カラビニエ
劇場公開日:2023年4月28日
解説
「勝手にしやがれ」のジャン=リュック・ゴダール監督が、戦争に翻弄される無知な若者2人の運命を寓話的に描いた風刺劇。イタリア人作家ベニャミーノ・ヨッポロの同名舞台劇をもとに映画化し、前年に同劇を演出したロベルト・ロッセリーニが脚本に参加した。
とある架空の国。荒地の掘立て小屋に、ミケランジェロ、ユリシーズ、クレオパトラ、ヴィーナスという名の4人家族が暮らしていた。そこへ2人のカラビニエ(歩兵)が「王様」からの手紙を持って現れ、ミケランジェロとユリシーズの兄弟を徴兵する。学のない兄弟は世界の富を手に入れることができるという甘言に釣られて戦地へと向かい、破壊と略奪の限りを尽くすが……。
1963年製作/80分/フランス・イタリア合作
原題:Les Carabiniers
配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム
日本初公開:1989年1月14日
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劇中、ほとんど腹が立ちっぱなしなのだが、
それが監督の意図だというのなら
まんまと策にはまった。
息子がバリーコーガンに見えて仕方なかった
ラスト、写真をわーってやるシーンや
あの展開そのものがかなり作為的だった。
これがやりたかったのだな、と。
2023年5月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
いちおう、コメディの範疇に属するのだろうか。
ま、べつにそこまで面白くもなければ、笑えるシーンもたいしてないけど……(笑)。
(リュミエール兄弟の頃の逸話が元ネタと思しき映画館のシーンくらいか)
ブラックで、ピカレスクで、寓話的な反戦映画としては、
アルトマンの『M★A★S★H』(70)の面白さには遠く及ばないが、
もしかするとアルトマン自身は本作を意識していたかもしれない。
いかにもゴダールらしい作品ではあるが、「本領」ではないような気も。
マヌケ面のちび兄貴とイケメンのっぽの弟の兄弟が、ロードムーヴィー風に戦地を行き来するドタバタを見ながら、この取り合わせってなんだっけなあ? やっぱり『隠し砦の三悪人』の藤原釜足と千秋実? 『スター・ウォーズ』のロボット二人組? とか考えていて、デジャヴの正体が「太川陽介と蛭子能収」であることに気づき、我ながら衝撃を受ける。
お話自体は、こんな感じだ。
架空の国の野中に立つ掘っ立て小屋で、4人の家族が暮らしている。
全員そのへんの若者にしか見えないが、母親と兄と弟と妹という設定らしい。
名前はミケランジェロ、ユリシーズ、クレオパトラ、ヴィーナスとふるっている(神話的な寓意や隠喩が張り巡らされているのかもしれないが、僕にはまったくわからない)。
そこに2人組の兵隊(憲兵=カラビニエ)が「王様」からの手紙をもって現われ、兄弟二人を徴兵する。文字すら読めない無知な二人は、兵士として手に入れた特権を嬉々として享受し、殺戮と掠奪の限りを尽くしたうえ、「お宝」を持って無事生家に帰還するのだが……。
昨今のウクライナ侵攻で、ロシアの辺境や農村部出身の若者が、「ウクライナのネオナチをやっつけろ」のスローガンのもと、右も左もわからないまま戦地の最前線に投入され、生存本能と破壊衝動に駆られて現地で暴行や掠奪や拷問を繰り返しているという「現実」と照らし合わせたとき、ゴダールが寓話的に描き出した「無知な兵隊」のリアリティ・レヴェルの高さには愕然とさせられる。
本作の主人公である兄弟二人の場合、『勝手にしやがれ』的な無軌道性と脱法性に、(政治的にも知的にも)「魯鈍」であるという要素が加味されることで、「褒美に目がくらんで容易に体制の言いなりになって出兵に加担し、サディズムを抑えることなく殺戮衝動を現地で解放する」使い捨てのコマとしてのキャラクターが付与される。
二人の描かれ方は、あくまでコミカルだ。
ある種の共感性すら、感じられるほどに。
その分、二人が拉致した捕虜に加える虐待や、やりたい放題の掠奪&殺戮のおぞましさが、ブラックに強調される。
要するに、ゴダールは、このならず者の兄弟自体を糾弾しているわけではない。
無知が田舎の若者を死地に追いやるシステムそのものの「悪」をシニカルに描き出すことで、そんな若者を戦争で「使役」し「消費」する帝国主義の「悪」を浮き彫りにしているのだ。
前半は総じて単調かつ無駄に難解で、そのくせ嫌な感じに暴力的なので、いささかとっつきにくい印象が強いのだが、後半に入って兄弟の見せるアクションが激しさを増し、先ほど述べた映画館のシーン(初めて映画館に入った知恵のたりない弟が、高貴な女性のお風呂シーンに欲情し、スクリーンまでかけつけて、壇上によじ登って「上から風呂の中を覗こう」とし、勢い余ってスクリーンをやぶってしまう、というサイレント調のスラップスティック)など、見ごたえのあるシーンがいくつか続くと、がぜん楽しくなってくる。
あと、戸外でスケートしてて転ぶシーンが微妙に好き。なんかブリューゲルっぽくて。
ラストに待ち受ける黒々とした結末は、因果応報といえばそれまでだが、まさに戦争というものの正体をよく示していると思う。まあでも、なんとなくラストはこうなるんじゃないかと、途中からずっと思いながら観てました。
あと、残されたクレオパトラ、ヴィーナスが髪を切られているのは、パリ解放やミラノのムッソリーニ処刑の際にナチス(ファシスト)協力者の女性たちが丸坊主にされていたのを彷彿とさせる(映画史的にはもちろん『裁かるるジャンヌ』も!)。