールの決別」(93)と、滅多にスクリーンでは観ることのできない全9作品をラインナップ。

予告編は、「カルメンという名の女」で印象深いベートーベン「弦楽四重奏曲」にのせたオープニングに始まり、「小さな兵隊」からアイコニックな「はなればなれに」のダンスシーン、「最も美しいゴダール映画の1本」とも評される「ゴダールの決別」まで上映作品を各シーンごとに紹介している。また、メインビジュアルには、アンナ・カリーナが初めて出演したゴダール映画でもある「小さな兵隊」や各国で物議を醸した「ゴダールのマリア」はじめ全作品のスチールがデザインされている。

時や国を超えて多くの映画作家に影響を与え続けるゴダールの何が革新的だったのか? 何が称賛され、何が人々を熱狂させたのか? 彼のいない映画はどうなっていくのか? 今回の特集上映はゴダールの<映画>そのものを見つめる絶好の機会となる。上映スケジュールは、公式サイト(jlgfilmfes.jp)で告知している。4月28日~5月18日ヒューマントラストシネマ渋谷、角川シネマ有楽町で開催。

▼上映作品一覧
■「小さな兵隊」Le Petit Soldat
1960年/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/音楽:モーリス・ルルー
出演:ミシェル・シュボールアンナ・カリーナラズロ・サボ
極右の OAS(秘密軍事組織)およびこれと対立する組織 FLN(アルジェリア民族解放戦線)の間で翻弄される男女のスパイを描いた長編第二作。60年に完成していたが、アルジェリア戦争を主題とし、両組織による拷問を批判的に描いたことで63年まで公開されなかったいわくつきの作品。アンア・カリーナが初めて出演したゴダール映画でもある。二人は本作完成後に結婚した。

■「カラビニエ」Les Carabiniers
1963年/原作:ベニャミーノ・ヨッポロ/脚本:ゴダール、ジャン・グリュオー、ロベルト・ロッセリー
ニ/撮影:ラウル・クタール/音楽:フィリップ・アルチュイ
出演:マリノ・マゼ、アルベール・ジュロス、ジュヌブィエーブ・ガレア、カトリーヌ・リベイロ
題名は「歩兵たち」の意。イタリア人作家ヨッポロの同名舞台劇に基づく寓話的反戦・反帝国主義風刺劇。前年に同劇を演出したロッセリーニが、脚本家の一人として名を連ねている。架空の国の貧しく学のない若者二人が、世界の富をわがものにできるとの甘言に釣られて「王様」からの徴兵に応じ出征、破壊と略奪の限りを尽くすが……ジャン・ビゴに捧げられている。

■「はなればなれに」Bande a part
1964年/原作:ドロレス・ヒッチェンズ/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/音楽:ミシェル・
ルグラン
出演:クロード・ブラッスールアンナ・カリーナサミー・フレイ
先頃邦訳が刊行されたアメリカ人作家ヒッチェンズの小説に基づく作品。若者二人組とナイーブな娘が織りなす三角関係と彼らの犯罪計画を軸とした、奔放な悲喜劇。物語の内と外を自在に出入りする、ゴダール自身の声によるナレーションもユニーク。タランティーノ、ベルトルッチ、ハートリーら本作への偏愛を隠さない映画作家やミュージシャンは数多い。

■「ウイークエンド」Week-end
1967年/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/音楽:アントワーヌ・デュアメル
出演:ジャン・ヤンヌミレーユ・ダルクジャン=ピエール・カルフォン
各々愛人がいて、密かに互いを殺す機会をうかがうプチブル夫婦。二人は遺産相続のため妻の実家へと車を走らせるが、この長旅はトラブルや奇妙な人物たちを通じて次第に混沌とした非現実的なものへと変貌していく……性と政治の季節に作られたポストモダン的黒い喜劇。交通渋滞を描いたくだりの移動撮影は、映画史上最も長いものの一つだとされる。

■「パッション」Passion
1982年/脚本:ゴダール/撮影:ラウル・クタール/ブィデオ撮影:ジャン=ベルナール・ムヌー
出演:イザベル・ユペールミシェル・ピコリハンナ・シグラ
欧州古典絵画の数々を活人画として再現した芸術映画製作に取り組む野心的ポーランド人監督。国際的製作班による「(完成しない)映画作りを描いた映画」としての側面を備える本作は、夏の陽光に満たされたかつてのゴダール映画「軽蔑」を冬の光の中で再創造する。ここでも物語は芸術(創造行為)と生活(性や金銭を巡る諸問題)の間を往還するだろう。

■「カルメンという名の女」Prenom Carmen
1983年/脚本:アンヌ=マリー・ミエビル/撮影:ラウル・クタール、ジャン=ベルナール・ムヌー
出演:マルーシュカ・デートメルスジャック・ボナフェミリアム・ルーセル
テロリストと思しき集団と共に銀行を襲撃する美貌の娘カルメンと、彼女と恋に落ちた警備員ジョゼフがたどる数奇な運命。そこにカルメンのおじで精神病院に入院中の元映画監督ジャン(ゴダール自身が演じている)およびベートブェンの弦楽四重奏曲を練習する演奏家集団が交差しつつ、悲喜劇的なラストですべてが合流する、ゴダール流“カルメン映画”。

■「ゴダールのマリア」Je vous salue, Marie
1985年/脚本:ゴダール/撮影:ジャン=ベルナール・ムヌー/編集:アンヌ=マリー・ミエビル
出演:ミリアム・ルーセル、ティエリ・ロード、ジュリエット・ビノシュ
聖母マリアをスイスの女子学生マリーへと変換し、イエスの処女生誕の物語を現代に置き換えて語り直した、ある意味挑発的な作品。カトリックの教義に言及しつつ、マリー役のルーセルが全裸となる場面があるためヨハネ・パウロ二世に批判され、上映禁止措置がとられた国もある。また抗議活動や爆破予告の対象となった劇場もあり、各国で物議を醸した。

■「ゴダールの探偵」Detective
1985年/脚本:アラン・サルドフィリップ・セトボン、ゴダール、アンヌ=マリー・ミエビル
撮影:ブリュノ・ニュイッテン、ピエール・ノビオン、ルイ・ビイ
出演:ジャン=ピエール・レオジョニー・アリディナタリー・バイ
探偵と刑事、ボクシング関係者、飛行士夫妻、老いたマフィアらが滞在中のホテルで交差する姿を、スター俳優を起用して描いた犯罪群像悲喜劇。「マリア」の完成資金を稼ぐためにゴダールが引き受けた企画で、カサブェテス、イーストウッド、ウルマーに捧げられているのもそれぞれ商業的要請の中で見事な犯罪劇を撮った彼らへのオマージュと受け取れる。

■「ゴダールの決別」Helas pour moi
1993年/脚本:ゴダール/撮影:カロリーヌ・シャンプティエ
出演:ジェラール・ドパルデュー、ロランス・マスリア、ベルナール・ベルレー
ある男がスイスの小村で数年前に起こった出来事を調査する。一連の回想を通じて明らかになるのは、夫が出張中、妻のもとに夫の姿を借りた神が訪れた、という摩訶不思議な話だった。ギリシャ神話中のゼウス神が夫に化けて人妻と時を過ごす伝説に想を得た、人間の欲望、苦悩、歓びを巡る真実を経験したいとの神の願望を巡る物語。シャンプティエの撮影と相まって、最も美しいゴダール映画の一本と評される。

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